中国のAI民主化を牽引するDeepSeek 新質生産力時代の国際ニュース video poster
中国発・AI民主化の新しい波
人工知能が高価で一部の富裕な国や巨大企業だけのものになりがちな中、中国発のAIプロジェクトDeepSeekが、その常識を変える存在として注目されています。日本工学アカデミーのアカデミシャンであるRen Fuji氏は、DeepSeekを通じてAIの民主化が進み、背景の異なるあらゆる人々が恩恵を受けられる可能性が高まっていると語っています。
エリート型AIとみんなのAI 深層にある二つの流れ
Ren氏は、現在のAI開発には大きく二つの方向性があると指摘します。
- 膨大な資金と計算資源を前提としたエリート主導型のAIモデル
- より低コストで、多くの人や企業に開かれた包摂的なAIモデル
前者は、富裕な国や一部の大企業だけが最新のAIを活用できる一方で、他の国や中小企業との格差を広げかねません。これに対して、DeepSeekは後者の包摂的な方向性に軸足を置き、AIのコストを下げて公共性を高めるアプローチを取っています。
Ren氏によれば、AIの基本原理そのものが突然変わったわけではありません。しかし、DeepSeekのようなエンジニアリング重視の取り組みによって、AIが現場のサービスや製品に組み込まれるスピードが加速し、日常生活にまで浸透しつつあります。
Ren氏は「今は中国のAI発展にとって極めて重要な局面であり、AIが本当の意味で各家庭に届くタイミングだ」と強調しています。
新質生産力とともに浮かび上がる中国AIの三つの強み
2025年の中国の全国両会でも、新質生産力というキーワードとともにAIが大きく取り上げられました。AIは産業構造の高度化だけでなく、社会全体の生産性や生活の質を底上げする重要な基盤として位置づけられています。
こうした文脈の中で、Ren氏は世界のAI競争における中国の強みとして、次の三点を挙げています。
- 政府の早期かつ積極的な支援
中国政府は比較的早い段階からAIを国家戦略として位置づけ、研究開発や産業応用を後押ししてきました。その継続性が、大規模なプロジェクトを進める土台になっているといいます。 - 広大で多様な市場応用
中国には、製造業から金融、医療、教育、都市インフラまで、AIを試せる分野が幅広く存在します。この多様な実証の場が、技術の磨き上げとコスト低減を加速させています。 - 若いAI研究者の革新性
Ren氏は、中国の若いAI研究者たちが未知の領域に挑戦する自信と、境界を押し広げようとする姿勢を高く評価しています。こうした人材の存在が、DeepSeekのような新しい取り組みを支える源泉になっているといえます。
ロボット競技会から見える感情AIと人間ロボット関係
Ren氏がこうした見解を語ったのは、中国人工知能学会が主催する全国ロボットコンテストのキックオフイベント会場でした。2025年のこのイベントの会場で、同氏はCGTNのインタビューに応じ、中国のAI発展とDeepSeekの意義について説明しました。
会場では、感情を理解するAIや、人間とロボットが自然にやりとりするための技術にも関心が集まっていました。具体的には、表情や声の抑揚から人の状態を推定したり、状況に応じてロボットの応答を変えたりする試みです。
AIが安価になり、より多くの場面に組み込まれるほど、単に正確に情報を処理するだけでなく、人の感情や文脈を踏まえてふるまう力が重要になります。介護や教育、接客など、人と長時間向き合う分野ほど、この感情AIと人間ロボットの自然な関係づくりが欠かせません。
日本と世界への示唆 コストダウンが生む新しい選択肢
DeepSeekが目指すAIの民主化は、中国だけの物語ではありません。AIのコストを下げ、より多くの人や組織に開いていくという発想は、日本を含む各国や地域にとっても重要なテーマです。
- 高価な専用システムに頼らずに済めば、中小企業や地方の事業者もAIを活用しやすくなる
- 教育や医療、公共サービスなど、採算がギリギリの分野にもAIを導入しやすくなる
- 技術格差を背景とした新たな分断を和らげる一助になりうる
DeepSeekのように、最先端の技術を追いかけながらも、その成果をできるだけ多くの人に届けようとする発想は、日本企業や研究機関にとっても参考になる視点です。AIを「持つ側」と「持たない側」に社会が分かれてしまう前に、コストとアクセスの問題にどう向き合うのか。2025年の今、中国発の試みは、世界全体に静かな問いを投げかけているように見えます。
考えるための三つの視点
最後に、読者が自分ごととして考えるための視点を三つ挙げておきます。
- 自分の仕事や生活のどこに、低コストのAIが入ってきたら便利か
- AIが身近になるほど、人間ならではの役割はどこに残るのか
- 技術の使い方のルールづくりに、市民としてどう関わっていけるのか
中国のDeepSeekをめぐる動きは、単なる技術ニュースにとどまらず、私たち一人ひとりの将来の働き方や暮らし方を考えるきっかけにもなっています。
Reference(s):
cgtn.com








