中国本土の通信大手3社、オープンソースAI「DeepSeek」を本格導入
中国本土の通信大手3社が、オープンソースの生成AIモデル「DeepSeek-R1」を自社サービスに本格統合しました。通信インフラの中核にAIを組み込む動きは、2025年以降のデジタル社会を考えるうえで見逃せない変化です。
DeepSeek-R1を通信インフラにフル統合
中国移動(China Mobile)、中国電信(China Telecom)、中国聯通(China Unicom)の3社は、MIIT(工業・情報化部)によると、オープンソースAIモデル「DeepSeek-R1」を全面的に取り込みました。
3社は、このDeepSeek-R1をさまざまな業務シナリオやプロダクトに適用し、利用企業のニーズに応じた計算資源(コンピューティングパワー)の提供や、開発・運用を支える環境づくりを進めているとされています。
これにより、通信会社が単に回線やデータ通信を提供するだけでなく、AIそのものを「組み込み機能」として提供し、企業や自治体が自前で大規模モデルを構築しなくても高度なAI機能を使える土台が整いつつあります。
春節2025で見えたAI×通信の実験場
MIITによると、AIはすでに通信サービスの革新を牽引しています。2025年の春節期間には、通信各社がAIに加え、5G、クラウドプラットフォーム、ビッグデータを組み合わせることで、サービスの利用シーンを広げ、AIを活用した新しいサービスを拡充しました。
具体的には、次のような取り組みが行われました。
- スマート車両のナビゲーション向けに、AIと5Gを活用した数十億回規模の高精度な位置情報サービスを提供し、帰省や旅行の移動を支援
- AIを使った音声検査サービスを導入し、金融機関による詐欺検知を強化
- クラウドコンピューティングを活用し、遠隔勤務(リモートワーク)を効率的に行える環境を整備
春節という大量の通信需要と移動が発生するタイミングを実験場として、AIと通信インフラを組み合わせたサービスが現実の社会課題にどう応用できるかを試した形です。
政府サービスと「見えないインフラ」でのAI活用
AIとビッグデータは、公共サービスや行政分野でも活用されています。中国聯通は、春節期間中の移動や観光地の混雑状況をリアルタイムでモニタリングし、重要インフラの状況を動的に分析しました。
さらに、休暇中の消費動向や、連休明けの経済活動の回復の様子を分析することで、政府サービスや経済運営の判断材料となるデータを提供したとされています。
なぜこの動きが重要なのか
今回のDeepSeek-R1の本格導入は、次の3つの意味で注目できます。
- オープンソースAIの実用フェーズ
オープンソースの大規模AIモデルが、研究用途にとどまらず、通信インフラという社会の基盤システムに組み込まれ始めています。これは、AIの「共通インフラ化」が進んでいるサインといえます。 - 通信会社の役割の変化
回線やデータを売るだけの事業から、AIやクラウド、ビッグデータを含む総合的なデジタル基盤サービスを提供する方向へのシフトが鮮明になっています。 - 実データで鍛えられるAI
春節の移動や消費など、実社会で発生する膨大なデータを通じてAIモデルが改善されれば、今後の交通、金融、防犯、行政サービスなどの高度化にもつながる可能性があります。
私たちの生活へのインパクト
位置情報サービス、詐欺検知、リモートワーク支援、混雑状況の分析といったユースケースは、日本を含む他の国・地域でも共通する課題に直結しています。通信インフラとAIが一体化していく流れは、アジア全体で無視できないテーマになりつつあります。
今後、どの範囲までAIとデータを公共目的に活用し、どこから先をプライバシー保護や透明性の観点で慎重に扱うべきかは、利用者一人ひとりが関わる問いになっていきそうです。
通信インフラに深く組み込まれるAIを前提にした社会で、自分はどんなサービスを歓迎し、どのようなルールづくりを求めたいか――そのイメージを持っておくことが、ニュースを「自分ごと」として読む第一歩かもしれません。
Reference(s):
China's major telecom operators fully integrate DeepSeek AI model
cgtn.com








