中国の映画・文化観光ブームがサービス消費を牽引 春節後も続く「フィルム+」の波
中国で映画や文化観光などの文化産業が好調です。2025年の春節以降、映画館や観光地、関連グッズ産業までを巻き込んだサービス消費の拡大が続いています。
春節映画の勢いが長期化 サービス消費を押し上げ
中国では毎年、春節(旧正月)シーズンの映画興行が大きな話題になりますが、今年はその熱気が連休後も冷めず、興行収入は過去最高水準に達しています。映画需要の持続的な伸びが、サービス消費全体のグレードアップにつながっているのが特徴です。
中国の文化産業の一部である映画・文化観光は、「観る」「出かける」「買う」を一体にした消費体験を生み出し、サービス分野の成長エンジンとして存在感を強めています。
貴陽の映画館に見る「わざわざ行く」上映体験
中国南西部の貴陽市にある映画館は、今年、アジアでも有数の幅を持つIMAX-GTスクリーンにアップグレードしました。超高精細な映像と没入感の高い上映環境を整えることで、観客の「体験価値」を大きく引き上げています。
この映画館では、
- スクリーンの大型化と音響設備の刷新により、圧倒的な没入感を提供
- その結果、リピーターが増加し、複数日にわたり一日あたりの興行収入が全国トップクラスを記録
という成果が出ています。頻繁に映画館を訪れるという観客のDai Aoさんは、「全方位からのサラウンド音響と巨大スクリーンで、圧倒的な映像体験ができる」と話しており、設備投資が消費意欲を喚起している様子がうかがえます。
映画が旅行とグルメを動かす「フィルム+」現象
今回の映画ブームは、映画館だけで完結していません。作品に触発されて実際に現地を訪れる「聖地巡礼」や、作品にちなんだ料理を味わう「映画グルメ」など、映画を起点とした新しい消費行動が広がっています。
具体的には、次のような形でサービス消費が連鎖しています。
- 映画の舞台や関連の歴史スポットへの旅行
- 作品世界を再現したメニューやコラボカフェなどの飲食消費
- 観光地周辺でのホテル・レストラン・シネコンのセット利用
西安や殷墟で高まる文化観光ニーズ
歴史都市として知られる陝西省の西安や、河南省の世界遺産・殷墟などでは、春節映画のヒットを受けて観光の人気が一段と高まっています。関連するオンライン検索では、
- 周辺のホテル
- レストラン・カフェ
- 近隣の映画館
といったキーワードの検索数が増加しており、映画が観光・外食・娯楽をつなぐ「ハブ」となっている様子が見えてきます。
IPビジネスが支える文化産業の裾野拡大
映画コンテンツは、観客動員だけでなく、キャラクターや物語の知的財産(IP)ビジネスを通じて、さらに広い産業分野に波及しています。その象徴的な例が、アニメ映画「Ne Zha 2」です。
この作品では、
- クリエイティブなIP企画
- デザイン・試作・量産
- 小売・オンライン販売
までを一気通貫させた「フル産業チェーン」が構築されています。湖南省にある公式認可企業は、「Ne Zha 2」関連グッズ専用の生産ライン「Ne Zha Line」を立ち上げ、全国の需要に応えるため、1日あたり約25万個のフィギュアやコレクション商品を出荷しているとされています。
このような動きは、
- 文化・クリエイティブデザイン
- トレンド玩具
- コレクター向けグッズ
など、周辺分野の成長も後押ししています。映画一作品の成功が、製造、物流、小売まで含めた広範な産業の活性化につながっている構図です。
文化産業14兆元超 「フィルム+」が支えるサービス経済
現在、中国では一定規模以上の文化関連企業の年間営業収入が14兆元(約2兆ドル)を超えています。文化産業が中国経済にとって重要な柱になりつつあることがうかがえます。
中国国家発展改革委員会のマクロ経済研究オフィスの副主任であるZou Yunhan氏は、映画産業を起点に他分野へと広がる新しい潮流を「フィルム+」と表現し、次のように指摘しています。
「業態や消費シーンの融合とイノベーションが、サービス消費の成長を力強く支えています」
映画と観光、映画と飲食、映画とクリエイティブグッズといった複合的な組み合わせは、単発の消費ではなく、滞在時間と支出総額を高める「複利的な成長」を生み出していると言えそうです。
日本の読者への示唆 「物」から「体験」へ
中国で進む映画・文化観光とサービス消費の連動は、日本を含む他の国や地域にとっても示唆に富んだ動きです。物そのものよりも、物語や世界観を共有する「体験」に価値を見いだす流れは、国境を越えて共通するトレンドになりつつあります。
日本でも、映画やアニメ、ゲームと観光・地域振興を組み合わせる取り組みが広がっていますが、中国の事例は、
- 上映環境など「体験の質」への大胆な投資
- IPビジネスを前提にした長期的な産業チェーン構築
- 観光・飲食・小売を束ねるサービス消費の設計
といった点で、一つの参考モデルになりそうです。2025年の春節から続く中国の「フィルム+」の動きは、ポスト・パンデミック期のサービス経済のあり方を考えるうえで、注目しておきたいトピックだと言えるでしょう。
Reference(s):
Film and cultural tourism industries fuel service consumption growth
cgtn.com







