中国科学院が2024年科学技術成果賞 電池・量子・火星・黒土地が集結
中国科学院が2024年の傑出科学技術成果賞の受賞者を発表しました。リチウム電池や量子材料、火星探査、エネルギー貯蔵、黒土地の保全など、中国発の最先端研究が一堂に会し、これからのエネルギー、宇宙、農業を左右するテーマが並んでいます。
2024年傑出科学技術成果賞とは
中国科学院の傑出科学技術成果賞は、過去5年間に生まれた重要な科学技術成果に大きく貢献した個人や研究グループをたたえる賞です。2002年に創設され、推薦と審査は2年ごとに行われています。今回の発表では、2人の研究者と14件の科学技術成果が選ばれました。
- 個人業績賞:2人
- 基礎研究賞:天の川銀河や火星環境の進化など4プロジェクト
- 技術発明賞:大規模圧縮空気エネルギー貯蔵技術など5プロジェクト
- 科学技術突破賞:黒土地の保全と地力回復など5プロジェクト
個人業績賞 リチウム電池と量子材料のフロンティア
個人業績賞には、リチウム電池研究の第一人者である陳立泉氏と、量子材料の最前線を切り開いてきた陳仙輝氏の2人が選ばれました。
陳立泉氏:リチウム電池研究を40年以上牽引
中国工程院の院士である陳立泉氏は、1976年から40年以上にわたってリチウム電池研究に取り組んできました。中国における固体イオニクス分野を切り開き、リチウム電池の研究開発をいち早く主導してきたことが評価されています。こうした長年の蓄積が、中国のリチウム電池産業の発展の土台となり、継続的な高度化の道筋をつくったとされています。
陳仙輝氏:量子材料の物理を切り拓く
中国科学院の院士である陳仙輝氏は、カゴメ超伝導体や界面超伝導、磁性トポロジカル絶縁体など、量子材料のフロンティア領域で大きな成果を上げてきました。これらの研究により、量子材料技術の進展を支える堅固な物理的基盤を築き、この分野の最先端研究を力強く前進させています。
基礎研究賞 天の川銀河と火星を読み解く
基礎研究賞には、天の川銀河の初期形成と進化、火星の多時間スケール環境進化の研究など4つのプロジェクトが選出されました。なかでも、火星環境の進化を追う研究は、複数分野を横断するアプローチで画期的な成果をあげています。
中国科学院の地質与地球物理研究所と国家天文台の研究者たちは、火星の環境進化に関する学際的な研究を展開し、火星における水の活動を多様な時間スケールで理解する上で大きなブレークスルーを達成しました。
研究チームは、火星の浅い地下構造において、細かな層構造や横方向の変化を初めて明らかにしました。これにより、火星の長期的な水活動や環境変化について新たな手がかりが得られ、火星の古い磁場と古環境がどのように共進化してきたのかを考えるうえで、新しい視点が提示されています。
技術発明賞 大規模圧縮空気エネルギー貯蔵の実証
技術発明賞には、大規模圧縮空気エネルギー貯蔵技術の開発と応用など、5つのプロジェクトが選ばれました。再生可能エネルギーの有効活用や電力システムの安定化に直結するテーマとして、注目度の高い分野です。
中国科学院の工程熱物理研究所のチームは、化石燃料を使わず、特定の地形条件にも依存しない先進的な圧縮空気エネルギー貯蔵システムを開発しました。このチームは、世界初となる10メガワット級、100メガワット級、300メガワット級の実証システムを相次いで構築し、国際的な性能記録を更新し続けています。
科学技術突破賞 黒土地の劣化を食い止める
科学技術突破賞には、農地の劣化を抑え、黒土地の地力を高めるための重要技術を用いたプロジェクトなど、5件が選ばれました。特に、黒土地の保全と活用をめぐる研究は、中国の食料安全保障戦略にも直結するテーマとして位置づけられています。
中国科学院の東北地理与農業生態研究所などの研究者は、黒土地の保全と持続的な利用に焦点を当て、学際的な共同研究を進めてきました。その成果として、中国で初めて黒土地中の有機物を10メートル解像度で可視化した高精細マップを作成し、黒土地に関する初のホワイトペーパーを発表しました。こうした取り組みを通じて、国家の食料安全保障戦略の具体化に貢献しています。
このニュースから見えるもの エネルギー・宇宙・農業をつなぐ視点
今回の中国科学院による表彰は、一見ばらばらに見えるテーマが、実は共通の課題につながっていることを示しています。
- リチウム電池と圧縮空気エネルギー貯蔵:エネルギー転換とカーボンニュートラルに関わる中核技術
- 量子材料と宇宙探査:物質と宇宙の根本的な理解を深めるフロンティア
- 黒土地の保全:食料安全保障と持続可能な農業を支える基盤
エネルギー、宇宙、農業という一見別々の領域が、科学技術と政策の両面でどのように結びついていくのか。今回の受賞テーマを入り口に、自分の関心分野と世界の動きの接点を考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Chinese Academy of Sciences honors pioneers in science and technology
cgtn.com








