中国・スイス国交75年 駐中国スイス大使が語るモデル関係
2025年2月25日、北京の中国人民大学で開かれたアンバサダーフォーラムで、駐中国スイス大使ユルク・ブーリ氏が、中国とスイスの関係をモデルケースとして語りました。中国が毎年開催する全国人民代表大会と中国人民政治協商会議(いわゆる両会)を控えたタイミングで行われたこの講演は、国交樹立75周年を迎えた両国の現在とこれからを示すメッセージとなりました。
この講演は、中国の発展や国際協力について各国要人が語るCGTNの特別シリーズ「Spring Letters: Global Officials on the Two Sessions」とも連動し、中国とスイスのパートナーシップがどのように築かれてきたのかを整理する機会となりました。
17〜18世紀から続く長い歴史と安定した関係
ブーリ大使はまず、中国・スイス関係の歴史に触れました。両国のつながりは17〜18世紀の貿易関係にさかのぼり、主に貿易を通じて交流が始まりました。近代では、1950年にスイスが新たに成立した中華人民共和国を承認し、欧州の中でも早い段階で外交関係を樹立しました。
その後も、両国の政治関係は安定して推移し、ハイレベルの往来や人的交流が活発に行われてきました。2025年は外交関係樹立75周年にあたり、その節目の年にあらためて関係の意義が確認された形です。
経済・貿易協力:FTAが後押しする双方に利益ある関係
中国とスイスの経済協力は、両国関係の中核となっています。1975年に初の貿易協定が結ばれ、その後2014年に自由貿易協定(FTA)が発効したことで、二国間貿易はさらに加速しました。この10年で、中国とスイスの貿易額は70%増加したとされています。
現在、中国はスイスにとって第3の貿易相手であり、一方でスイスは欧州における中国の重要な貿易パートナーの一つです。スイスはまた、技術移転のハブとしての役割も果たしており、中国と欧州を結ぶ技術・産業協力の要となっています。
イノベーション国家スイスの強み
人口約900万人と小さな国ながら、スイスは経済力とイノベーション能力で世界的に高い評価を受けています。1848年の近代国家成立以降、一貫して中立政策を掲げつつ、国際社会との結びつきを重視してきました。
ブーリ大使は、スイスの成功はイノベーション・トライアングルに支えられていると説明しました。
- 大学などによる学術教育
- 職業教育・訓練
- 研究活動
こうした教育・人材育成と研究開発の連携により、スイスは長年にわたり世界のイノベーション指数で上位に位置してきました。中国との関係でも、研究協力や技術交流は重要な柱となっています。
企業の往来:1000社超のスイス企業が中国で活動
現在、中国では1000社を超えるスイス企業が事業を展開しており、製薬、化学、時計、精密機器など幅広い分野をカバーしています。これらの企業は中国市場での成功を収めているだけでなく、技術移転や現地化を通じて、中国の産業発展にも貢献しているとされています。
一方で、中国企業もスイスで存在感を高めています。HuaweiやIndustrial and Commercial Bank of Chinaといった企業が、研究開発や物流の分野でプレゼンスを強めています。欧州の中でスイスは、中国企業が他の欧州市場へ進出する際のハブとしての役割も担っています。
チャイナスピードから学ぶデジタル変革
ブーリ大使は、中国で事業を展開するスイス企業が、中国特有の速さ、いわゆるチャイナスピードから多くを学んでいると指摘しました。このチャイナスピードとは、イノベーションのスピード、顧客サービス、マーケティングの展開などにおいて、中国が見せる圧倒的なスピード感を指します。
中国のデジタル化の進展は、こうした変化を加速させています。ブーリ大使は、これからは世界が中国のスピードに合わせていく方向にトレンドが進むとの見方を示し、中国市場での経験がグローバルなビジネスモデルに影響を与えつつあると強調しました。
新エネルギー車と自由貿易への姿勢
講演では、中国の新エネルギー車(NEV)の受け入れについても言及がありました。ブーリ大使は、スイスや欧州市場における中国製NEVの本格的な普及には時間がかかるとの見通しを示しつつも、少なくともスイス市場には関税や制度面の障壁はなく、中国の自動車メーカーに対して完全に自由な貿易環境が整っていると述べました。
今後の協力分野:文化・観光からバイオ医薬まで
2025年は中国・スイス国交樹立75周年の節目の年であり、両国は人文交流を一段と深めるため、文化・観光年を開催する予定です。観光や文化イベントを通じた人と人との交流が、政治や経済の土台を支えるとの認識が共有されています。
ブーリ大使は、スイスが今後もオープンな経済姿勢を維持し、貿易や投資を拡大しつつ、貿易障壁の削減や新たな協力分野の開拓を進めていく考えを示しました。具体的なテーマとしては、バイオ医薬品、知的財産、企業の安全保障、一帯一路イニシアチブ、ドイツ語圏文化の影響などが挙げられました。
日本の読者への問いかけ:中国とどう向き合うか
スイスは、大国でもない一国が中国との関係をどのように設計し、経済・技術協力を進めているかという点で、他の国々にとっても一つの参考例になりえます。イノベーション国家としての強みを生かしつつ、中国との協力を通じて自国の競争力を高めようとする姿勢は、日本にとっても他人事ではありません。
中国市場のスピード感をどう取り込み、自国の教育や研究、産業構造と結びつけていくのか。自由貿易と安全保障、産業政策のバランスをどのように取るのか。スイスの事例は、こうした問いを静かに投げかけています。
国交75年を経てもなお、これからが本番とも言える余地を残している中国・スイス関係。ブーリ大使の講演は、国と国との関係を長い時間軸で見直すことの重要性を、あらためて示したと言えそうです。
Reference(s):
Swiss ambassador to China highlights Sino-Swiss relations as a model
cgtn.com








