絶滅からの復活:ミロ鹿が語るグローバルな保全の力 video poster
かつて中国本土で一度は姿を消したミロ鹿(Pere David's deer)が、国際的な保全活動によって復活し、いまや約8,200頭まで増えています。絶滅危惧種保護の国際ニュースとして、この動きはなぜ重要なのでしょうか。
静かな湿地から始まる「復活」の物語
中国・江蘇省にあるダーフェン麋鹿国家級自然保護区の静かな湿地では、ミロ鹿がゆったりと草をはみ、水辺を歩いています。そこには、彼らを陰で支える献身的な保護スタッフの存在があります。
スタッフたちは、ミロ鹿の健康状態や移動の様子、生息環境を日々細かく見守り、必要な管理を行っています。こうした地道な取り組みが、種の存続を支える土台になっています。
一度は故郷で絶滅したミロ鹿
ミロ鹿は、かつて中国本土に広く生息していたとされるシカの仲間です。しかし19世紀末までに、狩猟や環境の変化などが重なり、原産地では絶滅してしまいました。
その後も生き延びたのは、ヨーロッパに移されていたわずか18頭だけ。数頭単位ではなく「18頭」という数字は、生物多様性の危機がどれほど深刻になりうるかを象徴しています。
1986年、国際協力による「里帰り」
状況が大きく変わったのは1986年です。世界各地の保全関係者の協力を通じて、ミロ鹿が中国本土へ再び戻されることになりました。いわば「里帰り」ともいえるこの再導入は、国際的な保全協力が実を結んだ象徴的な出来事です。
当時の個体数はわずかで、遺伝的な多様性をどう守るか、限られた個体をどう増やしていくかという難しい課題もありました。それでも、長期的な視野に立った保護と繁殖の取り組みが続けられてきました。
約8,200頭に回復、野生で3,500頭が歩く
その努力は、現在、目に見える成果となっています。新華社の報道によると、ダーフェン麋鹿国家級自然保護区には、いまや約8,200頭のミロ鹿が生息しており、そのうちおよそ3,500頭は野生の状態で自由に暮らしているとされています。
「絶滅した種が再び野生で暮らすようになる」という変化は、数字以上の意味を持ちます。生息地の整備、長期間のモニタリング、そして国境を越えた協力がそろって初めて実現した成果といえます。
- 19世紀末:中国本土で絶滅
- ヨーロッパに18頭だけが生き残る
- 1986年:ミロ鹿が中国本土へ再導入
- 現在:ダーフェン保護区に約8,200頭、そのうち約3,500頭が野生(新華社報道)
なぜ日本の読者にとっても重要なニュースなのか
ミロ鹿の復活は、単なる「動物の良い話」にとどまりません。生物多様性の損失が世界的な課題となるなかで、一度失われかけた種が国際協力で回復しつつある事例は、今後の保全政策や市民の意識にヒントを与えます。
私たちは日常生活の中で、遠い湿地の動物を意識する機会は多くありません。それでも、国や地域を越えて種を守ろうとする動きがあることを知ることは、「自然をどう残していくのか」を考えるきっかけになります。
「読み流さないニュース」としてのミロ鹿
スマートフォンでニュースを流し読みしていると、こうした環境ニュースは見過ごされがちです。しかし、ミロ鹿の物語は、次のような問いを静かに投げかけています。
- 一度失われた種を、本当に取り戻すことはできるのか
- そのために必要な時間、資金、国際協力をどう確保するのか
- 私たちはどのように情報を受け取り、行動につなげていくのか
ニュースをきっかけに家族や友人と話してみる、関連する情報をもう一つ調べてみる。それだけでも、生物多様性をめぐる議論は少しずつ広がっていきます。
静かな湿地で草をはむミロ鹿の姿は、国際協力と長期的な保全努力が実を結びうることを示す、2025年の私たちへのメッセージでもあります。
Reference(s):
cgtn.com








