トランプ大統領がTikTok禁止を75日延期 このあと何が起きるのか
米国のトランプ大統領が、人気短尺動画アプリTikTokの禁止措置の発効を75日延期する大統領令に署名しました。1月19日に予定されていたサービス停止はひとまず先送りになりましたが、法的な位置づけや今後のシナリオには多くの不確実性が残っています。本稿では、この動きのポイントと今後起こり得る展開を整理します。
就任直後に署名 TikTok禁止は一旦ストップ
トランプ大統領は、米国の第47代大統領として就任した月曜日、就任直後にTikTokを巡る大統領令に署名しました。今回の大統領令は、TikTokの親会社である中国のバイトダンスに対し、国家安全保障上の理由から米国事業の売却かアプリの禁止かを求めた法律の執行を、75日間先送りにする内容です。この法律のもとでは、TikTokは1月19日に停止される予定でした。
トランプ氏は署名の際、アプリを存続させる見返りとして、米国政府がTikTokの米国事業の半分を保有すべきだと示唆し、中国に対して関税を課す可能性にも言及しました。これに対し中国外務省は、企業活動や取引に関する判断は企業が独自に行うべきだと強調しています。
親会社バイトダンスは、今回の大統領令や進行中の交渉について公式声明を出しておらず、国際メディアCGTNの照会にも現時点で回答していません。
TikTokのショウ・ジ・チュー最高経営責任者(CEO)も、多くのテック企業の経営者とともに就任式に出席し、主要な席に座りました。ただし、この場でトランプ氏とTikTokの将来について協議したという確かな報道は出ていません。
TikTokの「ティックトック」な数日間
今回の騒動は、TikTokが米国で一時的に姿を消したところから始まりました。法律の発効を控えた土曜日、米国の約1億7千万人のユーザーにとってアプリはオフラインとなり、その直前に、売却か禁止かを迫る法律が日曜日に発効しました。
翌日、トランプ氏がTikTokを救済する計画があると発言すると、数時間のうちにTikTokは米国内でサービスを復旧させました。現在、アプリやウェブサイト自体は米国で利用可能ですが、アップルやグーグルのアプリストアでは引き続き新規ダウンロードができない状態です。
議会がつくった法律をどこまで大統領令で動かせるか
トランプ大統領の大統領令は、司法長官に対しTikTok関連の法律の執行を75日間見送るよう指示し、その間にTikTokへの対応について適切な方針を検討するとしています。一方で、この法律はすでに議会で圧倒的多数により可決され、前任のバイデン大統領が署名し、連邦最高裁判所も全会一致で合憲と判断したものです。
法律自体は、バイトダンスがTikTokを売却する拘束力のある合意を結んでいる場合を除き、大統領に期限延長の権限を認めていません。こうした条件が満たされているのかは明らかになっておらず、大統領令の法的な位置づけには不透明さが残ります。
大統領令は、法律そのものを書き換えるものではなく、司法省による執行の優先順位を示したに過ぎないとの見方もあります。その場合でも、議会や裁判所がこの判断をどう受け止めるのかは、今後の大きな焦点になりそうです。
アップル・グーグル・オラクルに送られる書簡
今回の大統領令は、AppleやGoogle、そしてクラウドなどのサービスを提供するOracleといった企業に対し、司法省が書簡を送るよう指示しています。書簡の内容は、TikTokを巡る法律違反は発生しておらず、指定された期間中の行為について法的責任を問わないとするものです。
とはいえ、こうした書簡だけで、アップルやグーグルがすぐにTikTokアプリの配信を再開するかどうかは不透明です。企業側は、今後の政治的な動きや追加的な規制リスクを慎重に見極める必要があります。
- TikTokは米国内で利用はできるが、新規ダウンロードは停止中
- 大統領令は、サービス提供企業に法的責任を問わないとする書簡を約束
- それでもプラットフォーム側が慎重姿勢を崩すとは限らない
バイトダンスとTikTokに残された選択肢
親会社バイトダンスは、今回の事態についてこれまでのところ沈黙を保っています。そのため、どの選択肢に重心を置いているのかは見えていませんが、法律と大統領令から逆算すると、少なくとも次のようなシナリオが考えられます。
- 75日以内に売却交渉を前進させる:法律が求める拘束力のある合意を目指し、米国事業の売却や資本提携を具体化する道。
- 大統領令を前提に現状を維持する:執行の猶予を最大限活用しつつ、法的な動向を見極める道。ただし、議会や裁判所の反応次第でリスクも変動します。
- 米国政府による持ち分保有案を含めて再交渉する:トランプ氏が示唆した米国政府が半分保有するという案をめぐり、どこまで具体化できるかは、国内外で議論を呼びそうです。
どの道を選ぶにせよ、バイトダンスとTikTokは、米国内の政治・世論、そして国際的なビジネス環境をにらみながら、短期間で難しい判断を迫られることになります。
米中関係とデジタル経済への波及効果
今回の大統領令は、単に一つのアプリの運命だけでなく、米中関係や世界のデジタル経済にも影響し得る動きです。トランプ氏はTikTokを巡って中国に関税を課す可能性にも触れており、通商とデジタル政策が一体化しつつある姿が浮かび上がります。
一方、中国外務省は、企業が自らの判断で事業運営や取引を決めるべきだと強調しました。こうしたメッセージは、企業活動の予見可能性や、公正な競争環境をどのように確保するかという、より広い論点とも結びついています。
2025年現在、各国や地域でデジタル主権やデータの安全保障をめぐる議論が進むなか、グローバルに展開するプラットフォーム企業は、複数の法制度と政治的リスクのはざまで戦略を組み立てざるを得ません。TikTokを巡る一連の動きは、その象徴的なケースといえます。
これから注視したいポイント
今後75日間の猶予期間とその後の展開を見通すうえで、次の点が重要になりそうです。
- アップルやグーグルが、TikTokアプリの配信再開に踏み切るかどうか
- バイトダンスが売却や資本提携に向けた拘束力のある合意を公表するかどうか
- 米議会や連邦裁判所が、大統領令の妥当性についてどのような姿勢を示すか
- TikTokの利用状況や米国内の世論が、政治判断にどの程度影響を与えるか
ニュースを追う側としては、TikTokが使えるかどうかという利用者目線だけでなく、国家安全保障、通商、プラットフォームビジネスがどのように絡み合っているのかにも目を向けることで、今回の動きをより立体的に捉えられそうです。
Reference(s):
What could follow after Trump signs TikTok order delaying ban?
cgtn.com








