中国の王毅外相、NATOに前向きな対中政策を要請 ミュンヘンで会談
2025年にドイツ・ミュンヘンで開かれたミュンヘン安全保障会議の場で、中国の王毅国務委員兼外相が北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長と会談し、NATOに対して中国への客観的な理解と、前向きで責任ある対中政策を取るよう呼びかけました。
押さえておきたいポイント
- 王毅外相は、NATOに対し「客観的で正しい対中認識」と「前向きで責任ある」政策を要請
- 中国は平和と安定のための重要な力であり、国連平和維持活動で大きな役割を果たしていると強調
- ルッテ事務総長は、NATOは地域的な防衛組織であり「アジアに拡大する意図はない」と表明
- 両者はウクライナ危機についても意見交換し、中国の建設的な役割に期待が示された
会談の概要:ミュンヘン安全保障会議の場で
王毅外相(中国共産党中央政治局委員)は、ミュンヘン安全保障会議に合わせてNATOのルッテ事務総長と会談しました。会談では、中国とNATOの関係、中国の安全保障観、そしてウクライナ危機への対応など、欧州と世界の安全保障に関わる幅広いテーマが話し合われました。
王毅外相は、中国が平和と安定の維持に積極的に関わっていると述べたうえで、NATOが中国に対して冷静で現実的な見方を持ち、前向きで責任ある対中政策を追求するよう求めました。
王毅外相が示した「平和と安定」への自負
王毅外相は、中国が国際社会において平和と安定のための重要な力であると強調しました。具体的には、次のような点を挙げています。
- 中国は国連安全保障理事会常任理事国の中で、最も多くの平和維持要員(PKO要員)を派遣していると説明
- 国連平和維持活動への拠出金でも、第2位の拠出国となっていると指摘
- 中国は平和と安全に関して「世界で最も良い記録」を持つ国だと述べ、自国の姿勢を強くアピール
そのうえで王毅外相は、地政学的な対立がエスカレートする中だからこそ、NATOには合理的で現実的な対中認識が必要だとし、対立をあおるのではなく、対話と協力を重視するアプローチを取るよう呼びかけました。
NATO側のメッセージ:アジアへの拡大意図はないと表明
これに対し、ルッテ事務総長は、NATOが地域的な防衛組織であるという立場を改めて説明しました。そのうえで、NATOとして「アジアに拡大する意図はない」と明言し、組織の役割が欧州・北大西洋地域の防衛にあることを強調しました。
同時に、ルッテ事務総長は、中国との対話とコミュニケーションを強化する意向も示しました。相互理解と信頼を高めることで、誤解や不必要な緊張を避けたいという姿勢がうかがえます。
ウクライナ危機をめぐる対話と中国の役割
会談では、ウクライナ危機についても意見交換が行われました。ルッテ事務総長は、NATOとして中国の影響力と役割を重視していると述べ、中国がロシア・ウクライナ紛争の解決に向けて重要な役割を果たすことへの期待を表明しました。
王毅外相は、中国の基本的な立場と原則を説明したうえで、関係国すべてと協力し、危機の政治的解決を促進するために建設的な役割を果たす意向を示しました。また、欧州において均衡が取れ、効果的で持続可能な安全保障の枠組みを構築することを支持すると述べました。
中国とNATOの関係はどこへ向かうのか
今回の会談は、中国とNATOの対話チャンネルが開かれ続けていることを示すものです。王毅外相の発言からは、中国が自らを国連を中心とする国際秩序の中で、平和維持や安定の担い手として位置づけようとしている姿勢が浮かび上がります。
一方、NATO側は、アジアへの拡大意図はないと明確にしつつ、中国との対話強化には前向きです。安全保障環境が複雑化する中で、大国同士が直接対話し、互いの立場を確認することは、誤解やエスカレーション(事態の深刻化)を防ぐうえで重要だといえます。
日本やアジアの読者にとっての意味
日本を含むアジアの読者にとって、中国とNATOの対話は一見すると遠い欧州のニュースのように見えるかもしれません。しかし、いくつかの点で無関係とはいえません。
- 欧州の安全保障枠組みがどう形づくられるかは、国連や多国間協力のあり方にも影響する可能性があります。
- NATOが自らを地域的な防衛組織と位置づけ、中国は対話と平和維持の役割を強調していることは、今後の国際秩序の方向性を考える手がかりになります。
- ウクライナ危機の行方と、その政治的解決に向けた中国の関与は、エネルギー市場や世界経済にも波及し得るテーマです。
「中国は自らをどう描こうとしているのか」「NATOは中国をどのように位置づけようとしているのか」。今回の会談は、その二つの問いを考えるうえで、重要な断面を提供していると言えるでしょう。
これから注目したいポイント
今後の焦点として、次のような点が注目されます。
- ウクライナ危機の政治的解決に向け、中国と欧州側との対話がどのような形で具体化していくのか
- 中国が掲げる「均衡が取れ、効果的で持続可能な欧州の安全保障枠組み」が、どのような内容として議論されていくのか
- NATOと中国のハイレベル対話が、緊張緩和や相互理解の実質的な進展につながるのか
ミュンヘンでの短い会談の中にも、国際秩序や安全保障の今後を考えるための多くのヒントが含まれています。日本からこの動きをフォローし続けることは、アジアの安全保障や外交戦略を考えるうえでも意味のある視点と言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








