中国がDeepSeek規制を批判 技術の政治化とデータ保護をめぐる攻防
世界各地で中国発の人工知能(AI)サービス「DeepSeek」へのアクセス制限が広がる中、中国外交部は「技術の政治化」を強く批判し、データ保護と公正な競争の重要性を改めて訴えました。
何が起きているのか
中国の外交部によると、一部の国が中国のAIサービス「DeepSeek」へのアクセスを制限していると報じられています。外交部の報道官・郭家坤(Guo Jiakun)氏は、今週の定例記者会見でこの問題について質問を受けました。
DeepSeekは、中国の人工知能(AI)サービスで、最近米国のiPhone向けアプリストアでランキング1位を獲得しました。その最先端の性能と低い学習コストが注目され、米国のテック株の下落を招く一因になったとも伝えられています。
中国外交部「違法なデータ収集は奨励しない」
郭報道官は会見で、中国はこれまでも、そしてこれからも、企業や個人が違法な手段でユーザーデータを収集・保存することを決して奨励しないと強調しました。中国政府はデータプライバシーと安全の保護を重視し、厳格な法的枠組みの下で運用していると説明しています。
同時に郭報道官は、「国家安全保障」の概念を過度に拡大し、貿易・経済・科学技術の問題を政治化する動きに懸念を示しました。そのうえで、中国は国際市場における中国企業の合法的な権益を守り続ける姿勢を改めて明らかにしました。
DeepSeekとはどんなAIか
DeepSeekは、大規模AIモデルの開発においてオープンなアプローチを採用していることでも知られています。最新の製品には、言語モデル「V3」、推論に特化した「R1」、画像などを扱うビジョンモデル「Janus Pro」などがあり、いずれも無償でダウンロード可能です。
同社はこれらのモデルをどのように学習させたかについて研究論文として公開しており、他の開発者が自分たちのデータセットを使って同様の手法を再現できるようにしています。
さらに、DeepSeekのモデルは端末にダウンロードしてローカル環境で動かすことができます。この場合、インターネット接続は不要で、利用者の個人データが第三者に送信されることもありません。これは、OpenAIやGoogleなどが提供するクローズドなモデルにはない特徴だとされています。
米国の著名ベンチャーキャピタリストであるマーク・アンドリーセン氏は、DeepSeekの推論モデル「DeepSeek-R1」を「世界への深い贈り物(a profound gift to the world)」と評したこともあり、国際的な関心の高まりがうかがえます。
また、DeepSeekはオンラインのチャットサービスも無償で提供し、世界中の利用者に対して、インターネット上のミーム(ネット文化のネタ)を理解・生成したり、論理的に問題を解いたり、新しいアイデアを生み出したりするためのツールを提供しています。
競合他社も「よりオープン」な戦略へ
DeepSeekの成功は、他のAI開発企業にも動きを促しています。
DeepSeekアプリが世界的に注目を集めた数日後、米国のOpenAIは、自社の対話型AIサービス「ChatGPT」における検索機能について、10月に導入したこの機能を、ユーザー登録なしでも無料で利用できるようにすると発表しました。
中国の大手インターネット企業アリババも、オープンモデル「Qwen」シリーズの最新モデル「Qwen2.5-Max」を公表しました。このモデルは、DeepSeek-V3と類似した方法で学習させたとされており、誰でも試せる無償のウェブサービスもあわせて提供されています。
なぜこの動きが重要なのか
今回の一連の動きは、「国際ニュース」「テクノロジー」「経済」が交差する象徴的な事例だと言えます。ポイントは大きく三つあります。
1. データ保護とオープンAIの両立
DeepSeekのように、モデルそのものを公開し、ローカル環境だけで動作させられる仕組みは、「高機能なAIを使いたいが、データは外に出したくない」というニーズに応える一つの形です。中国政府もデータプライバシーと安全の保護を重視していると説明しており、技術設計と法的枠組みの両面からのアプローチが進んでいることがうかがえます。
2. 国家安全保障と技術の政治化
一部の国がDeepSeekへのアクセスを制限した背景には、自国の安全保障や産業保護への懸念があると見られますが、中国外交部は、国家安全保障の概念を過度に拡大し、貿易・経済・科学技術の議論を政治問題化することに警鐘を鳴らしています。AIのような基盤技術をめぐり、どこまでを安全保障の問題とみなし、どこからを公正な市場競争とみなすのかという線引きが、国際社会全体の論点になっています。
3. 生成AI競争の新しいフェーズ
DeepSeekの「高性能かつ低コスト」という特徴は、既存のテック企業のビジネスモデルにも影響を与えています。米国のテック株下落の一因と報じられたことは、投資家がAIモデルのコスト構造やオープン性に敏感になっていることを示しています。OpenAIやアリババが相次いで「無料」「オープン」を打ち出したことからも、生成AI競争が新しい段階に入ったことが見て取れます。
これから注目したいポイント
今後、読者の皆さんが国際ニュースやテック関連の動きを追ううえで、チェックしておきたいポイントを整理します。
- 各国の規制の方向性:AIやデジタルサービスに対する規制が、安全保障とオープンなイノベーションのどのようなバランスを目指すのか。
- 企業のオープン戦略:DeepSeekのようなオープンモデルと無償提供の組み合わせが、どこまで持続的なビジネスとして成り立つのか。
- 利用者としてのリテラシー:私たち一人ひとりが、利用するAIサービスがどのようにデータを扱い、どのような仕組みで動いているのかに関心を持つこと。
DeepSeekをめぐる今回の動きは、中国発のAI技術が世界の市場と議論の中心に入りつつあることを示しています。技術の進歩と国際政治が絡み合うこのテーマは、これからもしばらく、ニュースの重要なトピックであり続けそうです。
Reference(s):
China slams politicization of tech as nations restrict DeepSeek
cgtn.com








