ウクライナ危機で王毅外相「すべての平和努力を歓迎」
ウクライナ危機をめぐり、中国の王毅(ワン・イー)外相で中国共産党中央政治局のメンバーでもある王毅氏が、ミュンヘン安全保障会議のイベント「China in the World」で「紛争の終着点は交渉だ」と強調しました。中国はあらゆる平和への努力を歓迎すると述べ、その立場と役割をあらためて示しました。本記事は、2025年12月8日時点で明らかになっている発言内容を整理します。
ミュンヘン安全保障会議で示した「交渉こそ終着点」
王毅外相は金曜日、開催中のミュンヘン安全保障会議のイベントで質問に答える形で発言しました。まず、「あらゆる紛争の終着点は交渉である」と述べ、最終的には対話と交渉による解決しかないという認識を示しました。
そのうえで、中国は平和に向けたすべての取り組みを歓迎すると表明しました。ウクライナ危機の和平をめぐり、どの国が主導するかよりも、結果として平和に近づく試みであれば支える、というスタンスを打ち出した形です。
中国・ロシア関係は「同盟ではなく、第三国を標的にせず」
中国とロシアの石油・ガス貿易について問われた王毅外相は、両国の関係を「新時代における包括的戦略協力パートナーシップ」と位置づけ、その性格として次の3点を挙げました。
- 同盟ではない(no-alliance)
- 対立を求めない(no-confrontation)
- 第三国を標的にしない(not targeting any third party)
あわせて、中国とロシアは「通常の経済・貿易の往来」を行っていると述べ、両国のエネルギー取引などはあくまで正常な経済活動だと説明しました。対外的には、安全保障面での軍事同盟ではなく、経済や戦略対話を中心とする関係だと強調したと言えます。
ウクライナ危機への中国の立場:対話と政治的解決
ウクライナ危機に対する中国の基本姿勢について、王毅外相は「中国は一貫して対話と協議、そして政治的解決を主張してきた」と述べました。
中国はウクライナ危機を作り出したわけでもなく、当事者でもないとしつつ、「傍観することも、危機に乗じて利益を得ようとすることもしてこなかった」と強調。これまで一貫して対話と協議を通じた解決を呼びかけてきたと説明しました。
王毅外相が示した「四つの原則」
王毅外相は、ウクライナ危機の解決にあたって守られるべき原則として、次の4点を挙げました。
- すべての国の主権と領土一体性を尊重すること
- 国連憲章の目的と原則を順守すること
- すべての国の正当な安全上の懸念を真剣に受け止めること
- 危機の平和的解決に資するあらゆる努力を支持すること
これらは、中国がウクライナ危機をめぐる外交で繰り返し強調してきたキーワードでもあります。領土一体性と安全保障上の懸念という、一見すると緊張関係にある論点を同時に掲げることで、当事者双方と国際社会のバランスを取ろうとするメッセージとも受け取れます。
「平和の友」グループとグローバル・サウスの連携
王毅外相は、こうした原則を実現するために、中国が積極的に外交的仲介を行ってきたと説明しました。その一例として、ブラジルやグローバル・サウス諸国とともに「平和の友」グループを立ち上げたことに言及しました。
名称からは、特定の陣営に属さない国々が連携し、ウクライナ危機の和平プロセスを後押ししようとする枠組みであることがうかがえます。いわゆる「西側」と「それ以外」という分断を越えて、より広い範囲の国々が平和のための声を上げる場をつくろうとする試みとも見ることができます。
「客観的で公平」とする中国の提案
王毅外相は、これまで中国が示してきた提案や立場について、「情勢の推移が、中国の提案が客観的で公平、理性的かつ現実的であり、国際社会の幅広いコンセンサスを反映していることを証明している」と述べました。
中国としては、自らの立場を一方の当事者に偏らないものだと位置づけ、国際社会の多数の声を代弁しているのだというイメージを打ち出したい意図がうかがえます。
米ロの「和平協議コンセンサス」も歓迎
王毅外相は改めて、「中国は平和にコミットするあらゆる努力を歓迎する」と述べ、その対象には米国とロシアの間で合意されたとされる和平協議のコンセンサスも含まれると説明しました。
そのうえで、すべての当事者と利害関係者が、適切なタイミングで和平交渉のプロセスに参加することへの期待を表明しました。対話の枠組みに多くの国と地域を巻き込むことで、持続性のある和平合意につなげたいというメッセージと読むことができます。
欧州への呼びかけ:持続可能な安全保障枠組みを
王毅外相は、ヨーロッパが平和のための役割を果たす必要性にも言及しました。具体的には、
- 危機の根本原因をともに解決すること
- 均衡が取れ、効果的で持続可能な安全保障の枠組みを見出すこと
- 欧州大陸の長期的な平和と安定を実現すること
を呼びかけました。
これは、ウクライナ危機を単なる一つの紛争としてではなく、欧州の安全保障全体の問題としてとらえ、より広い視野での再設計を求めるメッセージとも言えます。欧州自身が主体的に安全保障の枠組みを構想するべきだ、という含意も読み取れます。
今回の発言から見える中国外交の狙い
王毅外相の発言をまとめると、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 紛争の終着点はあくまで交渉であり、中国はそのためのあらゆる努力を歓迎するという立場を強調したこと
- 中国・ロシア関係を「同盟ではないが戦略的パートナー」と位置づけ、第三国を標的にしないと明言することで、対外的な懸念の緩和を図ろうとしているように見えること
- ブラジルなどグローバル・サウス諸国と連携し、「平和の友」グループを通じて、多国間での和平仲介を打ち出していること
- 欧州に対しては、危機の根本原因に向き合い、新しい安全保障枠組みづくりに主体的に関与するよう促していること
2025年12月現在も出口が見えにくいウクライナ危機のなかで、中国は自らを「対話と仲介を重視するプレーヤー」として位置づけようとしているように映ります。一方で、こうしたメッセージが実際の和平プロセスにどこまで影響力を持つのかは、今後の各国の対応に大きく左右されます。
ウクライナ危機の行方を考えるうえで、「誰が勝つか」だけでなく、「どのような枠組みで平和と安全保障を再構築するのか」という問いが、より重要になりつつあります。王毅外相の発言は、その問いに対する中国からの一つの答えとして、今後も注目されそうです。
Reference(s):
Wang Yi on Ukraine crisis: China welcomes all efforts toward peace
cgtn.com








