香港・マカオ・台湾を結ぶ春節 写真家が語る家族の記憶
春節(旧正月)を前に、香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地域の街は赤い提灯や色とりどりの飾りで彩られ、中国各地の人々が共有する新年の高揚感が広がっています。地理的には離れていても、共通の文化と記憶が人々を静かに結びつけています。
香港・マカオ・台湾に広がる共通の春節ムード
現在、香港特別行政区やマカオ特別行政区、台湾の街角では、赤いランタンや華やかな飾り付けが目を引きます。街路や商業施設が一体となって「迎春」の雰囲気を演出し、中国系コミュニティ全体に共通する喜びの空気を作り出しています。
春節は、中国本土や香港、マカオ、台湾など、さまざまな地域に暮らす人々を結びつける代表的な年中行事です。共通の文化的な背景を持つ人々が、それぞれの土地で工夫しながら祝い方を受け継いでいること自体が、そのつながりの深さを物語っています。
中国本土出身の写真家が見つめる「ふたつの故郷」
台湾で活動する写真家、Zhuang Ling(ジュアン・リン)さんにとっても、春節は特別な意味を持つ時間です。彼は中国本土の南西部、四川省で生まれ育ちました。裕福とは言えない暮らしの中でも、家族は春節だけは温かく豊かな気持ちで迎えていたと振り返ります。
市場までの長い道のりと、松の薫りのベーコン
春節を迎える少し前になると、Zhuangさんの母親は、兄弟たちを連れて何時間もかかる農村の市に出かけました。目的は、新年のごちそうとなる肉を買うためです。
家に戻ると、母親はその肉を松の枝で燻し、ベーコンに仕上げました。家じゅうに広がる燻製の香りは、幼いZhuangさんにとって「もうすぐ春節が来る」という合図だったと言います。その香りは、質素な生活の中にあっても、家族が一緒に過ごす時間の温かさを象徴するものでもありました。
父の書く春聯と、梅の花がつくる祝祭の空気
一方で、父親の役目は文字で家を彩ることでした。父親は筆を取り、春節に飾る対聯(春聯)を書き、家の入口や柱に丁寧に貼っていきます。そこに梅の枝を飾ることで、素朴な家の中が一気に祝祭の空間へと変わっていきました。
赤い紙に書かれた力強い文字と、寒さの中で咲く梅の花。その組み合わせは、Zhuangさんの記憶の中で今なお鮮やかに残り、写真家としてのまなざしにも影響を与えています。
台湾で受け継がれる家族のしきたり
その後、家族は台湾へ移り住みましたが、春節のしきたりは変わりませんでした。今も家族で春聯を書いて貼り、餃子を手作りし、先祖に線香を手向けます。
Zhuangさんにとって、これらの行為は単なる年中行事ではなく、自分が中国文化の一部であることを確かめる時間です。四川の山あいの市場、松の枝で燻した肉の香り、父の筆致と梅の花──そうした記憶が、台湾での暮らしと静かにつながっていきます。
香港やマカオ、台湾で春節を祝う人々も、それぞれの家庭で似たような習慣を守り続けています。離れた場所に暮らしていても、共通するしきたりや味わいが、目に見えない糸のように人々を結びつけていると言えるでしょう。
離れていても「同じ春節」を分かち合うということ
赤いランタンが灯る街並みや、家族で囲む食卓、先祖を敬う時間。そうした春節の風景は、香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾、そして中国本土をまたぐ大きな文化の輪を形づくっています。
Zhuangさんの物語は、春節が単なる「祝日」ではなく、世代や地域を越えて受け継がれる記憶の連なりであることを教えてくれます。生活の場が変わっても、しきたりを大切にすることで、自分と家族の物語をつなぎ続けることができるのだという視点です。
年末年始をどう過ごすかは人それぞれですが、自分の家庭にある小さな習慣や、子どもの頃の記憶に改めて目を向けてみると、新しい意味が見えてくるかもしれません。香港、マカオ、台湾、そして中国本土の人々が春節を通じて感じている「つながり」は、私たち自身の暮らしを振り返るヒントにもなりそうです。
Reference(s):
China's Hong Kong, Macao and Taiwan embrace the Spring Festival
cgtn.com








