万里の長城ふもとの古い家がホテルに 米建築家の再生デザイン
古い家や廃校、廃工場に現代的なデザインが加わると、地域はどう変わるのでしょうか。万里の長城のふもとで米国人デザイナーが挑んだ建物再生の物語は、2025年の今も示唆に富んでいます。
国際ニュースや建築デザインに関心のある読者にとって、古い建物の活用は身近なテーマです。北京市にある村で、米国出身のデザイナー兼建築家ジム・スピア氏が進めたプロジェクトは、過去と現在をつなぐ一つのケーススタディと言えます。
きっかけは一九七二年の万里の長城
一九七二年、当時の米大統領リチャード・ニクソンの歴史的な訪問の際、ジム・スピア氏は万里の長城を目にし、その風景に魅了されたといいます。長城のすぐそばにいつか自分の家を持ちたいという夢は、このときに生まれました。
一九九四年 北京市のMutianyu村で夢が実現
その夢が実現したのは一九九四年です。スピア氏は北京市のMutianyu村で一軒の家を手に入れ、実際に暮らし始めました。万里の長城のふもとに自分の拠点を構えたことで、周辺の古い建物をどう生かすかという新たな課題と向き合うことになります。
廃校をレストランとアートの場に
移住後、スピア氏は地域の建物を再生するプロジェクトに着手します。使われなくなっていた小学校を改装し、レストランやアートグラスショップ、ギャラリーへと生まれ変わらせました。
学びの場だった校舎が、人々が集まり食事を楽しみ、アート作品に触れられる空間になることで、村の日常に新しい役割が加わりました。古い建物の骨格を生かしながら現代的なデザインを取り入れることで、過去の記憶と現在の暮らしを共存させる試みと言えます。
二〇〇六年 Beigou村の廃工場をホテルへ
スピア氏の挑戦はそれだけにとどまりません。二〇〇六年には、Beigou村にあった使われなくなった瓦工場を借り受け、ホテルへと改装しました。生産のための場だった工場が、滞在のための場へと機能を転換したことになります。
工場という無骨な空間をホテルに変えるには、デザインだけでなく、安全性や快適性への配慮も欠かせません。古い構造を尊重しながら、新しい使い方に合う設備やインテリアを組み合わせることで、工業遺産のような建物に別の命が吹き込まれました。
古い建物と現代デザインが交わるとき
万里の長城のふもとで進められたこれらのプロジェクトは、古い建物と現代デザインが出会うときに何が生まれるのかを考えさせてくれます。
- 壊して建て替えるのではなく、既存の建物を生かすことで、地域の風景や記憶を残せること
- レストランやギャラリー、ホテルといった新しい使い方を与えることで、人の流れや出会いが生まれる可能性があること
- 外から来たデザイナーの視点が、地域にある資源の価値を再発見するきっかけになり得ること
日本各地でも、古民家や廃校、工場跡の活用が注目されています。ジム・スピア氏がMutianyu村やBeigou村で試みたように、一つ一つの建物の物語や周囲の環境を丁寧に読み解き、そこに現代的なデザインを重ねていくことが、これからの地域づくりのヒントになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








