中国大使が語る「氷を砕く精神」 揺れる中国・英国関係の今
最近、ロンドンで開かれた春節行事「Icebreakers Chinese New Year Dinner」で、駐英国中国大使の鄭沢光(Zheng Zeguang)氏が、今後の中国・英国関係について基調講演を行いました。変化と不確実性が増す2025年の国際情勢の中で、「氷を砕く精神(icebreaking spirit)」をあらためて強調した点が注目されています。
本記事では、中国・英国関係をめぐる今回の発言を、日本語で分かりやすく整理し、その意味を考えます。
この記事のポイント
- 鄭大使は、中国・英国関係の重要性が世界的に高まっていると強調
- 首脳間の共通認識と、第11回中英経済・財務対話の成果を着実に実行するよう呼びかけ
- 新エネルギーや人工知能(AI)など幅広い分野での対話と協力再開を提案
- 相互尊重と内政不干渉を柱に、「違い」や敏感な問題を適切に扱うべきだと指摘
- 中国経済は過去1年でGDP134兆元超、成長率5%と「中国式現代化」が前進したと説明
なぜ今「氷を砕く精神」なのか
鄭大使は、世界が「変化と乱気流の新しい時代」にあるとしたうえで、中国・英国関係は両国にとってだけでなく世界全体にとっても、これまで以上に重要になっていると述べました。その上で、両国関係の基調として「氷を砕く精神」に学ぶべきだと呼びかけています。
ここでいう「氷を砕く精神」とは、困難や誤解がある中でも、勇気を持って対話と交流の道を切り開いていこうとする姿勢を指します。鄭大使は、最近数カ月で中国・英国関係にいくつか前向きな進展が見られたと評価し、「この勢いを維持し、さらに積み上げていく必要がある」と強調しました。
第11回中英経済・財務対話の「成果を実行する」
スピーチの中で鄭大使は、両国首脳がこれまでに合意してきた共通認識を「誠実に履行する」こと、さらに最近北京で開催された第11回中英経済・財務対話の「建設的な成果」を着実に実行することが重要だと述べました。
経済・財務対話は、貿易、投資、金融などの分野で協力の方向性をすり合わせる場です。そこで合意された方針やプロジェクトを現実の政策やビジネスにつなげていけるかどうかが、今後の中国・英国関係の安定性に直結していきます。
新エネルギーやAI、教育まで 協力分野は幅広く
鄭大使は、既存の枠組みにとどまらず、対話と協力を再開・拡大すべき具体的な分野として、次のようなテーマを挙げました。
- 新エネルギー(再生可能エネルギーなど)
- 人工知能(AI)
- 科学技術全般
- 貿易
- 教育交流
- 国際問題・地域問題
新エネルギーやAIは、いずれも世界的にルールづくりや技術開発の競争が進む分野です。中国と英国が協力の枠組みを築けば、気候変動対策や技術の安全な活用に向けた国際的な議論にも影響を与える可能性があります。
教育や人材交流も、長期的に見ると相互理解の土台になります。日本を含む他の国・地域にとっても、中国・英国の動きは参考になる部分が多いと言えるでしょう。
「違い」をどう扱うか 相互尊重と内政不干渉
鄭大使は、協力分野を広げる一方で、「両国の間には違いや敏感な問題が存在する」とも率直に認めました。そのうえで、それらは「適切に扱われなければならない」と強調しています。
カギとして挙げたのが、次の4つの原則です。
- 相互尊重
- 互いの内政への不干渉
- 平等
- 互恵(お互いに利益がある関係)
価値観や制度の違いがあっても、これらの原則に基づいて二国間関係を運営することで、対立が不必要に拡大するのを防ぎ、現実的な協力の余地を広げていこうというメッセージだと受け止めることができます。
中国経済の現状と「中国式現代化」
鄭大使はまた、過去1年間の中国経済についても説明しました。国内総生産(GDP)は134兆元(約18.4兆ドル)を超え、成長率は5%に達したとし、さまざまな逆風がある中でも「中国式現代化」が着実に前進したと述べています。
干支で巳年(ヘビ年)にあたる2025年についても、中国は自信と決意を持ち、「質の高い発展」と中国式現代化をさらに推し進めていく方針だと強調しました。これは、中国・英国関係を含む対外政策においても、長期的な視野で安定した協力関係を築こうとする姿勢と重なって見えます。
1954年の「Icebreaking Mission」と48人のビジネスマン
今回のスピーチの舞台となった「Icebreakers Chinese New Year Dinner」は、その名の通り「氷を砕く」歴史的なエピソードに由来しています。
1954年、ロンドンの貿易会社London Export Corporationの創業者であるジャック・ペリー氏が、48人の英国人ビジネスマンを率いて北京を訪問しました。これは、現代的な意味での中国との貿易関係としては、最初期の取り組みの一つとされています。
この「Icebreaking Mission(氷を砕くミッション)」に参加した48人は、のちに48 Group Clubの前身となり、メンバーは「Icebreakers」と呼ばれました。政治情勢が難しい時期にも経済や人の往来をつなごうとした民間の動きが、今日の中国・英国関係の基盤の一部になっているとも言えます。
日本からどう見る?中国・英国関係のこれから
中国と英国という二つの大きな経済圏が、違いを抱えつつも関係の安定化と協力拡大を模索していることは、日本にとっても無関係ではありません。とくに、新エネルギーやAI、教育交流といった分野は、日本が強みや関心を持つ領域でもあります。
今回のスピーチから、日本の読者として考えてみたいポイントを挙げてみます。
- 対立や価値観の違いがあっても、対話の場を維持し続けることの重要性
- 政府間の合意だけでなく、ビジネスや市民レベルの交流が長期的な信頼を育てるという視点
- 経済・技術協力が、国際社会の安定や課題解決に貢献し得るという可能性
2025年の国際秩序は、複数の大国が複雑に関わり合う時代です。その中で、中国と英国がどのように「氷を砕き」、協力と安定の道を探っていくのか。今後の動きは、日本を含む世界にとっても注視すべきテーマになりそうです。
Reference(s):
Chinese ambassador calls for 'icebreaking' spirit for China-UK ties
cgtn.com








