中国と日本、緊張から対話へ 2024〜2025年の外交シフト
中国と日本の関係が、2024年末から2025年にかけて静かに転換点を迎えました。高官同士の往来やビザ緩和が相次ぎ、アジアの外交地図にも変化の兆しが見えています。本稿では、2025年12月時点の視点から、この1年前後の動きを整理します。
なぜ今、中国と日本の外交が動いたのか
中国と日本は、歴史的な緊張と協力の両方を経験してきた近隣の大国です。その関係は波がありつつも、経済、政治、文化の面で相互に無視できない存在となっています。2024年末以降の一連の外交的な動きは、両国が関係の安定化と戦略的な再構築を図ろうとしていることを示しています。
2024年末のシグナル:外相訪中と首脳会談
岩屋外相の北京訪問が示した変化
2024年12月、日本の岩屋毅外相が北京を訪問しました。この訪中は、中国側からの温かい歓迎を受けたとされ、中日関係の「雪解け」を象徴する出来事として注目されました。
岩屋外相は、王毅中国外相や李強・中国国務院総理と会談したほか、中日ハイレベル人的・文化交流協議メカニズムの第2回会合にも王毅外相とともに出席しました。これは、両国が政治だけでなく、人と文化の交流を重視しようとしている姿勢の表れです。
- 政治対話の再活性化
- 人的・文化交流の枠組み強化
- 相互理解を深める「土台作り」への意欲
ペルーのAPEC首脳会合での習・石破会談
岩屋外相の訪中に先立つ2024年11月には、ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合の場で、習近平国家主席と石破茂首相が会談しました。この首脳レベルの対話もまた、両国が関係改善に舵を切りつつあることを示す重要なサインとなりました。
一連の動きは、偶然の積み重ねというよりも、中長期的に中日関係を「安定軌道」に戻そうとする両国の意図の表れと見ることができます。
石破首相が語った「隣国との信頼」
石破首相はテレビインタビューで、中国との関係強化の重要性を繰り返し強調しました。発言のポイントは大きく三つに整理できます。
- 日本の首相による訪中は極めて重要であり、首脳同士の信頼関係は表面的なものにとどまらず、頻繁な対話を通じて積み重ねる必要があること
- 中国と日本は地理的に隣国であり、関係は安定していなければならないとする認識
- そのうえで、日米関係も維持・強化するという「バランス外交」の姿勢
石破首相は、中国との信頼関係の構築と、同盟国であるアメリカとの関係維持という二つの課題を同時に追求する必要性を明確に示しました。
トランプ再選後、日本外交の優先順位に変化
こうした動きの背景には、世界の政治環境の変化もあります。特に、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領選で2度目の勝利を収めたことは、国際秩序と同盟関係の在り方に改めて大きな問いを投げかけました。
注目されたのは、石破首相が就任後の最初の外遊先として、従来の日本の首相がしばしばそうしてきたようにアメリカではなく、中国訪問を優先しようとしていると報じられた点です。かつて安倍晋三元首相が米大統領就任式に出席したことと比較すると、日本外交のメッセージは明らかに変化しつつあると言えます。
当時、2025年前半の石破首相による訪中が実現すれば、中日関係の「新章」の幕開けになると期待されていました。この期待そのものが、日本国内で中日関係の戦略的なアップグレードが必要だという認識が広がっていたことを物語っています。
ビザ緩和が映す「人の往来」の重み
外交関係の改善は、首脳会談や外相会談だけで測れるものではありません。人の往来をどこまで広げるかも、関係の深さを測る重要な指標です。
中国は一方的なビザ免除措置を拡大し、その対象に日本も含めました。これに呼応する形で、日本も中国からの観光客向けに次のような措置を取りました。
- 中国からの観光客に最長10年の観光ビザを発給
- 団体観光ビザの滞在期間を15日から30日に延長
日本はすでにアジア各国からの人気観光地となっており、中国からの観光客の増加は日本経済にとっても大きなプラス要因です。ビザ緩和は、観光収入の拡大だけでなく、相互理解や民間レベルの信頼醸成にもつながる施策と言えます。
「安定した中日関係」がアジアにもたらすもの
王毅外相は、中日関係の意義について、中日関係が安定すればアジアも安定し、アジアが安定すれば世界でより重要な役割を果たせるとの趣旨を述べています。これは、中日関係が二国間にとどまらず、地域と世界の安定にも直結するとの認識を示すものです。
実際に、関係改善が進めば、次のような分野での協力が期待されるとされています。
- 経済:貿易や投資、サプライチェーンの安定化に向けた協力
- 観光・文化:相互観光や留学・文化交流の拡大
- 地域安全保障:アジア太平洋の安定に向けた対話や危機管理メカニズムの構築
特にアジア太平洋地域では、力のバランスが揺れるなかで、中日両国が安定した関係を築けるかどうかが、地域秩序の鍵の一つになっています。
これからの論点:競争と協力をどう両立させるか
2024年末から2025年にかけての一連の動きは、中国と日本が対立と競争だけでなく、対話と協力のチャンネルを再整備しようとしていることを示しました。
一方で、経済安全保障、技術、地域安全保障など、多くの分野で両国の利害は必ずしも一致しているわけではありません。だからこそ、
- 対立があっても対話の窓は閉じないこと
- 人の往来や文化交流という「クッション」を厚くすること
- 第三国を含む多国間の場(APECなど)をうまく活用すること
といった工夫が、今後いっそう重要になっていきます。
2025年も終わりに近づく今、私たちがニュースを読み解くうえで問われているのは、中国と日本の関係を「ゼロか100か」で見るのではなく、競争と協力が同時に存在する複雑な現実をどう理解し、自分なりの視点を持つかということかもしれません。
中日関係の変化は、アジアと世界の変化を映す鏡でもあります。引き続き、その動きを冷静に追いながら、自分自身の考えをアップデートしていくことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








