米TikTok禁止で広がるTikTok難民 中国SNSレッドノートに流入する理由
米国でTikTokの禁止措置が取り沙汰される中、米国ユーザーが中国発のソーシャルメディアアプリ『RedNote(レッドノート)』に一斉に流入する現象が起きました。なぜあえて別の中国系アプリに向かうのか、その背景と意味を整理します。
米国TikTok規制と「TikTok難民」
米国ではTikTokが国家安全保障上の脅威だとする議論が強まり、1月19日に発効予定とされた禁止措置をめぐって政治的な攻防が続きました。このなかで、TikTokの利用者の一部は自らをTikTok難民(TikTokRefugee)と名乗り、別のプラットフォームへの移行を始めました。
その受け皿のひとつとなったのが、中国のライフスタイル系ソーシャルメディア『RedNote』です。CGTN Digitalによると、ある火曜日時点で米国のiPhone向けアプリストアの無料アプリランキングでRedNoteが1位となり、TikTok運営企業バイトダンスによる別アプリLemon8がそれに続きました。RedNote上では、TikTokRefugeeのハッシュタグが10万件を超える投稿に使われ、移住者たちの声が可視化されています。
米国政府が示したTikTokへの懸念に対し、ユーザー側は深刻さよりもユーモアで応じています。TikTok上では、中国のスパイが自分たちを見守っているというミームが広がり、多くのユーザーが『想像上の中国のスパイ』に別れを告げる動画を投稿しました。その後、同じユーザーたちがRedNoteの投稿で再び『スパイ』と再会した、といった冗談も見られます。
なぜ別の中国系アプリ『RedNote』に向かうのか
米国にはInstagramのリール、Snapchatのスポットライト、YouTubeショートなどTikTokに似た短尺動画サービスが多数あります。それでも一部のユーザーがRedNoteを選んだ背景には、いくつかの理由があります。
- 1. 中国で成熟した人気プラットフォーム
RedNoteは中国で10年以上運営されている大手プラットフォームで、2024年3月時点で月間アクティブユーザーは3億人を超えていました。ライフスタイル情報や口コミが集まる場として特に若い女性に支持されており、商品購入の参考にするユーザーも多いため、強力なマーケティングツールとしても機能しています。 - 2. 中国と米国の生活をつなぐ「窓」
RedNoteは現在、地域ごとの閲覧制限があまり見られず、世界中の投稿を横断的に見られる設計になっています。中国本土向けと海外向けでサーバーが分かれているTikTokとは異なり、RedNote上では中国のユーザーと米国のユーザーがお互いの日常を直接のぞき見ることができる点が、移住先としての魅力になりました。 - 3. 禁止措置への「抗議」の意味合い
多くのTikTokユーザーは、RedNoteに移る行為そのものをメッセージだと受け止めています。動画のなかで、RedNoteをダウンロードすることは、TikTok禁止を進める米国政府や、TikTokからユーザーを取り戻そうとしているとされるメタなどの大手プラットフォームに対する意思表示だと語る人もいます。
RedNoteで広がる予想外の交流
RedNoteに流入した海外ユーザーたちは、多くが友好的な姿勢を示しています。ペットの写真を投稿して場を和ませるcat tax(猫税)と呼ばれる慣習に倣い、自分の猫や犬の写真を載せる人も少なくありません。中国のネット文化に溶け込もうと、最新のミームや流行表現を教えてほしいと尋ねる投稿も目立ちます。
こうした動きに対し、RedNoteの中国人ユーザーもコメント欄で温かく応じています。英語が得意ではないユーザーも、知っている単語を総動員しながら、ポルノ、違法薬物、ギャンブルなどは禁止されているといった基本ルールを丁寧に説明しています。また、一部の学生は自分の英語の宿題の写真を投稿し、ネイティブ話者に添削を求めるなど、学びの場として活用する例も見られます。
本来は米国の規制に対する逃避先として選ばれたRedNoteが、結果として中国と米国の若者の間に新たな交流空間を生み出しているのは、国際SNSならではの皮肉ともいえます。
急増する利用者が突きつけるリスク
一方で、RedNoteの急激な国際化はリスクもはらんでいます。ユーザー数が増え注目度が高まれば、TikTokと同様に米国政府の新たな規制や監視の対象となる可能性があります。ただし、米国の利用者が使う中国発アプリを次々と禁止することは、実務面でも政治的にも現実的ではないとの見方もあります。
また、中国ではデータ安全やプライバシー保護に関する法律が厳格であり、海外ユーザーの個人情報の扱いについても慎重な対応が求められます。RedNoteのようなプラットフォームは、国内法と海外ユーザーの期待の両方に応えるバランスを取る必要があり、そのプレッシャーは今後いっそう高まる可能性があります。
日本の私たちにとっての意味
今回のTikTok難民とRedNote流入の動きは、米国と中国という二つの大国のあいだで起きた現象ですが、グローバルなサービスに依存する日本の利用者にとっても無関係ではありません。もし自分が毎日使っているSNSが、政治や安全保障を理由に突然使えなくなったら、どのような選択肢を取るでしょうか。
- 自分の情報やつながりが特定のプラットフォームに集中しすぎていないか
- プラットフォームの出身国や企業よりも、どのようなコミュニティや文化が形成されているかを重視できるか
- 国境を越えたオンライン空間で、異なる文化の人とどう向き合うか
国際ニュースとしてのTikTokとRedNoteの動きは、単なるアプリ乗り換えの話にとどまりません。SNSが国境や制度の変化にどう揺さぶられ、同時に人と人との新しいつながりを生み出していくのか。その最前線を映し出す一例として、今後の展開を追っていく価値がありそうです。
Reference(s):
U.S. TikTok move drives users to … another Chinese social media app
cgtn.com








