中国海軍の豪東海岸沖訓練、国際法順守と説明 豪国防相も「脅威なし」
中国海軍の艦隊がオーストラリア東海岸沖のタスマン海で実施している軍事訓練について、中国外交部は国際法と国際慣行に従った通常の遠洋訓練だと説明し、オーストラリア側も現時点で脅威や違法性は確認されていないとしています。大国の海軍活動と国際法の関係を考えるうえで、注目される動きです。
何が起きているのか
今回の軍事訓練は、中国人民解放軍(PLA)南部戦区が指揮する艦隊による遠洋での通常訓練の一環とされています。訓練海域は、オーストラリアとニュージーランドの間に位置するタスマン海で、オーストラリア東海岸沖の排他的経済水域(EEZ)周辺です。
中国外交部の郭家坤報道官は、定例記者会見で次のような趣旨の説明を行いました。
- 訓練は中国人民解放軍南部戦区により組織された遠洋での通常訓練であること
- 関連する国際法および国際慣行に従ったものであること
- 実施にあたっては、安全かつ規範的で、専門的な方法が取られていること
つまり中国側は、今回の活動を「日常的な遠洋訓練」であり、国際社会が共有するルールに沿ったものだと位置づけています。
中国側の立場:国際法に従った「遠洋での通常訓練」
中国外交部の郭報道官は、今回の海軍訓練が「遠洋での通常訓練」に当たると強調しました。ここでいう遠洋訓練とは、自国沿岸から離れた外洋で艦隊運用能力や連携能力を高める目的で行われる訓練を指します。
郭報道官によると、訓練は
- 関連する国際法を順守していること
- 国際的な慣行にも沿った形で行われていること
- 安全への配慮がなされ、規律だった形で実施されていること
が特徴だとされ、中国側としては、他国に対する威圧ではなく、あくまで正当な訓練活動であるとの立場を示しています。
オーストラリア側の反応:安全確保を図りつつ「脅威なし」と説明
一方、オーストラリア政府は、タスマン海で中国海軍による実弾射撃訓練が行われる可能性があるとして、航空会社に対し注意喚起を出しました。これは、民間航空の安全確保のため、訓練海域付近の情報共有を行う狙いがあるとみられます。
オーストラリア側は、先週から自国東海岸沖の排他的経済水域内を航行する中国海軍の艦隊を継続的に監視してきました。そのうえで、リチャード・マールズ国防相は今週木曜日、次のような趣旨の説明をしています。
- 中国海軍の艦艇は、オーストラリアに対して脅威を与えるものではないとみられること
- 現時点で、いかなる海洋法規にも違反していないと判断していること
つまりオーストラリア政府は、安全上の観点から警戒と監視は続けつつも、中国海軍の活動そのものを直ちに「違法」や「敵対的」とは見なしていない姿勢を示しています。
国際法と排他的経済水域:どこまでが許されるのか
今回の動きの背景には、国連海洋法条約などに基づく国際法の枠組みがあります。排他的経済水域(EEZ)は、沿岸国が水産資源やエネルギー資源などに関する経済的権利を持つ海域ですが、他国の船舶が通航したり、一定の軍事訓練を行ったりすること自体は、直ちに禁じられているわけではありません。
一般的に、
- 沿岸国は、EEZにおける資源の探索・開発などについて優先的権利を持つ
- 他国の軍艦や航空機は、国際法や安全確保のルールを守る限り、EEZを通航したり訓練を行ったりする余地がある
- 一方で、民間船舶や航空機の安全を損なうような行為は避ける必要がある
といった整理がなされます。今回、中国側が「国際法と国際慣行に従っている」と強調し、オーストラリア側も「海洋法規に違反していない」と説明していることは、この枠組みを踏まえた発言と見ることができます。
なぜ日本の読者に関係があるのか
日本周辺でも、自衛隊や各国海軍による訓練が行われ、他国艦艇が日本の排他的経済水域付近を航行することがあります。そのたびに、「これは国際法上、問題があるのか」「どこまでが許容される活動なのか」という議論が生じます。
今回の中国海軍とオーストラリアの事例は、次のような点で参考になります。
- 大国の海軍が遠洋で活動することが、ますます日常的になっていること
- その際、国際法の解釈や運用が各国の安全保障認識と直結していること
- 民間航空などへの影響を最小化するため、早めの情報共有や警告が重要になっていること
日本にとっても、自国周辺での他国軍の活動をどのように受け止めるか、そして国際法に基づいてどのように対話と監視を行うかを考える上で、今回のケースは一つの材料となります。
今後の焦点:透明性と危機管理
現時点では、中国側もオーストラリア側も、国際法を順守しているとの認識をそれぞれ示しており、事態が急激な緊張に発展しているわけではありません。ただし、軍事訓練と民間航空・船舶の動きが交錯する海域では、誤解や偶発的な事故のリスクは常に存在します。
今後の焦点となるのは、
- 訓練の事前通報や警告区域の設定など、透明性の確保
- 軍同士の連絡窓口やホットラインを通じた迅速な意思疎通
- 国際法と国際慣行を踏まえた、各国の安定的な運用ルールづくり
といった点です。今回のケースは、国際ニュースとして遠い話に見えながら、海洋国家である日本やアジア太平洋地域全体にとっても、「海でのルール」がいかに重要かを静かに伝える出来事と言えるでしょう。
Reference(s):
China: Military drills off Australia's east coast comply with intl law
cgtn.com







