中国SNS「レッドノート」に殺到するTikTok難民 小紅薯たちの温かい歓迎
2025年1月、米国で人気動画アプリTikTokの停止期限が迫るなか、「TikTok難民」と名乗るユーザーが中国SNS「レッドノート(小紅書)」に一斉に流入しました。そこで彼らを迎えたのは、自らを「小紅薯(リトル・スイートポテト)」と呼ぶ中国の利用者たちでした。
米TikTok規制で生まれた「TikTok難民」
短編動画プラットフォームTikTokは、中国企業バイトダンスが運営するサービスです。2024年4月、米国のバイデン大統領は、TikTokをめぐる根拠のない国家安全保障上の懸念を理由に、バイトダンスに対して「270日以内にTikTokを米企業に売却するか、さもなければ米国内での提供を停止するか」を迫る法律に署名しました。
期限は2025年1月19日。この日以降、バイトダンスが売却に応じなければ、アップルやグーグルなどのアプリストア事業者はTikTokを削除することが義務づけられます。
この締め切りを前にした週、アナリティクス企業Similarwebのデータによると、約300万人の米国ユーザーが、たった1日で中国のSNS「レッドノート」に新規登録しました。レッドノートは米アップルストアの無料アプリランキングでトップに躍り出て、「TikTokの代わり」を探す利用者の受け皿になりました。
同じ週の金曜日には、米連邦最高裁判所がこの法律を支持し、「売却か禁止か」という判断を維持すると決定。翌日曜日の19日に禁止措置が始まるとされるなか、翌月曜日にはトランプ次期大統領が就任する予定で、TikTokの行方にさらに注目が集まっていました。
8歳のルチア「難民ではなく友だち」
そんな不安定な状況の中で、「TikTok難民」と呼ばれる米国ユーザーを温かく迎えたのが、レッドノートの中国人クリエイターたちです。
象徴的な存在となったのが、8歳の少女ルチア。彼女はレッドノートに英語の動画を投稿し、「Hello, TikTok Refugees! I'm Lucia. I'm eight years old.」と呼びかけました。
ルチアは流ちょうな英語でこう続けます。「ここ数日で、レッドノートでたくさんの外国人ブロガーに出会いました。とても驚いたし、うれしいです。みなさんを『難民』と呼ぶのはふさわしくないと思います。私は、みなさんを友だちと呼びたいです」。
言語の壁に戸惑う米ユーザー
レッドノートは2013年にサービスを開始した中国発のSNSで、短編動画機能もありますが、もともとはライフスタイル情報の共有や口コミが中心のコミュニティとして知られています。
米国から流入したユーザーはすぐに、「ここは言語的に未踏の地だ」と気づきます。プラットフォーム上の投稿やコメントの多くは中国語(普通話)で書かれており、英語話者には使い方が分かりにくいのです。
そのためレッドノート上では、「このアプリはどうやって使うの?」「おすすめのアカウントは?」といった英語の投稿が一気に増え、使い方のヒントを求める声が相次ぎました。
「小紅薯」たちが案内役に 72歳のおばあちゃんも活躍
ここで立ち上がったのが、レッドノートの既存ユーザーたちです。彼らはプラットフォームの中国語名「小紅書」にちなんで、自分たちを親しみを込めて「小紅薯(リトル・スイートポテト)」と呼んでいます。
多くの小紅薯が英語やシンプルな中国語で、米国ユーザー向けの「使い方ガイド」や「おすすめ機能紹介」動画を投稿し始めました。
なかでも注目を集めたのが、「英語が大好きな72歳のおばあちゃん」を名乗るユーザー「于おばあちゃん」です。彼女は英語の動画で「Hello, TikTok Refugees! Welcome to RedNote! I'm a 72-year-old grandma who loves speaking English.」と自己紹介し、レッドノートの楽しみ方を丁寧に解説しました。フォロワーは30万人にのぼります。
于さんは、「レッドノートの特別なところは、単に自分を見せびらかす場ではなく、コミュニティのように感じられることです」と話します。
こうした歓迎ムードに対し、米国側からも感謝の声が上がりました。レッドノートに移ってきたブロガーの一人「Tay」は、「アメリカ人がここで歓迎されていると感じます。中国の人々は本当に親切です」と語っています。
プラットフォーム移民が映す「デジタル国境」
今回の「TikTok難民」現象は、いくつかの点で現代のインターネットの姿を映し出しています。
- 規制が生むユーザーの大移動:一つの法制度の変化が、数百万人規模のユーザーを別のプラットフォームへと一気に動かしました。
- 言語と文化のギャップ:同じ短編動画や写真中心のSNSでも、言語や文化が違えば「使い方」も変わります。そのギャップを埋めたのが、両方の世界をつなぐ個人ユーザーでした。
- 顔が見える交流:8歳の少女や72歳のおばあちゃんといった具体的な顔を持った人々が、国境を越えた交流の象徴になったことも印象的です。
日本の読者にとっての示唆
日本でも多くの人がTikTokやさまざまなSNSを日常的に使っています。今回の出来事から、次のような問いを投げかけることができそうです。
- 一つのアプリやプラットフォームに依存しすぎていないか
- アルゴリズムが選んだ情報だけでなく、異なる文化圏や言語の情報にも触れようとしているか
- SNSを「見せる場」だけでなく、「学び合うコミュニティ」として活用できる余地はないか
米国のTikTok規制と、中国SNSレッドノートでの「小紅薯」たちの取り組みは、SNSが単なる娯楽ではなく、政治や社会、そして私たち一人ひとりのコミュニケーションのあり方と深く結びついていることを静かに示しています。
Reference(s):
Chinese 'Little Sweet Potatoes' embrace millions of 'TikTok refugees'
cgtn.com








