顕微鏡で見る雪の結晶:中国の研究者が追い続ける小さな宇宙
肉眼ではただの白い粒にしか見えない雪も、顕微鏡でのぞくと精巧な「結晶の世界」が現れます。中国の国家天文台で働く研究者・Zhang Chaoさんは、その世界に魅了され、20年近く雪の結晶を撮り続けています。
雪の結晶はどんな姿をしているのか
国際ニュースや科学ニュースでもたびたび話題になる雪の結晶ですが、日常生活のなかで一つひとつの形をじっくり見る機会はあまりありません。スマートフォンで雪を撮ろうとしても、すぐに溶けてしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。
顕微鏡を使うと、雪の結晶は次のような姿を見せてくれます。
- 繊細な六角形の模様
- 枝分かれした樹木のような形
- 何枚もの板が重なったような立体的な構造
ほんの数ミリにも満たない結晶の中に、規則性と多様性が同時に存在していることが、顕微鏡観察から見えてきます。
中国・国家天文台で働く「雪の熱狂的ファン」
こうした雪の結晶の世界に魅せられた一人が、中国のNational Astronomical Observatories of China(国家天文台)で働くZhang Chaoさんです。専門の仕事は天文学ですが、余暇の時間には雪の結晶を観察することに情熱を注いでいます。
彼は、雪の結晶の熱心なファンとして、顕微鏡を用いて雪を観察し、その姿を写真に収めています。仕事とは別の時間を使って、自然が生み出す一瞬の造形を丁寧に記録し続けているのです。
2005年から始まった雪の結晶撮影
Zhangさんが雪の結晶を撮り始めたのは、今から20年ほど前の2005年です。当時からすでに、彼は雪の結晶を写真として残すことに強い関心を持っていました。
その後、2007〜2008年ごろになると、彼は顕微鏡を使った撮影にも挑戦し始めます。肉眼では見えない細部を写し取ることで、雪の結晶のバリエーションをより精密に「コレクション」できるようになったからです。
彼はその動機について、次のように語っています。「I just want to collect different kinds of snowflakes(ただ、いろいろな種類の雪の結晶を集めたいだけなんです)」。
肩書きや研究テーマから離れた、とても素朴な言葉ですが、だからこそ雪の結晶への純粋な好奇心が伝わってきます。
顕微鏡が見せてくれる「小さな宇宙」
顕微鏡で雪を見るとき、Zhangさんは、天文学の研究で宇宙をのぞくときとは逆方向のスケールに向き合っています。巨大な宇宙から、数ミリ以下の結晶の世界へ。どちらも、私たちの肉眼では直接見ることのできない世界です。
この「スケールの往復」は、科学の面白さそのものでもあります。
- 宇宙望遠鏡で遠くの銀河を観測する
- 顕微鏡で雪の結晶の細部を観察する
方向はまったく違っても、「見えないものを見ようとする」という点では共通しています。雪の結晶の撮影は、Zhangさんにとって、仕事と地続きの「もう一つの観測活動」とも言えそうです。
デジタル時代に広がる観察という楽しみ
2025年の今、スマートフォンのカメラ性能や、手に入りやすい小型の顕微鏡アダプターによって、雪の結晶の世界は、以前よりもずっと身近なものになりました。Zhangさんのように本格的な顕微鏡を使わなくても、簡易なレンズで拡大撮影を楽しむことは十分にできます。
たとえば、こんな楽しみ方があります。
- 窓ガラスや黒い布の上に落ちた雪を、スマートフォン+拡大レンズで撮る
- 降り始めと降り終わりで、結晶の形の違いを比べてみる
- 撮影した写真をSNSで共有し、世界各地の雪の姿と比べてみる
雪の結晶の観察は、特別な専門知識がなくても始められる「身近なサイエンス」です。国や地域を問わず、冬のある場所ならどこでも楽しめる点も魅力と言えるでしょう。
「集める」ことが生む、ゆっくりした時間
Zhangさんの言う「いろいろな種類の雪の結晶を集めたい」という思いには、コレクション文化とも通じる感覚があります。一つひとつの結晶は、時間がたてば溶けて消えてしまいますが、写真という形で残せば、いつでも見返すことができます。
忙しい日々のなかで、あえて足を止めて空を見上げ、降ってきた雪の一片を顕微鏡に載せて観察する。その行為自体が、デジタル時代の私たちにとって貴重な「スローダウン」の時間になっているのかもしれません。
国際ニュースとして目立つトピックではないかもしれませんが、こうした小さな観察の積み重ねも、世界のどこかで静かに続いています。雪が降る季節、Zhang Chaoさんの顕微鏡の向こうに広がる「小さな宇宙」に思いをはせながら、自分の身の回りの世界を少しだけ丁寧に眺めてみるのも良さそうです。
Reference(s):
cgtn.com








