中国の新型ロケットエンジン「Liqing-2」引き渡し完了 商業宇宙に新戦力
中国の商業宇宙企業CAS Spaceが開発した液体酸素ケロシンロケットエンジン「Liqing-2」の引き渡しが完了しました。110トン級の新エンジンは、中国の商業ロケット「Lijian」シリーズの中核となることが期待されており、アジア全体の商業宇宙ビジネスにも影響を与えそうです。
Liqing-2とはどんなエンジンか
今回引き渡しが完了した「Liqing-2」は、中国で開発された液体酸素ケロシンエンジンです。CAS Spaceによると、今回納入されたのは推力110トン級のピンエンジンと呼ばれるタイプで、同社のロケット「Lijian」シリーズ第1段に搭載される設計です。
公表されている主な特徴は次のとおりです。
- 推進剤:液体酸素(酸化剤)+ケロシン(燃料)
- 最大推力:地上で約110トン
- 推力調整範囲:50〜100%の間で可変
- 用途:CAS Spaceの「Lijian」シリーズロケット第1段エンジン
- 技術的特徴:ガス発生器と推力室にピンインジェクション(ピン噴射)方式を採用
ピンインジェクションは、燃料や酸化剤を細いピン状の構造を通して噴射し、混合と燃焼を効率よく行う方式です。燃焼の安定性や制御性の向上が狙いとされ、ロケットエンジンの性能と信頼性を高める鍵となります。
また、推力を50〜100%の範囲で調整できる点も特徴です。推力可変の幅が大きいエンジンは、打ち上げ中の加速度制御や高度な軌道投入、将来の再使用型ロケット技術などに柔軟に対応しやすいと考えられます。
約2年で引き渡しへ 開発から量産までのタイムライン
「Liqing-2」エンジンは、比較的短期間で開発から引き渡しまで進んだプロジェクトです。CAS Spaceが明らかにしているスケジュールを時系列で整理すると、次のようになります。
- 2023年第2四半期:「Liqing-2」エンジン開発プロジェクトが正式に承認
- 2024年第1四半期:エンジンの生産がスタート
- 2025年初め:エンジンの全機液流試験、組立、引き渡し審査を完了
- 木曜日:CAS Spaceがエンジンの引き渡し完了を公表
開発承認からおよそ2年というペースで、本格的な試験と審査を経て引き渡しに至ったことになります。商業宇宙の分野では、技術的な安全性とスピードの両立が重要なテーマとなっており、この開発スケジュールはその一つの事例と言えます。
「Lijian」シリーズと中国の商業宇宙
CAS Spaceの「Lijian-1」シリーズは、中国の商業宇宙産業で主要な役割を担うロケットの一つとされています。これまでに5回の飛行ミッションで合計57基の衛星を打ち上げており、既に複数回の実績を持つロケットです。
今回の「Liqing-2」は、その「Lijian」シリーズの第1段エンジンとして位置づけられており、ロケットの基礎性能を左右する重要なコンポーネントです。大推力かつ推力可変の新エンジンは、より多くの衛星や荷物を打ち上げるための土台となりうる存在です。
CAS Space自体は、中国科学院力学研究所が設立した商業宇宙企業です。中国科学院の研究基盤と、民間企業としての機動力を組み合わせることで、商業ロケットや宇宙輸送サービスの拡大を図っているとみられます。
日本・アジアの宇宙ビジネスへの意味
中国の商業ロケット向けに新型エンジンが登場したことは、日本を含むアジアの宇宙ビジネスにも少なからず影響を与えます。特に、衛星打ち上げを必要とする企業や研究機関にとっては、次のような点が注目されます。
- 大推力の新エンジンにより、打ち上げ能力やミッションの幅が広がる可能性
- 商業ロケット間の競争が進むことで、打ち上げコストやサービス内容に変化が生じる余地
- アジア域内での打ち上げ機会が増えれば、小型衛星や新規事業者にとって選択肢が広がる可能性
日本の企業や大学なども、小型衛星や実証ミッションを通じて宇宙利用を進めています。中国を含む各国・地域の商業ロケットが台頭することで、今後、打ち上げ手段の選び方や国際協力の形も変わっていくかもしれません。
この記事から考えたいポイント
今回のニュースは、単に新しいロケットエンジンが完成したという技術トピックにとどまりません。商業宇宙の構図の変化という視点から、次のような問いを投げかけています。
- 大推力で推力可変のエンジンを民間主体が開発・納入したことは、宇宙輸送ビジネスにどんな競争をもたらすのか。
- 2023年のプロジェクト承認から2025年初めの試験完了までという開発スピードは、今後の宇宙開発の「標準」となっていくのか。
- 日本やアジアの衛星事業者は、多様化する打ち上げサービスとどう付き合っていくのか。
まとめ:次に注目すべきは「実際の飛行」
液体酸素ケロシンエンジン「Liqing-2」は、110トン級の推力、50〜100%の推力可変、ピンインジェクション方式という特徴を持ち、CAS Spaceの「Lijian」シリーズ第1段エンジンとして引き渡し段階に入りました。
今後の焦点は、この新エンジンがどのミッションで実際に使われ、どのような打ち上げ実績を積み上げていくかという点です。商業宇宙の競争が激しくなる中で、ロケットエンジンの一つ一つの進化が、宇宙アクセスの姿を静かに変えつつあります。
Reference(s):
Chinese developer completes delivery of Liqing-2 rocket engine
cgtn.com








