中国の大学で進むAI規制 論文作成と学術不正にどう向き合うか
生成AIの進化で、大学のレポートや卒論の書き方が大きく変わりつつあります。2025年現在、中国の多くの大学では、AIをどう使い、どこからが学術不正となるのかを巡って、ルール作りが本格化しています。
調査で見えた学生の生成AI依存
DeepSeekのような高度なAIモデルの登場により、中国の大学生は学術文書の作成にAIツールを日常的に使うようになっています。一方で、AIへの過度な依存や不適切な使い方も広がりつつあります。
教育調査機関MyCOSが大学教員と学生あわせて3,000人超を対象に行った調査では、約6割が「毎日、もしくは週に複数回」生成AIを利用していると答えました。
特に学生では、およそ3割が主な用途として「レポートや課題、論文の執筆」を挙げています。一部の学生は、AIが生成した文章をほぼそのままコピー&ペーストして提出しているといいます。
懸念される学術不正 データ改ざんや画像編集も
大学教員や専門家はChina Media Group(CMG)の取材に対し、単にAIで文章を作るだけでなく、より深刻な学術不正も起きていると指摘しています。
具体的には、研究データをAIで捏造したり、実験画像を編集して結果をよく見せたり、本来は学生が自ら行うべき設計や創作をAIに置き換えてしまうケースなどです。
こうした行為は、研究の信頼性を損なうだけでなく、学生自身の学びの機会も奪ってしまいます。
中国の大学が進めるAI利用ルール
こうした状況を受け、中国の多くの大学は生成AIの許容範囲と禁止事項を明確にするための規則作りを進めています。
復旦大学:研究設計や論文執筆へのAI利用を禁止
復旦大学は最近、AIツールの利用に関するガイドラインを公表しました。このガイドラインでは、次のような場面でのAI利用を禁止しています。
- 研究計画や研究設計
- データ収集
- 画像の作成・加工
- 卒業論文・学位論文などの執筆
- 機密性の高い内容の処理
ガイドラインに反する深刻な違反行為があった場合は、科目の不合格や学位取得への影響といった厳しい処分が科される可能性があるとされています。
天津科技大学:卒論にAI検出を導入、40%ルールも
天津科技大学は昨年、学部の卒業論文にAI生成コンテンツの検出システムを導入しました。このシステムでは、論文中のAI生成部分の割合に上限を設け、40%を超えないことを求めています。
この方針は2025年卒業生にも継続して適用されており、学生はAIに頼りすぎない形で論文を仕上げることが求められています。
進化するAIと「検出技術」のいたちごっこ
中国では、学術不正を防ぐため、複数の研究チームがAI生成コンテンツの検出技術の開発に取り組んでいます。
一方で、AIそのものも日々高度化しており、AI生成であることを人間の文章のように見せる「検出回避」の手法も進化しています。その結果、不正を見抜く検出技術も絶えずアップデートしていかなければ、十分な効果を保てないという課題があります。
鍵は評価の見直しとAIリテラシー
専門家は、技術的な検出だけでは不十分であり、評価方法やAIリテラシー(AIを適切に理解し、使いこなす力)の向上が不可欠だと強調しています。
浙江大学教育学院の研究者である黄雅婷氏は、評価の軸を「高次の思考力」に置くべきだと提案します。知識の暗記や定型的な課題はAIが得意とする領域であり、そこだけを評価していては、簡単にAIに置き換えられてしまうからです。
黄氏は次のように指摘しています。「AIは反復的で標準化された作業を代替できます。教員は、AIが簡単には再現できない課題を設計するとともに、AIとの協働を促し、全面的な依存を避けるべきです」。
つまり、AIの利用を一律に禁じるのではなく、どこまでをAIに任せ、どこからを人間の創造的な仕事とするのかを明確にし、その線引きを学生と共有することが重要だと言えます。
私たちが考えたい3つの問い
中国の事例は、生成AIが当たり前になりつつある時代の大学教育や評価のあり方を考えるヒントにもなります。記事を読んだ皆さんは、次のような問いをどう考えるでしょうか。
- レポートや論文作成で、AIに任せてはいけない部分はどこまででしょうか。
- もし自分の大学や職場でAI利用ルールを作るとしたら、どのような線引きを設けますか。
- AIと共存するために、自分自身はどのような力(リテラシーや思考力)を伸ばしたいですか。
生成AIの活用が広がるなかで、「便利さ」と「誠実さ」のバランスをどう取るのか。中国の大学が進める取り組みは、この問いに向き合うための一つの試みと言えそうです。
Reference(s):
Chinese universities seek to regulate AI use in academic writing
cgtn.com








