春節前、中国浙江で魚灯づくりが最盛期 3代続く伝統技
春節前、中国浙江で魚灯づくりが最盛期に
2026年の春節(旧正月)が近づき、中国東部の浙江省玉環市にある工房では、魚の形をしたランタン「魚灯(ぎょとう)」づくりが最盛期を迎えています。非物質文化遺産として受け継がれてきたこの魚灯づくりの技を守るのが、継承者のXu Zhen(シュ・ジェン)さんです。
Xuさんの工房では、春節の飾りつけに使われる魚灯の注文が増え、マナガツオ、黄花魚(イエロークローカー)、コウイカ、エビ、フグなど、さまざまな魚介類をかたどった灯りの制作に追われています。色や形のバリエーションも豊富で、春節ムードを一層華やかにしているといいます。
40年以上、父と受け継いだ技 3代目の継承者
Xuさんは現在64歳で、家族の中では3代目の魚灯づくりの継承者です。若い頃から父とともに魚灯を作り続け、その年月は40年を超えました。祖父の代から続く家業を、静かに、しかし粘り強く守り続けてきたことになります。
「継承者」とは、地域に伝わる伝統技能や芸能などを次の世代へ引き継ぐ役割を担う人のことです。魚灯づくりの場合も、長年の経験で培われた感覚や手さばきが重要で、短期間で身に付けることは難しいとされています。
1つに約3日 細部までこだわる手仕事
Xuさんが魚灯を1つ作り上げるのにかかる時間は、およそ3日間です。魚の姿や表情をいきいきと表現するため、骨組みから形づくり、彩色や仕上げまで、細かな工程をていねいに進める必要があります。
特に春節前は、家々や商店、公共スペースなどからの注文が重なり、工房は一年で最も忙しい時期を迎えます。それでも手作業のペースを落とすことはできず、量よりも仕上がりの美しさと伝統的な雰囲気を大切にしているのが特徴です。
なぜ「魚」のランタンなのか 春節と縁起物
中国の春節文化を語るうえで、「魚」は欠かせないモチーフの一つです。中国語で魚と「余る」「ゆとりがある」という意味の言葉が同じ音であることから、魚は「豊かさ」や「一年の実り」を象徴する縁起物とされています。
そのため春節には、魚料理を食卓に並べるだけでなく、魚をデザインした飾りや絵、ランタンなどを飾る習慣があります。魚灯は、こうした文化的背景を視覚的に、そして光によって表現する存在だと言えます。
非物質文化遺産としての魚灯づくり
魚灯づくりは、形のあるモノだけでなく、その制作に必要な技、知恵、物語を含めて受け継がれてきた非物質文化遺産です。大量生産の工業製品とは異なり、一つ一つの作品には、作り手の経験や地域の歴史が刻まれています。
こうした伝統技術は、観光や地域のブランドづくりの素材として注目される一方で、後継者不足という課題も抱えています。Xuさんのような継承者が、日々の仕事を通じて技を次世代へと手渡していけるかどうかは、地域文化の将来を左右する重要なポイントです。
デジタル時代にどうつなぐか 私たちにできること
スマートフォンや動画配信が当たり前になった今、魚灯づくりのような伝統工芸は、かえって新鮮に映る面もあります。制作の様子を短い動画で発信したり、オンラインで体験講座を開いたりすることで、若い世代が興味を持つきっかけにもなり得ます。
一方で、画面越しに見ただけでは伝わりきらない「手仕事の重み」もあります。実際に光る魚灯を目の前で見ると、その柔らかな明かりや質感から、工房での時間の積み重ねを感じ取ることができます。
春節を迎えるたびに灯される魚灯は、単なる飾りではなく、地域の記憶と人々の願いを映し出す小さなメディアでもあります。中国の春節は国際ニュースでは経済や人の移動の規模で語られることが多いですが、日本語で国際ニュースを追う私たちが、こうしたローカルな物語に目を向けることで、世界を見る視点も少し広がっていくのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








