中国・安徽省の古村「呈坎」、春節とヘビ年を迎える準備
春節とヘビ年を前に彩られる中国・呈坎
中国東部・安徽省黄山市にある古い村・呈坎(Chengkan)で、春節(旧正月)に向けてヘビ年を祝う横断幕が掲げられています。伝統的な集落のたたずまいと、中国古典に根ざした独特の村の構造があいまって、「中国らしさ」を凝縮した風景として注目されています。
村の名前に込められた「陰」と「陽」
呈坎という名前と村の構造は、中国古典の一つである「易経(えききょう)」の影響を受けているとされています。易経は、この世界を成り立たせる基本原理として「陰」と「陽」という二つの性質を示した書物です。
村の名前にある「呈」は陽を、「坎」は陰を表しています。ひとつの村の名前の中に、相反しながらも補い合う陰陽のバランスが組み込まれている、というわけです。日常の暮らしの場そのものが、思想や世界観と結びついている点が興味深いところです。
八方位を映す山々と太極図のような川
呈坎は、周囲を取り囲む八つの山によって特徴づけられています。これは、易経から生まれた「八卦(はっけ)」と呼ばれる八つの方位・性質のイメージと結びつけられています。八卦は、自然界や人間社会のさまざまな状態を象徴的に表す図形で、中国文化を理解するうえで重要な概念です。
さらに村の中には、S字型を描きながら流れる川があります。この川は、陰と陽の流れが一体となった「太極図(たいきょくず)」の形を思わせるとも言われます。山と川、村の配置そのものが、一つの巨大なシンボルとして読み解けるような構造になっているのです。
三本の大通りと99本の路地がつくる迷路
呈坎の内部構造も独特です。村には三本のメインストリートが通り、そのあいだを99本の細い路地が複雑に絡み合うように走っています。初めて訪れた人は、まるで迷路の中を歩いているような感覚になるかもしれません。
特徴を整理すると、次のようになります。
- 村の周囲を取り囲む八つの山が、八卦の八方位を思わせる構造
- S字型に流れる川が、太極図を連想させる流れを形成
- 内部には三本のメインストリート
- 99本の路地が縦横無尽に交差し、複雑な街並みを構成
単に入り組んでいるだけでなく、数や配置そのものにも意味を見出そうとする発想が感じられます。こうした構造は、防御や生活の利便性だけでなく、縁起や象徴性も意識してつくられてきたと考えられます。
横断幕に映る、現代につながる伝統
春節とヘビ年を祝う横断幕が掲げられた呈坎の姿は、伝統と現在が重なり合う瞬間を切り取ったものとも言えます。易経をはじめとする古典の考え方が、村の名前や地形、街並みの構造に息づき、その空間の中で人びとが新しい年の到来を祝う――そうした時間の積み重ねこそが、この村の魅力を形づくっているように見えます。
中国の国際ニュースや文化ニュースを日本語で追うことで、こうした一つ一つの風景の背景にある思想や歴史も、少しずつ立体的に見えてきます。呈坎のような村を入り口に、中国社会や東アジアの世界観へと視野を広げてみるのもおもしろいかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








