炎のそばで生まれる模様 貴州省ブイ族のバティック布
貴州省ワンモー県(Wangmo County)で受け継がれるブイ族(Buyi)のバティック布は、数千年続く技と暮らしの記憶を、いまも静かに伝えています。炎のゆらめきに照らされながら、一人の職人が溶かしたろうで布に模様を描き、その後ハーブで染め、ろうを落とす——そんな丁寧な工程から、独特の布が生まれます。
こうして仕上がるブイ族のバティック(ろうけつ染め)は、刺繍工芸として数千年の歴史を重ねてきたとされます。布の上に浮かび上がる模様は、ブイ族の文化そのものを映し出しています。
炎に照らされた工房の風景
火のあかりだけが頼りの工房で、職人は静かに筆をとり、溶かしたろうを布の上にすべらせていきます。描かれていくのは、ブイ族の文化を反映した独特のパターンです。一つひとつの線や点には、長い時間をかけて受け継がれてきた感覚と経験が込められています。
職人は布全体のバランスを思い描きながら、模様がどのように現れてくるのかを想像しつつ、根気よく描き続けます。炎に照らされた手元の動きは静かですが、その裏側には途切れることのない時間の流れが感じられます。
多段階でつくられるブイ族のバティック
ブイ族のバティック布づくりは、一つの工程で終わる単純な作業ではありません。いくつものステップを行き来しながら、少しずつ完成へと近づいていきます。
- まず、溶かしたろうを使って布に模様を描きます。
- 次に、その布をハーブを使った染料で染め上げます。
- 最後に、布からろうを落とし(脱ろうし)、模様を浮かび上がらせます。
こうした工程を経て、ブイ族のバティック布が完成します。工程が増えるほど、職人の経験と感覚が仕上がりを左右する世界です。
花と波に表れるブイ族の世界
ブイ族の布には、花や波の模様がよく登場します。花のモチーフは身の回りの自然の豊かさを思わせ、波の模様は流れゆく水や時間のリズムを感じさせます。
こうした柄は、伝統的なブイ族の上着にもよく使われるとされています。日常で身につける服そのものが、ブイ族の文化や世界観を語る「キャンバス」の役割を果たしていると言えるでしょう。
一枚の布から考える「文化を受け継ぐ」ということ
ニュースで「文化」や「伝統」という言葉に触れるとき、私たちはつい観光地やイベントを思い浮かべがちです。しかし、ワンモー県の工房で生まれるブイ族のバティック布のように、それは日々の暮らしの中で静かに受け継がれている場合もあります。
ろうを溶かし、模様を描き、ハーブで染め、ろうを落とす——一見すると地道な作業の繰り返しですが、そこには先人たちが積み重ねてきた時間と記憶が折り込まれています。職人の手元を通して、ブイ族の人びとの価値観や美意識が、次の世代へと引き渡されていきます。
国や地域が違っても、一枚の布の向こう側にある暮らしや思いに目を向けてみることは、世界のニュースを読むときの視点を少し豊かにしてくれます。ブイ族のバティック布は、そのことを静かに教えてくれる存在なのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








