火星に古代の海の証拠 中国チームが地下の海岸線構造を報告
火星に本当に海があったのか――。この長年の謎に、中国の研究者らが新たな「決定的証拠」を提示しました。火星地下に埋もれた海岸線の跡とみられる構造が見つかり、古代の海の存在を強く裏づける結果が報告されています。
中国の研究者らによる国際チームが発見
中国の研究者たちは、海外の研究者と協力しながら、火星の地下構造を詳しく解析しました。成果は、米科学誌PNASに最近掲載された論文で公表されています。
研究チームが注目したのは、火星地下に見られる「傾いた反射面」です。これは、レーダー観測などで地下を調べたときに、一定方向に傾いた層のように反射が現れる構造のことを指します。
論文によると、こうした傾いた反射面は、時間をかけて前方へ成長していく海岸線、いわゆる「前進する海岸線」を示す典型的なサインと考えられます。地球でも、デルタや浅い海岸の堆積物で似たようなパターンが見られます。
「地下からの証拠」という意味
今回の成果が注目される理由は、これが火星の古代の海に関する、これまでで最も直接的な「地下からの証拠」だとされている点です。
- これまでは主に、軌道上から撮影した表面の地形画像にもとづく議論が中心でした。
- 今回の研究では、地表ではなく「地下構造」に海岸線の名残とみられる形が確認されました。
- 地下は、風化や侵食の影響を比較的受けにくいため、古い記録が残りやすいと考えられます。
こうした理由から、研究チームは、北半球の低地帯に広がる古代の海が、かつて火星表面の約3分の1を覆っていた可能性を、より強く示すものだとしています。
なぜ古代の海は「論争」だったのか
火星に古代の海が存在したという仮説自体は、これまでも繰り返し提案されてきました。特に、北半球の低地帯を取り囲むように伸びる「海岸線らしき」地形は、古い海の名残だと解釈されてきました。
しかし、この仮説には長年、次のような疑問がつきまとってきました。
- 推定される古代の海岸線の高度が、場所によって大きくばらついている
- 火星が過去約40億年のあいだに受けてきた隕石衝突の影響
- 風や水、氷による風化や侵食
- 火山活動などによる地表の「作り変え」(再表層化)
こうした要因が重なった結果、本当に海があったのか、それとも別のプロセスで似た地形が出来ただけなのかを、明確に区別するのが難しかったのです。
今回の研究は、地表の形だけではなく「地下構造」からも海の存在が示されたことで、この論争に新たな一歩をもたらしたといえます。
火星の海が語る「気候」と「生命」の可能性
火星に古代の海が存在したとすれば、それは単なるロマンではなく、科学的にも重大な意味を持ちます。
- 火星がかつて、液体の水が長期間安定して存在できるほど、温暖で厚い大気を持っていた可能性が高まる
- 海という環境は、生命の誕生や維持にとって有利だと考えられており、火星の生命存在の可能性を検討する上で重要な手がかりになる
- 地球と火星という、似て非なる2つの惑星の比較から、惑星の気候変動や長期的な環境変化の理解が深まる
2025年現在も続く火星探査の大きなテーマは、「水」と「生命の可能性」をめぐる問いです。今回の成果は、そのどちらにとっても重要なピースになりそうです。
今後の火星探査に何をもたらすのか
火星の古代の海が、北半球の広大な低地帯を覆っていたとすれば、その海底だった場所には、多様な堆積物や、環境の変化を記録した層が残っているかもしれません。
今後の探査では、次のような方向性がより重視されていくと考えられます。
- 海岸線や海底だったと推定されるエリアを重点的に調べる軌道探査
- 堆積層が露出している地点を選んだ着陸探査やローバー探査
- 将来のサンプルリターン計画における、採取地点の有力候補としての検討
こうした探査が進めば、火星の古代の海の規模や深さ、存在した期間など、より具体的なイメージが描けるようになるかもしれません。
私たちがこのニュースから考えられること
今回の研究は、中国の研究者と海外の研究者が協力し、火星という地球外の世界に挑んだ成果です。国や地域をこえた科学協力が、惑星規模の謎を解く鍵になりつつあることも印象的です。
火星に本当に海があり、そこにどのような環境が広がっていたのか。そこから、地球の未来や、私たち自身の存在をどう捉え直せるのか。ニュースをきっかけに、そんな問いをゆっくり考えてみるのもよいかもしれません。
Reference(s):
Scientists provide evidence for existence of ancient ocean on Mars
cgtn.com








