雪をアートに変える人たち 第9回アジア冬季競技大会スロープスタイル裏側 video poster
第9回アジア冬季競技大会で注目を集めるスロープスタイル競技。その華やかなジャンプやトリックの裏側で、雪を削り、盛り、磨き上げる「シェイピングチーム」がいます。彼らは雪を素材に、アスリートの創造性が最大限に発揮されるコースを作り上げています。
「トリックには物語がある」スロープスタイルという舞台
スロープスタイルは、レール(手すり状のセクション)やキッカー(ジャンプ台)など、複数のセクションをつなぎながら技を披露するフリースタイルスキー・スノーボードの種目です。一つひとつのトリックには物語があり、その流れ全体で自分らしい「ライン」を表現するのが特徴です。
観客の目には華麗な技だけが飛び込んできますが、その物語が生まれる舞台となるのがコースです。そして、どのコースにも、その物語を支える「彫刻家」のような存在がいます。
コースごとに「彫刻家」がいる シェイピングチームの役割
第9回アジア冬季競技大会のスロープスタイルコースを担当するのは、経験豊かなエリートクルーです。彼らの仕事は、雪をただ均すことではなく、「どうすれば選手が新しい発想で飛べるか」「どんなラインが多様なスタイルを引き出せるか」を考えながら、雪をデザインしていくことです。
エリートクルーが雪をアートに変える
シェイピングチームは、まさに「雪をアートに変える」存在です。重機を使って大まかな形を作り、細部はスコップや整備用の道具を使って、角度やカーブを丁寧に仕上げていきます。少しの角度の違いが、選手にとっての飛び出し方や着地の感覚を大きく変えてしまうため、ミリ単位の感覚が求められます。
コースが完成したように見えても、仕事は終わりません。気温や雪質は時間とともに変化するため、シェイピングチームは大会期間を通してこまめに微調整を続けます。観客には見えない「裏方」の動きが、安定したパフォーマンスを支えています。
一日の流れで見るシェイピングの仕事
- 雪面の状態を確認し、その日の気温や硬さを把握する
- マシンと手作業を組み合わせて、ジャンプやセクションの形を整える
- テストライド(試走)の感触をもとに、角度や高さを微調整する
- 競技中も着地の荒れや削れをチェックし、合間に補修を行う
この地道な繰り返しによって、選手は安心して限界に挑戦できる環境を手に入れます。
「シャークフィン」から巨大ジャンプまで こだわりのセクション
今大会のスロープスタイルコースには、「シャークフィン」と呼ばれる特徴的なセクションから、ダイナミックな空中戦が繰り広げられる巨大ジャンプまで、多彩な要素が配置されています。まさに「アスリートの創造性が飛び立つ遊び場」です。
シャークフィンとは何か
シャークフィンは、その名の通りサメのヒレのように斜めに立ち上がった雪の壁のようなセクションです。斜め方向に飛び出せる形になっているため、選手は体をひねったり、通常とは違うラインで飛び出したりと、自由度の高いトリックを組み立てることができます。
シェイピングチームにとって、シャークフィンは創造性を試されるパーツでもあります。角度が急すぎればリスクが高まり、緩すぎればトリックの幅が狭まってしまうからです。その中間の「ちょうど良いライン」を探る作業が続きます。
巨大ジャンプは見せ場であり、試練の場でもある
コースの中でもひときわ目を引くのが、巨大なジャンプセクションです。観客にとっては派手な見せ場であり、選手にとっては高難度トリックに挑む試練の場でもあります。
ジャンプの高さや飛距離だけでなく、踏み切りの形や着地斜面のカーブも、すべてが計算されています。選手が安定して着地できるように、シェイピングチームはテストの結果や選手の声を参考にしながら、少しずつ形を整えていきます。
安全性とチャレンジのバランスをどう取るか
スロープスタイルの魅力は、自由でクリエイティブな表現にあります。しかし同時に、高いリスクを伴う競技でもあります。そこで鍵となるのが、「安全」と「挑戦」のバランスです。
シェイピングチームは、選手が新しい技に挑戦できるだけの余白を残しながらも、過度な負担がかからないようにコースを設計します。スピードが出すぎないライン、転倒しても致命的なダメージになりにくい雪面の硬さなど、目に見えない配慮が多く詰まっています。
選手、コーチ、大会関係者とのコミュニケーションも重要です。実際に飛んだ選手から「もう少し高さがほしい」「着地が硬く感じる」などの感想を聞き、それを反映させていくプロセスは、共同作業に近いものがあります。
コースは「作品」 選手の物語を支える存在
「Every trick has a story(すべてのトリックには物語がある)」と言われるように、スロープスタイルは技の難易度だけでなく、流れや独自性も評価される競技です。その物語の舞台となるコース自体も、一つの「作品」として見ることができます。
シェイピングチームは、完成したコースに自分たちの名前が大きく刻まれることはありません。それでも、選手が新しい技を成功させた瞬間や、観客が歓声を上げる場面の裏に、自分たちの仕事があることを知っています。
第9回アジア冬季競技大会のスロープスタイルコースは、アスリートの創造性が空へと解き放たれるために作られた、雪のキャンバスです。次に華麗なトリック動画をSNSで見るとき、その背景にいる「雪のアーティスト」たちの存在にも、少し思いを馳せてみると、競技の見え方が変わってくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








