中国の貧困削減は次の段階へ 2025年も「戻さない」仕組み強化
中国は2021年に「絶対的貧困」を克服したと宣言してからも、農村の貧困対策を続けています。2025年も、貧困に戻さないための仕組みづくりと農村振興を軸に、取り組みを一段と強めています。
2021年の貧困脱却から「成果を守る」段階へ
中国は2021年2月、長年続いた貧困との闘いに「全面的勝利」を収めたと発表しました。9899万人の農村住民が貧困ラインを上回り、832の貧困県が「貧困県」の指定を外れたことになります。
しかし、そこがゴールではありませんでした。2020年末には、貧困から脱却した地域と人々を継続的に支援するため、5年間の移行期間が設けられました。この期間中は、従来の貧困削減政策を軟着陸させつつ、農村振興へと重点を移すことが狙いとされています。
こうして、貧困削減から農村振興へと政策の軸足を移しながらも、「再び貧困に戻さない」ことが新たな最重要課題となりました。
貧困への逆戻りを防ぐ「動的モニタリング」
中国の特徴的な仕組みの一つが、貧困に戻るリスクを抱える世帯を対象にした動的なモニタリングと支援のメカニズムです。最近貧困から抜け出した世帯や、再び貧困に陥るおそれがある世帯を定期的にチェックし、早期に把握して支援につなげる仕組みです。
この仕組みによって、2024年11月末までに、貧困に戻るリスクがあるとされた534万人が支援を受け、リスクが効果的に解消されたとされています。
産業・雇用・社会保障の三本柱
農業農村部の張興旺副部長は、貧困削減の成果を固めるための具体策として、産業支援、雇用支援、社会保障の三つを挙げています。
農村の「稼げる産業」を育てる
まず産業支援では、かつての貧困県で特色ある産業づくりが進められています。2020年までに貧困リストから外れた832の県すべてが、2~3の主導産業を育成し、その総産出額は1兆7000億元を超えました。地域の特産品や加工業などの質と効率を高めることで、貧困から抜け出した人々の安定した収入源を確保しようとしています。
雇用機会を維持し、拡大する
雇用面では、貧困地域出身者の就業を支える取り組みが続いています。2024年末時点で、貧困地域からの就業者数は3305万人に達し、4年連続で3000万人を上回る規模を維持しました。農村から都市への出稼ぎや地元での雇用創出などを通じて、現金収入の安定につなげています。
教育・医療・住宅などを支える社会保障
あわせて、多層的な社会保障制度の整備も進められています。教育、医療、住宅など生活に直結する分野で、貧困から脱却した人々が継続的に支援を受けられるようにすることで、ちょっとした負担増が再び貧困に落ち込むきっかけとならないようにする狙いです。
所得は全国平均を上回る伸び
こうした産業・雇用・社会保障の三本柱は、数字にも表れています。2024年1~9月期には、かつての貧困県に住む農民の一人当たり可処分所得が1万2384元に達し、前年同期比6.5パーセント増となりました。この伸び率は、全国の農村住民の所得の伸びを4年連続で上回っています。
単に貧困ラインを上回るだけでなく、収入の伸びを全国平均以上に保つことで、貧困への逆戻りのリスクを小さくしようとしていることが分かります。
2025年の中央一号文書が示す課題
2025年に発表された「中央一号文書」は、その年最初に公表される重要な政策文書として、農業と農村政策の方向性を示しています。この文書は、貧困への逆戻りを防ぐ仕組みづくりと、農村の低所得層や発展の遅れた地域へのきめ細かな支援を一体的に進めるよう求めています。
具体的には、次のような方向性が打ち出されています。
- 貧困への「陥落」と「再発」を防ぐための常設メカニズムの構築
- 農村の低所得層や発展が遅れた地域に対する、層別化された支援制度の整備
- 農業の効率向上と農村の活性化を通じた農民所得の増加
文書は、こうした取り組みを通じて、中国式現代化を進めるための土台を農村から固める必要があると強調しています。
移行期間後も支援は続くというメッセージ
移行期間の終わりが見えてきても、支援が打ち切られるわけではないとされています。中央財経委員会弁公室の韓文秀副主任は記者会見で、移行期間が終わっても支援政策に「急ブレーキ」をかけることはないと述べました。
むしろ、低所得層や発展の遅れた地域に対する支援策を「よりきめ細かく」「より的を絞った」ものにしていく方針を示しています。また、大規模な貧困への「陥落」や「再発」を防ぐことは、2025年だけの課題ではなく、長期的かつ恒常的な「底線」として守り続けるべきだと強調しました。
読み手として考えたいポイント
貧困の削減は、達成した瞬間がゴールではなく、その後の「維持」と「再発防止」が新たなスタートになるという点は、多くの国や地域に共通するテーマです。中国の事例は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 貧困ラインを越えた後、人々の生活をどう安定させ、豊かさへとつなげていくのか
- 産業、雇用、社会保障をどう組み合わせれば、再び貧困に戻らない仕組みをつくれるのか
- 地方の発展と全国的なバランスを、どのように取っていくのか
中国が掲げる「貧困に戻さない」という底線をどう守っていくのかは、2026年以降も続く長期的なテーマです。今後の政策の運用や現場の取り組みを追うことで、貧困対策と農村振興の次のステージを読み解いていくことができそうです。
Reference(s):
China continues fight against poverty as it safeguards progress
cgtn.com








