中国の「人工太陽」が世界新記録 1億度超プラズマを1,066秒維持
中国の核融合実験装置「人工太陽」が、1億度を超える高温プラズマを1,066秒(約18分)連続で閉じ込める世界新記録を達成しました。クリーンで持続可能なエネルギーとして期待される核融合発電の実現に向け、重要な一歩とみられます。
中国の「人工太陽」が打ち立てた新記録
中国メディアグループによると、中国東部・安徽省合肥市にある実験装置「EAST(実験用先進超伝導トカマク)」が、月曜日に1億度以上のプラズマを1,066秒にわたって安定して維持することに成功しました。
今回の成果のポイントは、高いエネルギー閉じ込め性能を持つ「高閉じ込めモード(Hモード)」という運転状態を、超高温かつ長時間にわたって維持できたことです。これは、将来の核融合炉が安定して運転できるかどうかを占う重要な指標とされています。
「EAST」とはどんな装置か
EASTは、太陽の中心で起きている核融合反応を地上で再現することを目指した実験装置です。水素や重水素(デューテリウム)などのガスを燃料にして、強力な磁場でプラズマをドーナツ形の空間に閉じ込め、非常に高い温度と圧力を作り出します。
この装置には、次のような先端技術が組み込まれています。
- 超伝導マグネットによる超強力な磁場の生成
- プラズマを囲む装置内部を極めてきれいに保つ超高真空システム
- 大電流と複雑な磁場を精密に制御する高度な制御技術
ほぼ100万点におよぶ部品が連携して動作しており、これまでに約2,000件の特許を取得しているとされています。
カギは「Hモード」:エネルギーを逃がさない運転状態
今回の成果でキーワードとなっているのが「Hモード」です。これはプラズマの周辺部の乱れ(乱流)が抑えられ、エネルギーが外へ逃げにくくなる状態を指します。
従来の「低閉じ込めモード(Lモード)」と比べると、Hモードには次のような特徴があります。
- プラズマのエネルギーが外に逃げにくく、閉じ込め時間がほぼ2倍になる
- 同じ投入パワーでも、より高い温度と密度を実現しやすい
- 将来の大型核融合炉での標準的な運転モードと想定されている
国際熱核融合実験炉「ITER」をはじめ、次世代の核融合プロジェクトは、このHモードで長時間・安定運転することを前提に設計されています。今回、EASTが1億度を超える超高温状態でHモードを1,066秒も維持できたことは、その実現可能性を裏付けるデータとして注目されています。
積み重ねられてきた長時間運転の記録
EASTは2006年の運転開始以来、これまでに15万回を超えるプラズマ実験を行い、長パルス運転(長時間運転)の限界に挑戦し続けてきました。
長時間のHモード運転に関しても、記録を少しずつ伸ばしてきています。
- 2012年:Hモードを30秒維持
- 2016年:60秒
- 2017年:101秒
- 2023年:403秒
- 今回:1,066秒(約18分)に到達
このように段階的に記録が更新されてきたことからも、装置そのものの改良と運転ノウハウの蓄積が着実に進んでいることが分かります。
クリーンエネルギーとしての核融合と今後の課題
核融合エネルギーは、大量の二酸化炭素を出さず、燃料となる水素資源も豊富であることから、「究極のクリーンエネルギー」と呼ばれることがあります。今回のような成果は、その実現に向けた明るい材料といえます。
一方で、実験室レベルの成果を、安定して電力を供給できる産業用の発電所にまで高めるには、まだ多くの課題が残されています。
- より長時間・高出力での連続運転
- 装置材料の耐久性向上
- コスト面も含めた技術の成熟
こうした課題に取り組むうえで、EASTで得られたデータや運転経験は、今後の大型核融合プロジェクトや将来の実証炉の設計にとって、貴重な基盤となっていきそうです。
私たちの生活にとって何を意味するのか
今回の記録達成がすぐに電気料金の低下やエネルギー事情の劇的な変化につながるわけではありません。しかし、将来のエネルギー選択肢を広げるという意味で、重要な一歩であることは確かです。
再生可能エネルギーや省エネとあわせて、核融合のような新しい技術が成長することで、世界のエネルギーシステムは今後数十年かけて大きく変わっていく可能性があります。その動きの一端として、中国の「人工太陽」による今回の成果は、国際ニュースとしても注目しておきたいトピックだと言えるでしょう。
Reference(s):
China's 'artificial sun' sets new world record: 100m C for 1,066 sec
cgtn.com








