国連安保理の議長国に中国 多国間主義とガザ停戦を優先課題に
国連安全保障理事会(安保理)の議長国を務める2月、中国は「多国間主義の実践」と「グローバル・ガバナンス(世界の統治構造)の改革・改善」を前面に掲げました。世界の紛争が冷戦終結後で最多水準に達する中、安保理で何が変わろうとしているのかを整理します。
中国が2月の国連安保理議長国に
中国は2025年2月、国連安保理の持ち回り議長国を担当しました。中国の国連常駐代表である傅聡(フー・ツォン)大使は、2月の議長国としての優先課題として次の2点を挙げました。
- 加盟国の「多国間主義」へのコミットメント(約束)の再確認
- グローバル・ガバナンスの改革と改善の促進
安保理の議長国は、安保理を構成する15の理事国の間で、英語表記のアルファベット順に毎月交代します。中国が議長国を務めるのは、2023年11月以来です。
多国間主義と「グローバル・ガバナンス改革」を前面に
傅大使は、「世界は非常に不安定な時期に入り、世界全体の紛争件数は冷戦後で最高水準に達している」と指摘しました。そのうえで、とくにグローバル・サウス(新興国や途上国を多く含む国々)の間で、国際秩序のルールづくりを見直し、グローバル・ガバナンスを改革・改善すべきだという声が高まっていると述べています。
さらに傅大使は、現在の安保理について「連帯と協力が分断と対立に置き換えられており、重大な安全保障危機を前にしてもしばしば何もできない。この状況は続けられない」とも語りました。安保理の機能不全への危機感を前面に出した発言と言えます。
中国の主導で、2月18日には「多国間主義の実践、グローバル・ガバナンスの改革と改善」をテーマにした安保理のハイレベル公開討論が予定されていました。
今年は国連創設80周年の節目にあたります。傅大使によれば、この公開討論の狙いは次の通りです。
- 国連の「原点」に立ち返り、創設時の理念や初心を各国に思い起こしてもらうこと
- 多国間主義と、国連および安保理の重要な役割へのコミットメントを再確認すること
- グローバル・ガバナンスの改革と改善に向けた方向性を探ること
焦点は中東情勢 ガザ停戦とUNRWA支援
グローバルな制度改革と並んで、中国は地域紛争への対応も優先課題に位置づけています。傅大使は、安保理(15理事国)が今後も中東情勢に焦点を当て、持続可能な政治的解決策を模索し続けると説明しました。
とくにパレスチナ・ガザ地区について、傅大使は次の点を強調しています。
- ガザでの停戦合意に安保理が細心の注意を払い、合意が「完全かつ効果的」に履行されるよう、タイムリーな行動を取る必要があること
- 人道支援のルートを「常に開かれ、妨げられることのない」状態に保つこと
- パレスチナ難民を支援する国連機関UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)が直面する課題を、安保理としてしっかりフォローするよう、中国が働きかけていくこと
アフリカの安全保障と人道危機にも注目
傅大使は、アフリカの一部地域で政治・安全保障の状況が「極めて不安定」だと指摘しました。そこでは、平和維持(PKO)や紛争後の平和構築、人道支援のいずれについても、大きな課題が山積していると述べています。
こうした現状を踏まえ、傅大使は次のような方向性を示しました。
- 安保理と国際社会全体が、アフリカに対する関心と支援を維持し、さらに高めていくべきだということ
- 議長国としての中国は、他の理事国と協力しつつ、対話と協議を促進し、アフリカの問題に対する政治的解決策を探ること
なぜ中国の安保理議長国が重要視されるのか
今回の中国のメッセージは、単に一つの紛争や地域にとどまらず、「多国間主義の立て直し」と「グローバル・ガバナンス改革」という、大きなテーマに重心が置かれています。
その背景には、次のような要素が重なっています。
- 冷戦後で最多水準とされる紛争の拡大
- 安保理内部の対立の激化と、それによる意思決定の停滞
- グローバル・サウスを中心に、「今の国際秩序は現代の現実を十分に反映していない」という問題意識の高まり
- 国連創設80年という節目の年にあたること
傅大使が「この状況は続けられない」と語ったように、安保理のあり方そのものを問い直すメッセージでもあります。同時に、中国が議長国として議題設定力を発揮し、自らの外交的スタンスを国際社会に示す機会になっているとも言えます。
私たちが注目したいポイント
今回の動きは、日本の読者を含む世界の人々にとっても、次のような問いを投げかけています。
- 安保理は、ガザやアフリカなどの危機に対して、どこまで具体的な行動を取れるのか
- 多国間主義の「再確認」は、実際の紛争解決や人道支援の現場でどのような変化として表れるのか
- グローバル・ガバナンスの改革議論は、どの国・地域の声をどのように反映していくのか
2025年という節目の年に、中国が掲げたこれらの議題が、国連や安保理の実際の運営にどこまで影響を与えていくのか。今後の議論と行動の積み重ねを、引き続き丁寧に追っていく必要があります。
Reference(s):
China assumes UN Security Council rotating presidency for February
cgtn.com








