カンボジア農村の祖父母の夢 貧困削減プロジェクトが変える暮らし video poster
カンボジアのカンダル州スバイアムピア村で、高齢の祖父母と孫たちの暮らしを変えようとしているのが、東アジア貧困削減協力パイロットプロジェクトです。2025年の今、東南アジアの農村で進む国際協力の現場を、日本語で追ってみます。
カンダル州スバイアムピア村、75歳チェン・ルンさんの暮らし
カンボジア・カンダル州スバイアムピア・コミューンのスバイアムピア村に暮らすのは、75歳のチェン・ルンさんです。夫と複数の孫たちと同居し、日々の生活を支えています。
しかし、夫は高齢で体調もすぐれず、重い農作業や肉体労働を担うのは難しくなっています。一方で、娘と娘の夫は首都プノンペンで働いており、家には働き手がほとんど残っていません。その結果、家計は厳しく、生活費をやりくりするだけで精一杯の状態が続いてきました。
働きに出る世代、村に残る祖父母と孫
カンボジアを含む東南アジアの多くの地域では、若い世代が都市部へ働きに出て、農村には祖父母と孫が残るという構図がよく見られます。スバイアムピア村のチェンさん一家も、その一つの姿です。
都市で働く娘夫婦の収入は、家族にとって大切な支えです。しかし、彼らが村を離れているあいだ、孫たちの世話や家の管理、わずかな収入を生み出す仕事までを、高齢の祖父母が担わざるをえません。
- 高齢の夫婦にとって、農作業や家事は大きな負担
- 孫たちの食事や教育費も、限られた収入の中からやりくり
- 老朽化した住まいは、雨漏りや安全面でも不安の種
こうした複合的な負担が、農村の高齢世帯の暮らしをじわじわと苦しめてきました。
東アジア貧困削減協力パイロットプロジェクトとは
こうした状況を改善するために始まった取り組みの一つが、カンボジアで実施されている東アジア貧困削減協力パイロットプロジェクトです。その名の通り、東アジア地域の協力のもとで、貧困削減のモデルを試行するパイロット事業として位置づけられています。
スバイアムピア村は、そのパイロットサイトの一つに選ばれました。村で暮らす人びとの生活環境を改善し、貧困の悪循環を断ち切るきっかけをつくることがねらいです。
住宅改修に焦点を当てた支援
このプロジェクトの目に見えやすい柱の一つが、住宅改修の支援です。住まいの質は、家族の健康や安全だけでなく、子どもの学びや将来への希望にも直結します。
チェンさん一家は、この住宅改修プロジェクトに最初期から参加した世帯の一つです。老朽化した家の改善を目指し、住まいを整えることで、安心して暮らせる生活基盤を築こうとしています。
住宅改修の支援では、例えば次のような点が重視されます。
- 雨季でも雨漏りしにくい屋根や壁への改善
- 床や柱を補強し、安全性を高める工事
- 清潔な暮らしを保ちやすい間取りや設備の整備
こうした変化は、一見すると「家がきれいになる」という見た目の問題に見えますが、実際には、病気のリスクを減らしたり、子どもが勉強しやすい環境を整えたりと、生活の中身を大きく変える力を持っています。
祖父母の夢は「安心して暮らせる家」
このストーリーには、英語で「Going South(南へ)」と「The Grandparents’ Dream(祖父母の夢)」というタイトルが付けられています。そこに込められているのは、単なる家の改修以上の意味です。
チェンさん夫婦にとっての「夢」は、きらびやかなぜいたくではなく、孫たちとともに、安心して暮らせる家と、日々の生活をなんとか続けていけるだけの安定です。
- 雨や風をしのげる、壊れる心配の少ない家
- 孫たちが学校に通い、宿題ができる明るい場所
- 高齢の夫婦の体にも負担が少ない生活環境
住宅改修の支援は、こうした祖父母のささやかな願いを、現実のものに近づけるための一歩だといえます。家が整えば、孫たちが勉強に集中しやすくなり、将来の選択肢も広がります。そのこと自体が、長期的な貧困削減にもつながっていきます。
2025年の今、日本から考える「貧困削減」とは
2025年の日本から見ると、カンボジア農村の一家庭の話は、遠い世界の出来事のように感じられるかもしれません。しかし、チェンさん一家の暮らしを通して見えてくるテーマは、決して他人事ではありません。
- 高齢者が家族のケアと家計を支える負担
- 都市と農村の格差、地方に残る世代の課題
- 住まいの質が、教育や健康、将来の機会に与える影響
どれも、日本社会が向き合っている問題と重なります。少子高齢化や地方の人口減少が進む日本にとっても、高齢者と孫世代が支え合う家庭の姿は、決して珍しいものではありません。
国境は違っても、「安心して暮らせる家を持ちたい」という祖父母の願い、「家族のために働きに出る」子世代の選択、「教育を通じて未来を切り開きたい」と願う孫世代の思いは、どこか共通するものがあります。
ニュースを自分ごとにするための視点
スバイアムピア村で進む東アジア貧困削減協力パイロットプロジェクトは、まだ道半ばの取り組みです。それでも、一つの家、一つの村の変化が、やがて地域全体の貧困削減モデルにつながっていく可能性があります。
この記事をきっかけに、次のような問いを、自分の生活や日本社会に重ねて考えてみることもできます。
- 私たちの身近な地域で、「住まい」が課題になっているのはどんな人たちか
- 高齢者と子どもが安心して暮らすために、どんな支援があればよいのか
- 国際協力のニュースを、自分の働き方や暮らしとどう結びつけて理解できるか
カンボジアの一つの村から始まった祖父母の夢の物語は、2025年を生きる私たちに、「豊かさとは何か」「暮らしの土台とは何か」を静かに問いかけています。
まとめ:スバイアムピア村から届く、小さな大きな変化
チェン・ルンさん一家が暮らすスバイアムピア村は、東アジア貧困削減協力パイロットプロジェクトの舞台の一つです。高齢の祖父母が孫たちと暮らす家の改修を通じて、生活の安全と尊厳を取り戻そうとしています。
国際ニュースとして見れば、小さな村の一家庭の話に過ぎないかもしれません。しかし、その背後には、東アジアの貧困削減、都市と農村の格差、高齢化と家族のかたちといった、私たちみんなに関わる大きなテーマが広がっています。
「Going South(南へ)」「The Grandparents’ Dream(祖父母の夢)」と名づけられたこの物語は、遠い場所から届いた一通の手紙のように、私たちの価値観を少しだけ揺さぶり、考えるきっかけを与えてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








