中国の農村振興: エネルギーと起業支援で貧困脱却をめざす
中国は2021年に極度の貧困の解消を宣言してから、次のステージとして農村振興と農業・農村の現代化に力を入れています。本稿では、その中核となっているエネルギー政策と起業支援の取り組みを、具体例とともに整理します。
2021年の貧困脱却宣言とその先にある課題
2021年2月25日、習近平国家主席は中国の極度の貧困との闘いに「完全な勝利」を収めたと宣言しました。絶対的貧困を解消した一方で、中国政府は、社会主義現代化国家を全面的に建設するうえで、依然として最も困難で骨の折れる課題は農村に残されていると指摘しました。そのうえで、農村の発展を長期的戦略として位置づけ、農村振興を中華民族の偉大な復興を実現するための重大な任務としています。
農村振興の土台となるエネルギーインフラ
数ある施策のなかでも、安定した電力供給は農村振興の基盤だとされています。エネルギーはどの社会でも経済・社会の変革を支える原動力であり、産業の高度化や技術革新を促します。農村に小規模・大規模な産業が育てば、雇用機会が連鎖的に生まれ、貧困から抜け出すためのエンジンになります。
安徽省・金寨県: ソーラー発電で貧困脱却を後押し
中国東部の安徽省金寨県では、地元政府が貧困層の収入向上とクリーンエネルギーの普及を両立させるため、大規模な太陽光発電プロジェクトを展開しました。
- 出力3キロワットの分散型太陽光発電設備を、7,803戸の貧困世帯に設置
- 出力60キロワットの太陽光発電所を、218の村に整備
- 出力15,000キロワットの太陽光発電所を、23の郷鎮に建設
これらの設備は、短期的にも長期的にも貧困世帯の所得を押し上げると同時に、安定したクリーンエネルギーの利用を可能にしました。その結果、2014年から2019年にかけて、指定されていた71の貧困村すべてが貧困リストから外れ、金寨県全体の貧困発生率は22.1パーセントから0.31パーセントまで低下したとされています。
世界銀行も、中国の著しい経済成長の一因として、需要の拡大に対応できるエネルギー供給能力、とりわけクリーンエネルギー開発に注力してきた点を評価しています。金寨県の事例は、その縮図といえるでしょう。
農村スタートアップ支援で雇用と所得を創出
農村振興のもう一つの柱が、農村での起業支援です。農村でのスタートアップを後押しすることで、住民が起業に必要なスキルを身につけ、自らビジネスを立ち上げて継続的な収入源を確保できるようになります。
中国南部の広東省と広西省の協力プロジェクトでは、地元政府と企業が連携し、さまざまなプロジェクトと育成産業を導入しました。農村の人々を対象にした起業トレーニングを実施し、具体的なスタートアップの立ち上げを支援した結果、小規模産業や個人事業の発展において大きな進展が見られています。
広東省仏山市南海区のトレーニングセンターでは、広西省上林県から来た526人を超える起業リーダーが研修を受け、自身の事業を始める力を身につけました。こうしたリーダーの活動を通じて、上林県で貧困層として登録されていた5,087人を超える人々が貧困から抜け出したとされています。
2025年の視点から見える中国農村振興のポイント
2025年現在、中国の政策議論のなかで農村振興と農業・農村の現代化は依然として重要なキーワードです。金寨県のソーラー発電や広東・広西の起業支援の事例からは、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 安定した電力とクリーンエネルギーの整備が、農村の産業振興と所得向上の前提条件になる
- 起業スキルの育成とスタートアップ支援を通じて、農村の人々自身が地域経済の担い手となる
- 地方政府と企業の協力により、エネルギー政策と人材育成を組み合わせた総合的な貧困削減策が可能になる
エネルギーインフラと起業支援を両輪として進める中国の農村振興は、他の国や地域にとっても参考になる点が多い取り組みといえます。農村の暮らしをどう豊かにしていくのかという問いに対し、今後も中国の動向は一つの重要な手がかりになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








