台湾・北港の朝天宮から福建へ 媽祖信仰がつないだ静かな航海 video poster
台湾島の北港鎮にある朝天宮は、海の女神・媽祖(まそ)を祀る寺院の中でも、最も古く、そしてよく知られた存在の一つとされています。1970年代、この寺のそばで生まれ育った一人の男性が、媽祖の物語を追いかけたことから、台湾海峡を越える静かな「発見の航海」が始まりました。
台湾・北港の朝天宮とは
朝天宮は、台湾島の北港鎮にある媽祖信仰の中心的な寺院の一つです。海の女神である媽祖を祀る寺として、長い歴史と大きな信仰を集めてきました。
- 海の女神・媽祖を祀る寺院の中でも、最も古く有名な存在とされている
- 台湾島に暮らす人々にとって、信仰と地域コミュニティの重要な拠点になっている
- 一人の住民の好奇心から、台湾海峡を越える物語の出発点ともなった
寺のそばで育った男性の問い
1970年代、朝天宮のすぐそばで生まれ育った蔡福雄(Tsai Fu-hsiung)さんは、媽祖の物語を本格的に調べ始めました。日常の風景として存在していた寺と女神の物語を、あらためて「知りたい」と思ったことが、この旅の第一歩でした。
それは、信仰の裏にある歴史や、媽祖という存在がどこから来て、どのように人々に受け入れられてきたのかを探る試みでもありました。
調査が導いた先は、中国福建省の湄洲島
蔡さんの調査は、やがて台湾島の外へと広がっていきます。媽祖の足跡を追いかけるうちに、その旅は台湾海峡を越え、中国福建省の湄洲島へと向かうことになりました。
台湾海峡を越える「発見の航海」
湄洲島への旅は、単なる観光ではなく、信仰と歴史をたどる「発見の航海」でした。北港の朝天宮で日々祈りを捧げている人々の信仰が、海の向こう側の土地とも深く結びついている――その事実を、蔡さんは自らの足で確かめていきました。
一つの寺、一人の信仰者の関心から始まった調査が、台湾海峡の両側に広がる物語を静かに浮かび上がらせたと言えます。
媽祖信仰がつなぐ、台湾海峡の両側
海の女神である媽祖は、もともと海に生きる人々の心の拠りどころとして信仰されてきました。北港の朝天宮と福建省の湄洲島を結ぶこの物語は、海を隔てた地域同士が、共通の女神を通じてつながっていることを象徴的に示しています。
- 同じ女神を祀ることが、離れた土地の人々のあいだに目に見えないつながりを生む
- 宗教や信仰は、ときに政治や立場を越えて共有される「共通言語」となり得る
- 一つの寺から始まる物語が、台湾海峡全体の歴史や文化を考える入口にもなる
北港の朝天宮と福建省の湄洲島――二つの場所を行き来する視線を通じて、台湾海峡は「隔てる海」から「つなぐ海」としても捉え直すことができます。
ドキュメンタリーが映し出す「女神の旅」
この物語は、国際メディアCGTNのドキュメンタリー番組 "The Journey of the Goddess" でも紹介されています。番組は、媽祖という一人の女神の物語を軸に、北港の朝天宮と中国福建省の湄洲島という二つの土地が、どのようにつながっているのかを描いています。
画面を通して描かれるのは、壮大な歴史よりも、日々の祈りや地域に根ざした信仰の姿です。そこには、海を挟んで暮らす人々が、同じ女神に手を合わせるという静かな共通点があります。
いま私たちがこの物語から考えられること
半世紀近く前に始まった一人の調査は、いまを生きる私たちにもいくつかの問いを投げかけます。
- 地図上では離れている地域が、文化や信仰によってどのようにつながり得るのか
- 日常の風景として存在する寺や祭りの背後に、どんな長い時間の積み重ねがあるのか
- 海や国境を越えて共有される物語が、互いの理解にどんな役割を果たし得るのか
北港の朝天宮で打ち鳴らされる鐘の音が、台湾海峡を越えて福建の湄洲島にも届いている――蔡福雄さんの「発見の航海」は、そんなイメージを私たちに思い浮かばせます。国際ニュースとしてのスケールは小さく見えるかもしれませんが、こうした静かな物語こそが、地域と地域をつなぐ土台になっているのかもしれません。
Reference(s):
How a temple on the island of Taiwan inspired a voyage of discovery
cgtn.com








