研究者がAIを「共同研究者」に 国際調査とDeepSeek-R1が示す近未来
人工知能(AI)が、近い将来「研究室の標準装備」になるかもしれません。今月、国際出版社ワイリーが発表した調査と、今年1月23日付の英科学誌「Nature」に掲載された報告からは、世界の研究者がAIを積極的に受け入れつつある現状が浮かび上がります。
4,946人調査が映す、AI時代の研究スタイル
ワイリーは今月、世界70カ国以上の研究者4,946人を対象に、ChatGPTやDeepSeekなどの生成AIツールをどのように使っているか、また今後どのような用途を想定しているかを尋ねる国際調査を実施しました。
回答者の多くは、AIが今後、科学研究と学術出版の中核に組み込まれていくと見ています。調査では、研究関連で挙げられた多数のタスクのうち20項目以上で、半数超の研究者が「人間よりAIの方が優れている」と評価しました。その代表例が次のような作業です。
- 膨大な先行研究・文献のレビュー
- 研究結果の要約や整理
- 文章の誤り検出やスタイルの整え直し
- 盗用(コピペ)のチェック
- 引用文献リストの整理
さらに、論文執筆や研究費申請、査読支援などを含む43の研究関連タスクのうち、34項目で「今後2年以内にAI利用が主流になる」と予測する研究者が半数を超えました。AIはもはや「試しに使う道具」から、「前提として組み込まれる研究インフラ」へと移行しつつあるようです。
すでに45%がAIを利用 主な用途は翻訳・校正・原稿編集
回答者全体のうち、約27%は研究キャリアの初期段階にある若手研究者でした。全体の45%(1,043人)がすでにAIを研究に利用していると答え、その主な用途としては次のようなものが挙がりました。
- 英語など他言語への翻訳
- 論文や原稿の校正・推敲
- 原稿構成や表現の改善提案
AI利用者のうち、81%は個人的または職業的な目的でOpenAIのChatGPTを使った経験がある一方で、GoogleのGeminiやMicrosoftのCopilotといった他の生成AIツールに「なじみがある」と答えた人は3分の1にとどまりました。現時点では、生成AIといえばChatGPTが事実上の標準ツールになっている様子がうかがえます。
分野・地域で異なるAI活用度
調査はまた、分野や地域ごとにAI活用の度合いに大きな差があることも示しました。とくにコンピューターサイエンス系の研究者は、他分野と比べてAIツールを自らの研究プロセスに組み込みやすい傾向が強いとされています。一方で、他の分野や地域では、ルール作りやスキル習得の段階にあり、今後の普及に向けた環境整備が課題と言えそうです。
Natureが注目する中国本土発のモデル「DeepSeek-R1」
今年1月23日に「Nature」に掲載された報告は、中国本土で開発された大規模言語モデル「DeepSeek-R1」に焦点を当てています。この報告によると、DeepSeek-R1は、OpenAIの推論モデル「o1」のような「推論に強いモデル」に対する、手頃でオープンなライバルとして科学者たちを沸かせているといいます。
初期テストでは、化学、数学、プログラミング(コーディング)といった一部の課題において、DeepSeek-R1の性能がOpenAIのo1と同程度であることが示されました。報告は、こうしたDeepSeek-R1型のモデルが、初期の言語モデルを超えて、より本格的な科学的問題の解決に取り組める可能性を持っていると指摘しています。
研究現場にとっての意味
高性能で、かつ比較的利用しやすい推論型AIモデルが登場することで、資金や環境に制約のある研究機関でも、先端的な計算資源にアクセスしやすくなる可能性があります。論文の草案づくりだけでなく、仮説の検討や計算実験の設計、コードの検証など、研究の中核部分へのAI活用が加速するかもしれません。
「2年後」を見据えて問われるリテラシー
ワイリーの調査が示すように、多くの研究者は今後2年以内に、AIが研究プロセスの大半で「当たり前の存在」になると見込んでいます。Natureが紹介したDeepSeek-R1のようなモデルの登場は、この流れをさらに後押しするでしょう。
一方で、AIをどこまで頼るのか、どのように活用を開示し、責任の所在を明確にするのかといった研究倫理や運用ルールの整備も欠かせません。読者である私たちも、今後ニュースで紹介される研究成果の裏側に、どのようなAIツールが関わっているのかを意識しながら読み解くリテラシーが求められていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com







