パン職人から中国スノーボード界のアイコンへ Zhang Jiahao の物語 video poster
パン職人から中国スノーボード界のアイコンへ Zhang Jiahao の物語
ホテルのパン職人から中国のナショナルチャンピオンへ。北京冬季五輪には届かなかったものの、挑戦をやめないスノーボード選手 Zhang Jiahao の歩みは、2025年の今も多くの人をひきつけています。本記事では、その人生の転機と考え方を、日本語ニュースとして丁寧に追います。
パンを焼いていた17歳、初めてのスノーボード
人々が彼を呼ぶあだ名は、スノーボード狂。スノーボード、登山、スキー――Zhang Jiahao にとって、アウトドアスポーツこそが自分を定義するものです。
現在30歳の彼が初めてボードに乗ったのは17歳のとき。まだホテルのレストランでベーカーとして働いていた頃でした。2012年、高校の同級生たちと一緒にスキー場へ行ったのがきっかけだったといいます。
その日を境に、彼の人生は大きく方向を変えました。厨房でパンをこねる日々から、雪山で自分自身を試す日々へ。自分の道を選ぶことを、Zhang は迷いなく選び取ります。
仲間と動画だけが先生だった時代
彼がスノーボードを始めた当時、中国のインターネット環境は今ほど発達していませんでした。WeChat を使い始めたばかりで、連絡手段の中心はまだ QQ。動画サイト Youku に上がっているスノーボードの映像を、仲間たちと何度も見返しては技を真似していたといいます。
テクニックを体系的に教えてくれるレッスン動画もほとんどなく、頼りになるのは仲間との対話と試行錯誤だけでした。Zhang は当時を振り返り、仲間と意見を交わしながら、動画を見てはゲレンデで実験する毎日がいちばん楽しかったと語っています。
数え切れない転倒と重傷、それでも雪山に戻る理由
もちろん、上達の道は平坦ではありませんでした。Zhang は数えきれないほど転び、その代償として大きなケガも負ってきました。
- 両手の骨折
- 両脚の骨折
- 肺の損傷
- 複数回の脳震とう
普通なら、一度でも経験すれば雪山から距離を置きたくなるようなケガです。それでも彼は、再びボードを手に山へ戻ります。
その原動力について、Zhang はこう語ります。原点のモチベーションが、今も情熱の源になっている。好きなことを追いかけ、目標に一歩ずつ近づき、そのプロセスそのものを楽しむことだと。
北京冬季五輪の夢と、挑戦することの意味
3年前、Zhang は一人で世界中を転戦しながら、北京冬季五輪への出場権をつかもうとしました。結果として、五輪の舞台に立つことはできませんでした。
しかし、その挑戦のストーリーは、多くの人の心を動かします。彼は今、中国の冬季スポーツ界で最も知られ、愛されるアスリートの一人となりました。
Zhang は振り返ります。五輪に出られなかったけれど、みんながやりたいと思っていながら、実際に挑戦する人は少ないことを、自分はやりきったのだと気づいた、と。現在、彼はナショナル・スノーボード・チャンピオンとして活躍しています。
フリーライド・ワールド・ツアーという新たな舞台
五輪という一つの夢が途切れたあと、Zhang が見出した次のステージが、フリーライド・スノーボードでした。自然の地形を生かし、コースにしばられないダイナミックな滑りを競うスタイルです。
彼が挑むのは、フリーライド・ワールド・ツアー FWT と呼ばれる国際大会シリーズです。将来オリンピック種目になる可能性もあるとされており、Zhang はここに新たなチャンスを見ています。神さまがもう一度チャンスをくれたから、またこのステージに戻ってきたのだと、彼は笑いながら語ります。
山岳スキーと持久力、終わりなき自分との勝負
2025年現在、Zhang はフリーライドだけでなく、山岳スキーにも本格的に取り組んでいます。長時間の登りと過酷な環境が当たり前の山岳スキーでは、高い持久力と集中力が求められます。
危険を伴う挑戦をなぜ続けるのか。その問いに対し、Zhang は達成感という言葉を選びました。整備されたゲレンデには、すでに誰かのシュプールが刻まれている。しかし、自分で山を登り、自分だけのラインを描き、振り返ったときに雪の斜面に残るその一本線は、自分だけのものだと感じられる、といいます。
雪面に残る一本線が教えてくれること
Zhang にとって、雪面に残る一本のラインは、単なる軌跡ではありません。それは、自分が恐怖や不安と向き合いながらも進んできた証であり、人生の意味を確かめる行為に近いものです。
毎日はトレーニングと準備の連続であり、挑戦と情熱の積み重ねでもあります。自分にできることはすべてやり切り、あとは運に任せる。そのスタンスこそが、彼が最も心地よくいられる生き方です。
ホテルの厨房でパンを焼いていた10代の青年が、中国の冬山を駆けるスノーボードの象徴的な存在になるまで。Zhang Jiahao の物語は、キャリアや年齢にかかわらず、好きなことにどこまで本気で向き合えるのかという問いを、私たち一人ひとりに静かに投げかけています。
短い動画や投稿があふれる時代に、誰かの本気の挑戦をじっくり追うことは、自分の次の一歩を考えるヒントにもなります。通勤時間やスキマ時間に、こんなストーリーをシェアしながら、自分なら何に挑戦したいかを考えてみるのもよいかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








