ダボス2025で注目集める中国のグリーン転換と気候協力の最前線
世界経済フォーラム(WEF)の2025年年次総会「ダボス会議」では、気候変動が最重要テーマの一つとして浮上しました。国連のグテレス事務総長が、化石燃料依存を「フランケンシュタインの怪物」にたとえたその場で、中国のグリーン転換と国際的な気候協力への貢献があらためて注目を集めています。
中国は、自国の環境課題への対応にとどまらず、技術革新や政策対話、途上国支援を通じて、地球規模の気候行動をけん引する存在として存在感を強めています。
ダボス2025で示された「2030年ピーク・2060年カーボンニュートラル」
ダボス会議で登壇した中国の丁学祥副総理は、中国が掲げる二つの大きな目標をあらためて強調しました。
- 2030年までに二酸化炭素排出量のピークを迎える
- 2060年までにカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を達成する
これらの目標は、環境対策だけでなく、経済成長や技術革新と一体となった「グリーン転換」の長期戦略の中に位置づけられています。丁副総理は「中国のグリーン転換の追求は、場当たり的な対応ではなく長期的なコミットメントだ」と述べ、国際情勢がどう変化しても、気候変動への積極的な対応は揺るがないと強調しました。
世界最大規模のカーボン市場:中国の排出量取引制度
中国の気候政策の柱の一つが、2021年にスタートした全国排出量取引制度(カーボン市場)です。温室効果ガスの対象排出量では、世界最大規模の市場となっています。
現在、この市場には中国の電力部門を中心に2,400を超える排出単位が参加しており、高排出産業に対し、市場メカニズムを通じて排出削減を促しています。排出枠を売買できる仕組みにすることで、排出削減コストの低い企業がより多く削減し、それを必要とする企業に枠を販売することが可能になります。
その結果、電力業界全体の排出削減コストは累計で350億元(約48億ドル)節約されたとされ、コスト効率の高い排出削減が実現しつつあります。この動きは、排出量取引制度を検討する他国にとっても一つの参考モデルとなりうるものです。
再生可能エネルギーで加速する「脱・化石燃料」
カーボン市場と並んで、中国のグリーン転換を象徴しているのが再生可能エネルギーの急速な拡大です。中国は太陽光、風力、原子力といった分野で世界有数の導入規模を誇ります。
特に太陽光発電では、2024年だけで世界全体の太陽光発電設備容量の半分以上が中国で新たに設置されたとされ、世界のクリーンエネルギー市場における存在感を一段と高めました。
2025年には、再生可能エネルギーによる発電量が年間約3.3兆キロワット時に達する見通しで、これは2020年比で5割増に相当します。石炭などの化石燃料から再生可能エネルギーへとエネルギーミックスを転換することで、長期的な排出削減とエネルギー安全保障の両立をめざしています。
「捨てない経済」へ:循環経済とリサイクル産業の拡大
中国のグリーン転換は発電分野にとどまりません。資源を「使って捨てる」直線型の経済から、再使用・再資源化を重視する「循環経済」への転換も加速しています。
ここ数年、中国はプラスチック、金属、電子機器などの主要資源について、リサイクルを促進する政策を相次いで導入してきました。2024年時点で、資源リサイクル関連企業は全国で26万社を超え、生産額は3.5兆元(約4,800億ドル)に達しています。2025年には、この分野の生産額が5兆元規模に拡大すると見込まれています。
丁副総理はダボス会議で、リサイクルと新素材技術を組み合わせた実例として、ペットボトルから衣料品を作る中国企業の取り組みを紹介しました。新素材の技術を活用し、8本のペットボトルからTシャツ1枚、28本からジャケット1着を生産できるといいます。
このプロセスにより、年間300億本を超えるペットボトルが再資源化されており、環境保護と経済価値の両方を生み出す「エコとビジネスの両立」の一例となっています。
電気・電子廃棄物への本格対応と公的支援
循環経済の推進に向けて、電気・電子製品の廃棄物対策にも公的資金が投じられています。今月初め、中国の財政省は使用済み電気・電子製品の処理を対象とした75億元の予算を初めて専案で計上し、92社に対する直接支援を決定しました。
これは、大気や排水、土壌などの汚染対策を含む、2025年の環境汚染防止予算約1,000億元の一部を構成するものです。製品ライフサイクル全体を見据えた対策が進むことで、廃棄段階での環境負荷の低減が期待されます。
南南協力で広がる国際的な気候パートナーシップ
中国は国内対策にとどまらず、国際協力、特に途上国同士の「南南協力」においても気候変動分野の支援を強化しています。技術移転、資金支援、政策対話を組み合わせ、他の開発途上国のグリーン転換を後押ししています。
具体的には、エチオピアやスリランカに対して再生可能エネルギーの技術移転プロジェクトを支援し、省レベルのエネルギー開発計画の策定を手助けしてきました。また、共同研究センターや普及センターの設立も支援し、現地に根ざした技術開発と人材育成を進めています。
こうした取り組みは、開発途上国が自国の状況に合った形でクリーンエネルギーへの移行を進めるうえで重要な意味を持ちます。同時に、グローバルな気候協力の土台を広げる動きとも言えます。
ポスト・ダボスの視点:気候協力の「速度」をどう決めるか
グテレス事務総長が指摘したように、化石燃料への依存をいかに早く断ち、持続可能なエネルギー体制へ移行するかは、世界全体にとって時間との戦いになりつつあります。その中で、中国のグリーン転換のペースと方向性は、国際的な気候協力の「速度」を左右する要素の一つになっています。
中国の排出量取引制度、再生可能エネルギーへの大規模投資、循環経済の拡大、そして南南協力を通じた途上国支援は、いずれも実務的で具体的な取り組みです。これらがどこまで継続・強化されるのか、そして他の国々がどのように連携していくのかは、今後数年の国際議論の焦点となっていくでしょう。
丁副総理が語った「中国の気候行動への決意は変わらない」というメッセージは、単なるスピーチではなく、政策や投資としてどこまで具現化されるかが試される局面に入っています。日本を含むアジアの読者にとっても、ダボス2025で示されたこの流れが、地域のエネルギー政策やビジネスチャンスにどのような形で波及していくのかを注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
Davos 2025: China's green transition sets pace for climate cooperation
cgtn.com








