国連安保理で中国の傅聡大使、シリア安定と復興支援を国際社会に要請
国連安全保障理事会のシリア情勢に関する会合で、中国の傅聡(フー・ツォン)国連常駐代表が、シリアの安定と発展を支えるため、国際社会に連帯と協調の強化を呼びかけました。シリア情勢が依然として不安定な中、2025年現在の中東と国際秩序を考えるうえでも注目すべき発言です。
国連安保理で傅聡大使が示した4つの柱
傅聡大使は、シリアの状況が「重大な局面」にあるとしたうえで、今後の対応として次の4つの柱を強調しました。
- シリア主導・シリア人所有の政治プロセスの推進
- テロに対する「ゼロ容認(いかなる例外も認めない)」姿勢の堅持
- 深刻な人道危機への支援拡大と、違法な一方的制裁の見直し
- シリアの主権と領土一体性、特にゴラン高原をめぐる国連決議の履行
全体として、シリアの将来はシリアの人々が決めるべきだとする立場と、人道支援・テロ対策・領土問題を切り離さずに考えるべきだというメッセージがにじみます。
「シリア主導」の政治プロセスをどう支えるか
傅聡大使は、国連安保理決議2254の精神と原則に沿った「シリア主導・シリア人所有」の政治プロセスを支持すると表明しました。シリアが自国の国情に合った発展の道を選ぶ権利を尊重し、その将来を決めるのはシリアの人々自身であるべきだと強調しています。
延期された国民対話会議
傅聡大使は、1月5日に予定されていたシリアの国民対話会議が延期されたことにも言及しました。そのうえで、シリアのすべての当事者に対し、国家と国民の長期的利益を見据え、開かれた包摂的な政治的解決プロセスを開始するよう期待を示しています。
外部から解決策を押しつけるのではなく、対話と合意の積み重ねによって政治的移行を進めるべきだという立場が読み取れます。
テロ対策と外国戦闘員をめぐる懸念
シリア国内情勢がどう変化しようとも、「テロに対するゼロ容認の底線は変わらない」と傅聡大使は強調しました。政治プロセスの進展とテロ対策の徹底は、どちらか一方ではなく両立させるべき課題だと位置づけています。
傅聡大使によると、シリア軍が最近、外国人テロ戦闘員の一部に高位の軍事階級を与えているとの報告があり、その中には、国連安保理がテロ組織として指定している「トルキスタン・イスラム党(東トルキスタン・イスラム運動)」の指導者も含まれているとされています。この点について、中国側は懸念を表明しました。
傅聡大使は、シリアに対しテロ対策上の義務を果たし、いかなるテロ勢力にもシリア領土を利用させて他国の安全を脅かすことがないよう求めています。
深刻な人道危機と冬を前にした支援の必要性
シリアでは現在、1600万人以上が深刻な人道状況に置かれているとされます。傅聡大使は、長期にわたる違法な一方的制裁がシリアの人々の苦しみをさらに悪化させていると指摘し、国際社会に対し支援の拡大を訴えました。
具体的には、次のような点が強調されました。
- 国連が調整役となり、人道プロジェクトの実施を加速させること
- 厳しい冬を乗り切るため、人々の「生存」に直結するニーズを最優先すること
- シリアのすべての当事者が国際人道法を守り、人道支援活動への協力と人道要員の安全確保を徹底すること
制裁と人道支援の関係は、シリア情勢だけでなく国際政治全体の中でも議論が続くテーマです。現場の生活をどう守るのかという視点から、改めて問われています。
ゴラン高原とシリアの主権をめぐる主張
傅聡大使は、ゴラン高原が国際的に「占領下にあるシリア領土」と認識されていると改めて指摘しました。1981年に採択された国連安保理決議497は、ゴラン高原の法的地位を定め、イスラエルによるシリア・ゴラン高原の占領は無効であると明確にしています。
中国側は、シリアの主権・独立・統一・領土一体性が尊重されるべきだとあらためて表明し、ゴラン高原に関する安保理決議の履行と、1974年の兵力引き離し協定の順守を求めました。領土問題と安全保障の枠組みを国連決議に基づいて扱うべきだという姿勢です。
中国が示した「平和的発展」へのコミットメント
傅聡大使は、中国が長年にわたりシリアとの友好と協力の方針を維持し、シリアの内政に干渉してこなかったと述べました。そのうえで、中国は国際社会と協力しながら、シリアが円滑な移行を実現し、段階的に平和的発展の道に進むことを支えていく用意があると強調しました。
シリア情勢をめぐる議論の中で、中国は、主権尊重と発展支援、人道支援の拡充、テロ対策の徹底といったキーワードを組み合わせて、自国の立場を打ち出しています。
私たちが考えてみたいポイント
日本から見ると、シリアは地理的に遠い地域ですが、長期化する不安定と復興、そして大国間の外交が交錯する場という意味で、私たちの日常とも無関係ではありません。今回の発言から、次のような問いを考えてみることができます。
- 紛争後の社会で、「テロ対策」と「人道支援」や「市民の生活」をどのように両立させるべきか
- 主権と領土一体性を尊重しつつ、政治対話と和解を後押しするために、国際社会はどのような役割を果たせるのか
国連の場で交わされるこうした議論は、遠い国の出来事のように見えて、国際秩序や人権、安全保障をどう考えるかという私たち自身の課題ともつながっています。シリアをめぐる動きを追うことは、2025年の世界を理解するための一つの手がかりになりそうです。
Reference(s):
Fu Cong urges efforts to help Syria achieve stability and development
cgtn.com








