慢性副鼻腔炎の新犯人 免疫細胞グランザイムKが炎症を悪化
最近、科学誌Natureに掲載された国際ニュースとして、慢性副鼻腔炎や鼻ポリープの仕組みに関する重要な発見が報告されました。世界で多くの人が悩む鼻づまりや頭痛の背景に、ある免疫細胞が深く関わっている可能性が示されています。
慢性副鼻腔炎の「新犯人」は免疫細胞グランザイムK
清華大学と北京同仁病院の研究チームは、約10年にわたる調査の末、慢性副鼻腔炎や鼻ポリープにおける持続的な炎症と組織ダメージに、グランザイムK(Granzyme K、GZMK)と呼ばれるタンパク質が中心的な役割を果たしていると報告しました。
GZMKは、特別なタイプの「記憶CD8陽性T細胞」と呼ばれる免疫細胞が分泌します。本来、こうしたT細胞はウイルスなどから体を守る「防御のエリート部隊」とされていますが、今回の研究では、状況によっては逆に炎症をあおる存在になりうることが示されました。
「防御のエリート部隊」が炎症を長引かせる仕組み
北京同仁病院の張洛(Zhang Luo)医師は、白血球を「体を守る軍隊」、リンパ球の一種であるT細胞を「その中でも精鋭部隊」、そして記憶CD8陽性T細胞を「特殊部隊のような存在」と説明しています。
通常の細胞はグランザイムBという物質を放出して敵を攻撃しますが、今回注目された記憶CD8陽性T細胞は、代わりにグランザイムKを分泌します。研究チームによると、このグランザイムKは、抗体の助けを借りずに体の防御システムを活性化できる一方で、防御どころか組織の損傷と炎症を強め、慢性副鼻腔炎や鼻ポリープの症状を悪化させてしまうということです。
世界中で患者が多い慢性副鼻腔炎と鼻ポリープ
慢性副鼻腔炎や鼻ポリープは、世界中で何百万人もの人が悩まされている病気です。代表的な症状には、頑固な鼻づまり、においが分かりにくくなる嗅覚障害、頭痛などがあります。
現在の治療法は、薬や手術などによって症状をやわらげることはできるものの、効果が一時的にとどまるケースも多く、再発を繰り返す患者も少なくありません。今回の研究は、なぜ炎症が長引きやすいのか、その一端を説明する手がかりになるとみられます。
GZMKを狙い撃ちする新薬の可能性
研究チームは実験モデルを用いて、GZMKを抑えると炎症が大きく減少することも示しました。この結果から、GZMKは新しい薬の標的として有望だと考えられています。
清華大学の戚海(Qi Hai)教授は、将来、グランザイムKを狙って作用する薬が開発されれば、炎症のコントロールや再発の抑制に役立ち、慢性副鼻腔炎や鼻ポリープ、関連するアレルギー性疾患の治療のあり方が大きく変わる可能性があると述べています。
身近な「鼻の不調」から見える、免疫研究の最前線
慢性的な鼻づまりやにおいの異常は、仕事や勉強、日常生活の質を大きく下げてしまいます。今回、国際的な科学誌で発表された研究は、そうした身近な不調の背後にある免疫システムの複雑な働きを明らかにしつつあります。
グランザイムKと記憶CD8陽性T細胞に注目することで、これまで「仕方がないもの」とされてきた慢性副鼻腔炎や鼻ポリープに対しても、新たな治療戦略を描けるかもしれません。今後の追跡研究や薬の開発の進展が注目されます。
Reference(s):
Scientists find immune cells fueling chronic sinus infections
cgtn.com








