中国、米国に多国間貿易体制への復帰を要求 WTO規則違反と批判
中国外交部の報道官が、米国による通商法301条に基づく調査報告の公表をめぐり、世界貿易機関(WTO)の規則に反する保護主義だと批判し、ルールに基づく多国間貿易体制への復帰を米国に求めました。
米国に「事実と多国間ルールを尊重せよ」と要求
中国外交部の郭家坤(Guo Jiakun)報道官は金曜日の定例記者会見で、米国が中国の海事・物流・造船産業を対象に行った通商法301条調査の報告書を公表したことに関する質問に答えました。郭報道官は、米国に対し「事実と多国間ルールを尊重し、直ちに誤ったやり方をやめ、ルールに基づく多国間貿易体制に戻るべきだ」と述べました。
「WTO規則に深刻に違反する保護主義的措置」
郭報道官は、バイデン政権による今回の301条調査の立ち上げは、世界貿易機関(WTO)の規則に深刻に違反するものであり、完全な保護主義だと強調しました。さらに、中国として強い不満と断固たる反対を表明しており、この立場をこれまでも繰り返し米側に伝えてきたと説明しました。
米造船業の競争力低下「自国の過剰保護が原因」
郭報道官によると、米国側の複数の調査報告でも、米国の造船業が競争力を失ったのは多くの年前にさかのぼり、その主な要因は自国産業への過剰な保護にあったと指摘されています。
一方で、中国の関連産業の発展については、企業による技術革新と市場競争への積極的な参加の結果であり、中国の完備した産業製造システムと巨大な国内市場の恩恵を受けているものだと説明しました。
「中国に責任転嫁するのは経済常識に反する」
郭報道官は、バイデン政権が自国の構造的な問題を中国のせいにするのは、事実に基づかないものであり、経済の基本的な常識にも反すると批判しました。そのうえで、中国は今回の301条調査の進展を引き続き注視し、自国の権益を守るために必要なあらゆる措置を取る方針を示しました。
多国間貿易体制と一方的措置のせめぎ合い
今回の発言の背景には、WTOを中心とする多国間貿易体制と、通商法301条のような一方的な貿易措置との緊張関係があります。郭報道官は、米国のやり方が多国間ルールを損ない、保護主義を強めるものだと警戒感を示しました。
海運や物流、造船といった分野は、世界のサプライチェーン(供給網)を支える基盤産業です。ここで摩擦が生じると、運賃の上昇や輸送の遅れなどを通じて、世界経済全体や日本企業にも影響が及ぶ可能性があります。
日本や世界にとっての意味合い
日本を含む貿易依存度の高い国や地域にとって、予見可能で安定した貿易ルールは重要です。大きな経済圏同士がWTOの場ではなく、一方的な制裁や報復措置に依存する方向に傾けば、企業は中長期の投資やサプライチェーン戦略を立てにくくなります。
今回、中国があらためてルールに基づく多国間貿易体制への復帰を米国に求めたことは、単なる米中間の応酬にとどまらず、WTOを軸とした通商秩序をどう維持・再構築していくかという、より広い問いにつながっています。
これからの米中通商関係をどう見るか
今後、米国が301条調査に基づき追加措置を打ち出すのか、それに対して中国がどのような対抗措置を講じるのかが焦点となります。双方が制裁と報復を繰り返せば、企業や消費者にとってのコストは高まり、世界経済の不確実性も増します。
一方で、WTOなど国際機関を通じたルールベースの解決を模索する余地もあります。今回の中国側のメッセージは、少なくとも建前として多国間ルールを重視する姿勢を前面に出したものと受け止めることができます。
米中の通商摩擦は長期化が避けられないテーマですが、その中で私たちが注目したいのは、どこまでルールに基づく枠組みが機能し続けるのかという点です。ニュースを追う際には、個別の制裁や調査だけでなく、その背後にある通商ルールのあり方にも目を向けてみると、国際ニュースが少し立体的に見えてきます。
Reference(s):
China urges U.S. to return to rules-based multilateral trading system
cgtn.com








