習近平国家主席「2025年新年の挨拶」を読む:中国経済と世界へのメッセージ
2024年大みそかに放送された習近平国家主席の「2025年新年の挨拶」は、2024年の中国の歩みを振り返りつつ、2025年の中国経済や外交の方向性を示す内容でした。本記事では、その主なポイントを日本語で整理し、国際ニュースとしての意味合いを解説します。
挨拶の全体像:中国の「この1年」と「これから」
今回の新年の挨拶で習主席は、次の三つを大きな柱として語りました。
- 2024年の中国経済・社会・科学技術の振り返り
- 人々の暮らしをどう支えるかという「民生」重視の姿勢
- 2025年以降の「中国式現代化」と改革・開放、そして国際秩序への関わり方
国内の経済運営からマカオや香港、台湾海峡情勢、さらにグローバル・ガバナンスまで、一つのスピーチの中で幅広いテーマが扱われているのが特徴です。
2024年総括:経済回復と「新質生産力」
習主席はまず、2024年の中国経済について「回復し、上向きの軌道にある」と強調しました。年間の国内総生産(GDP)は130兆元を超える見通しとされ、穀物生産は7億トンを上回ったと述べています。食料安全保障を示す象徴的な表現として「中国人の茶碗には、より多くの中国産の穀物がよそわれている」と表現しました。
さらに、地域間の協調発展、新型都市化と農村振興の前進、グリーンかつ低炭素の発展など、「質の高い発展」に向けた政策の効果をアピールしました。ここでは量的な成長だけでなく、構造転換や持続可能性に重心を置いたメッセージになっています。
新しい成長エンジンとしての「新質生産力」
演説の中で繰り返し出てきたキーワードが「新質生産力」です。これは、単なる生産量の拡大ではなく、技術革新や新産業、新しいビジネスモデルを意味する言葉として使われています。
- 新エネルギー車(電気自動車など)の年間生産台数が初めて1000万台を突破
- 集積回路(半導体)、人工知能(AI)、量子通信などの分野での「突破」
- 月の裏側から試料を採取した探査機「嫦娥6号」の成果
- 深海の謎に挑む掘削船「夢想号」、海をまたぐ深セン・中山を結ぶリンク、南極の秦嶺基地の稼働
宇宙や深海、大型インフラ、南極基地といった象徴的なプロジェクトを並べることで、「星や大海に挑む中国人の精神」を示す構成になっています。技術立国路線と国家的プロジェクトを結びつけるメッセージと見ることができます。
暮らしの安心:年金、住宅、医療への言及
経済や技術の話に続き、習主席は「人々の生活」に焦点を移しました。2024年に各地を訪れた経験として、甘粛省天水の赤いフジリンゴや福建省の漁村、天津の古文化街、寧夏・銀川の多民族コミュニティなどを挙げ、地域の多様な日常の風景を紹介しました。
具体的な政策としては、次のような点が挙げられました。
- 基礎年金の引き上げ
- 住宅ローン金利の引き下げ
- 医療費の「省をまたぐ直接精算」の拡大(他地域でも受診しやすくする仕組み)
- 消費財買い替え(いわゆる「トレードイン」)の促進策
加えて、雇用・収入、高齢者介護や子どもの教育、医療など、日常生活に直結する不安に応えることが重要だと強調しました。2025年についても、「人々の笑顔を増やし、心により多くの温かさを届ける」ことを最優先の仕事だと位置づけています。
スポーツ、軍、そして「努力する人」への称賛
習主席は、2024年のパリ五輪で中国選手が海外開催の五輪としては史上最高の成績を収めたと述べ、「若い世代の活力と自信」を象徴する出来事として取り上げました。
あわせて、創設75周年を迎えた海軍と空軍、自衛・防災の現場で活躍する人々、洪水や台風など災害時に前面に立った中国共産党員や幹部、そして日々の現場で働く労働者や起業家など、「責任を果たしているすべての努力する人々」に敬意を表しました。国家レベルの勲章や栄誉称号の授与にも言及し、ロールモデルをたたえる姿勢を示しています。
外交とグローバル・ガバナンス:グローバルサウスとの連帯
国際情勢については、「百年に一度の変化」が加速する世界の中で、中国は責任ある大国として行動していると位置づけました。具体的には、次のような点が挙げられています。
- グローバル・ガバナンス(国際的なルールや枠組み)の改革を積極的に推進
- グローバルサウス諸国との連帯と協力を一段と深める
- 「質の高い」一帯一路協力の推進
- 中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)北京サミットの成功
- 上海協力機構(SCO)、BRICS、APEC、G20などでの中国の立場発信
習主席は、対立や分断を乗り越えるために、「人類の未来を思いやる広い視野」と「文化間の相互学習」を掲げ、「人類運命共同体」の構築を呼びかけました。平和と安定に「大きく貢献してきた」と語るなど、自国の役割を前向きに位置づける内容となっています。
マカオ、香港、台湾海峡へのメッセージ
国内統合の文脈では、まずマカオへの言及がありました。マカオの中国への返還25周年の前夜に再訪したことに触れ、新たな進展や変化を「喜ばしく思う」と述べています。
そのうえで、「一国二制度」の方針を揺るぎなく実行し、香港とマカオの長期的な繁栄と安定を維持していくとあらためて表明しました。
台湾海峡については、「台湾海峡両岸の中国人は一つの家族であり、その血のつながりを誰も断つことはできない」との認識を示しました。さらに、中国の完全な統一は「時代の大勢」であり、誰にも止められないと強調し、両岸のきずなが続くことを訴えています。
2025年の課題:第14次五カ年計画の最終年
習主席は、2025年が第14次五カ年計画を「全面的に完成」させる年になると位置づけました。そのために、より積極的で有効な政策を実施し、次の点を優先するとしています。
- 質の高い発展を「最優先課題」として追求
- 科学技術分野での自立自強(自力更生と強化)を推進
- 経済・社会の安定した発展を維持
同時に、外部環境の不確実性や、従来型の成長エンジンから新たな成長エンジンへの移行に伴う圧力など、「新たな状況と課題」があることも認めています。そのうえで、「風雨の中で成長し、困難を通じてより強くなる」と述べ、自信と忍耐を持つよう国民に呼びかけました。
改革・開放と「中国式現代化」
演説ではまた、新中国成立75周年に触れ、建国以来の大きな変化と、5000年以上にわたる連綿とした文明の蓄積を振り返りました。中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(20期三中全会)が「全面的な改革深化」に向けた号令であったとしたうえで、改革・開放の流れに沿って「中国式現代化」を進めていくとしています。
ここでは、歴史的な連続性と未来志向の改革を結びつけ、「中国の道」を強調するメッセージになっていると言えるでしょう。
私たちが押さえておきたいポイント
今回の新年の挨拶から、日本やアジア、世界を意識する読者が注目しておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 中国経済は「回復」と「構造転換」を同時に進める段階にあるとの自己評価
- 技術革新と新エネルギー車、宇宙・深海開発などを成長の象徴として前面に
- 年金、住宅、医療など民生分野を重視し、「笑顔」と「温かさ」をキーワードに掲げたこと
- グローバルサウスや国際機関の場での役割を強調し、国際秩序づくりへの関与をアピール
- マカオ・香港への一国二制度の継続と、台湾海峡両岸の一体感を訴える姿勢の再確認
演説の最後で習主席は、「中国式現代化」という新たな旅路では、一人ひとりが主人公であり、どんな小さな努力も光を放つと語りました。国家の長期戦略と、個々人の生活や努力を結びつけるメッセージは、2025年の中国を理解するうえで重要な手がかりとなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








