中国杭州がAIとイノベーション強化策 中小企業に計算資源バウチャーも
中国のテック都市・杭州が新イノベーション政策 AIと中小企業支援を強化
電子商取引大手アリババや、台頭するAI企業DeepSeekが拠点を置く中国・杭州市が、ハイレベルなイノベーション拠点としての地位を一段と高めるため、新たな政策パッケージを打ち出しました。AIやデジタル産業の競争力を高めると同時に、中小企業のデジタル化を後押しする内容です。
インターネットとテック産業の重要ハブ・杭州
浙江省の省都である杭州は、インターネット産業とテック産業の重要なハブとして発展してきました。電子商取引、AI、デジタルトランスフォーメーションの分野で存在感を高め、都市全体の産業構造の高度化を牽引しています。
新政策の狙いは「高レベルのイノベーション拠点づくり」
杭州市科学技術局の婁秀華局長は記者会見で、新たな一連の措置の狙いとして、次の三つのポイントを挙げました。
- ハイレベルなイノベーションプラットフォームの強化
- 技術移転とその実用化の促進
- 企業を技術革新の主役として一層位置付けること
これらを通じて、研究開発から実用化、産業化までの流れを加速させ、都市全体のイノベーション能力を底上げするねらいがあります。
大学・企業・産業チェーンをつなぐパートナーシップ計画
政策の中核には、イノベーションプラットフォーム、大学、企業、産業チェーンの連携を後押しするパートナーシップ計画が含まれています。研究機関が持つ技術シーズと、企業や産業現場のニーズを結び付けることで、技術の社会実装を加速させる構想です。
従来は分断されがちだった研究・産業・行政の各プレーヤーを、都市レベルの政策でつなぐことで、イノベーションのエコシステムを厚くする狙いが見て取れます。
計算資源インフラを強化 コンピューティングパワー・バウチャーとは
杭州市は、大規模AIモデルの開発などを支える計算資源インフラの整備も加速させます。大規模モデルの開発基盤や、計算能力を提供する施設など、基盤的なプロジェクトの建設を前倒しで進める方針です。
あわせて注目されるのが「コンピューティングパワー・バウチャー」と呼ばれる仕組みです。これは、中小企業がより低コストで計算資源を利用できるようにするための政府補助ツールで、具体的には次のような効果が期待されています。
- クラウドや高性能計算環境の利用料金を一部補助することで、AI導入の初期負担を軽減
- 資本力の小さい中小企業でも、画像認識や自然言語処理など高度なAI技術を試行しやすくなる
- デジタル化とAI活用の裾野を広げ、産業全体の底上げにつなげる
計算資源がボトルネックになりがちなAI分野において、バウチャーによる支援は中小企業の参入障壁を下げる役割を果たしそうです。
「AIプラス」イニシアチブで産業横断の活用を促進
杭州市はさらに、「AIプラス」イニシアチブを打ち出し、AIと各産業の融合を進めます。製造業、サービス業、金融、公共サービスなど、幅広い分野でAI技術を活用し、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出を目指す構想です。
AIを一部の先端企業だけでなく、都市全体の産業に浸透させていくことで、地域経済全体の生産性向上を図る狙いがあるとみられます。
大学・研究機関の技術を「先に使える」新ライセンスモデル
技術移転の仕組みも改革されます。杭州市は、大学や研究機関が持つ技術成果について、中小企業が「先に使って後で支払う」モデルでライセンスを受けられる制度を導入する方針です。
このモデルでは、企業は初期費用を抑えながら大学などの技術を実際の事業に試験導入でき、成果が確認できた段階で対価を支払う形が想定されています。これにより、次のような効果が期待されます。
- 中小企業が新技術にアクセスする際のリスクとコストを低減
- 大学・研究機関にとっても、技術の実用化と収益化の機会が拡大
- 研究成果が「棚に眠る」ことを防ぎ、社会実装のスピードを高める
杭州モデルが示す都市レベルのイノベーション戦略
今回の一連の措置は、都市レベルでイノベーション政策を設計する際の一つのモデルとも受け止められます。杭州市は、計算資源インフラ整備、AI活用の産業横断的な推進、中小企業への具体的支援、大学との連携強化を組み合わせることで、イノベーションエコシステムの全体最適を狙っています。
日本を含む各国の都市にとっても、中小企業が高度なデジタル技術にアクセスしやすくする仕組みづくりや、大学の技術を社会に循環させる制度設計など、考えるべき示唆を含んだ動きと言えそうです。
今後、杭州の取り組みがどのような成果を上げるのか、また他の都市にどのような影響を与えるのかが注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








