アジア最深1万910メートル 中国CNPCがタクラマカン砂漠で超深井戸 video poster
中国の国有石油企業、中国石油天然気集団公司(CNPC)は、アジア最深となる垂直井戸「神地塔克1号(Shenditake-1)」の掘削を完了し、ボーリング孔の深さが1万910メートルに達したと発表しました。新疆ウイグル自治区のタリム盆地・タクラマカン砂漠の中心部で進められたこのプロジェクトは、中国の深部地球探査とエネルギー安全保障の鍵を握る取り組みとされています。
タクラマカン砂漠の「アジア最深」科学探査井
今回の井戸「Shenditake-1」は、中国北西部の新疆ウイグル自治区タリム盆地、タクラマカン砂漠の中心部に位置する科学探査プロジェクトです。CNPCによると、この井戸はアジアで最も深い垂直井戸であり、地表からの深さは1万910メートルに達します。
過酷な砂漠環境の中で行われた掘削は、単なる資源開発にとどまらず、地球深部の構造や油・ガス資源のポテンシャルを探る「深部地球探査」として位置づけられています。
「エベレストを貫き、さらに2キロ下へ」という規模感
CNPC石油探査開発研究院の常務理事兼院長である竇立栄(Dou Lirong)氏は、「神地塔克1号を掘削することは、チョモランマ(エベレスト)を貫いて、さらに地下2キロメートル下へ進むようなものだ」と表現し、そのリスクと難しさの大きさを強調しています。
タクラマカン砂漠では、夏と冬の気温差が80度以上になることもあり、作業員の身体的・精神的負荷は非常に大きいといいます。砂漠の中心部という立地条件も相まって、現場の作業環境は「極限」に近いものとなりました。
世界で2番目に深い垂直井戸に
超深度の地層に挑んだ例として知られるのが、旧ソ連が1970年から1993年にかけてコラ半島で掘削した「SG-3」井戸です。これは地表から1万2262メートルまで掘り進められた陸上井戸として知られています。
CNPCによると、「Shenditake-1」はこのSG-3に次ぐ世界で2番目に深い垂直井戸となりました。今回の掘削では、超深度掘削に関する複数の技術的ブレークスルーが達成されたとされます。
- これまでで最も深い区間でのライナーセメンチング(井戸内のパイプ固定作業)
- 最も深い位置でのワイヤライン・イメージング検層(電線式の地下構造イメージ取得)
- 陸上掘削としては最速で1万メートル超えを達成
掘削スケジュールと極限の温度・圧力
「Shenditake-1」の掘削は2023年5月30日に始まりました。深さ1万メートルに到達するまでに279日を要しましたが、最後の910メートルを掘り進めるには、そこからさらに300日を費やす必要がありました。深くなるほど地層条件が厳しくなり、作業の難度も急激に上がっていったためです。
井戸の最深部では、温度は最大220度、圧力は145メガパスカル(MPa)に達し、従来の掘削工具や材料が正常に機能しにくい環境となります。さらに、1130本を超えるドリルパイプの総重量は350トン以上に達し、最も重いケーシング(井戸を保護する鋼管)は665トンに及びました。これほどの重量を支えながら掘り進めるため、ドリルパイプの破損リスクが常に伴い、現場のエンジニアリングは高度な対応を迫られたとされています。
自動掘削リグと先端検層ツールを独自開発
このプロジェクトを支えるために、CNPCは世界初となる1万2000メートル級の自動掘削リグ(掘削装置)と、一連の超深井戸向け先端検層ツールを開発しました。極端な高温・高圧環境でも作動できる装置や計測技術の確立は、今後の超深度掘削プロジェクトの基盤になると見られます。
12層の地層を貫通、油・ガス層にも到達
CNPCによれば、「Shenditake-1」はタリム盆地の12の地質層を貫通し、1万851〜1万910メートルの深さで油・ガスに富む岩石層に到達しました。これは、ペトロチャイナ・タリム油田支社の主任技術専門家である王春生(Wang Chunsheng)氏が明らかにしたものです。
現在、中国の陸上に存在する深部および超深部の石油・天然ガス資源は、石油換算で671億トンに達し、同国全体の石油・ガス資源の34%を占めるとされています。しかし、このうち超深部にある資源で確認されているのは、石油換算で30億トンにとどまっています。
タリム油田では、深さ8000メートルを超える井戸がすでに300本以上掘削されており、累計で1957万トンの超深部油・ガスを産出してきました。「Shenditake-1」は、こうした実績の上に築かれた新たなマイルストーンと言えます。
エネルギー安全保障に向けた深部地球探査
竇氏は、「神地塔克1号は、中国の深部地球探査能力が高まりつつあることを示すものであり、エネルギー安全保障の観点からも重要だ」と述べています。深部や超深部に眠る資源をどこまで安全かつ効率的に開発できるかは、今後のエネルギー戦略に影響を与える可能性があります。
タクラマカン砂漠の中心部で進められてきたこの超深井戸プロジェクトは、資源開発と科学的探査を兼ねた取り組みとして位置づけられており、その成果と今後の展開に関心が集まっています。
Reference(s):
cgtn.com








