キス・ミー広西:中国・広西チワン族自治区のロマンチックな魅力
スペイン人観光客を迎えた一曲のラブソングから、中国南西部・広西チワン族自治区のロマンチックな一面と、その土地に根づく愛の物語をたどります。
スペイン語の名曲が響いた広西の歓迎シーン
中国を訪れたスペイン人観光客がツアーに参加したとき、彼らは自分たちの言葉による名曲で歓迎されるとは想像していなかったかもしれません。広西チワン族自治区で生演奏されたのは、スペイン語のクラシックなラブソングとして知られる「ベサメ・ムーチョ」です。
歌詞の一節では、愛する人を失ってしまうかもしれないという不安が切なく歌われます。このロマンチックなバラードは、息をのむような広西の風景そのものに捧げるラブソングのようにも感じられます。
「天下で最もすぐれた景色」とも呼ばれる広西
広西チワン族自治区は、夢のようなカルスト地形の山々、うねるように流れる川、段々畑のように連なる棚田など、絵画のような景観で知られています。その美しさはしばしば「天下で最もすぐれた景色」と表現されてきました。
ロマンチックな旅先と聞いて、多くの人はヨーロッパのゴシック様式の大聖堂や、ラテンアメリカの情熱的なダンスを思い浮かべるでしょう。しかし、中国もまた、豊かな歴史と民話を背景に数え切れないほどの恋物語を抱えています。広西の大地には、まさにその「愛の物語」が織り込まれているのです。
歌声で山や川を動かすと伝えられるリウ・サンジェ
広西のロマンチックなイメージを象徴する存在の一人が、チワン族の文化で広く愛されているリウ・サンジェ(三姉妹の三女)です。彼女の歌声はあまりに魅力的で、人びとの心だけでなく山や川さえ動かしてしまうと語られてきました。
リウ・サンジェが歌に込めたのは、勇敢で心優しい漁師ア・ニューへの愛です。二人は広西の谷あいに響き渡るように歌い交わし、そのデュエットは山々にこだまする恋の証しとなっていきました。しかし、二人の前には思わぬ障害が立ちふさがります。
歌合戦で不正に立ち向かうヒロイン
物語の中で、裕福で圧力をふるう地主がリウ・サンジェを見初め、側室にしようとします。それでも、彼女とア・ニューの愛は揺らぎません。強制に屈しないリウ・サンジェは、自らの知恵と歌の力を武器に、地主に立ち向かう道を選びます。
物語では、彼女は一連の歌比べで地主やその雇われ歌い手たちと勝負します。鋭く機知に富んだ歌詞で、彼らの欲深さや冷酷さをあぶり出し、人びとの前でその本性を暴いていきます。リウ・サンジェの歌は単なる恋の歌ではなく、不正への抗議の歌となり、村人たちが理不尽に立ち向かう勇気を与える存在として描かれます。
やがて脅しや報復の危険が高まると、リウ・サンジェはヒバリの姿へと変わり、空高く飛び去ったと伝えられています。彼女の物語は、広西の人びとの心に「勇気と抵抗の象徴」として刻まれています。
2025年の旅人が広西から受け取るメッセージ
2025年のいま、中国を訪れる旅行者にとって「ロマンチック」とは、必ずしも美しい景色や写真映えだけを意味しないのかもしれません。広西の物語は、愛がしばしば不正と向き合う力や、声を上げる勇気と結びついて語られてきたことを思い出させてくれます。
スペイン語のラブソング「ベサメ・ムーチョ」は、愛する人を失うかもしれないという不安を歌い上げます。一方、広西に伝わるリウ・サンジェの物語は、愛する人とともに尊厳を守ろうとする決意を描きます。言語も文化も異なる二つの物語が同じ土地で響き合うとき、「ロマンチックな中国」の新たな表情が立ち上がってきます。
「恋の名所」を超えた、物語としての目的地
ヨーロッパの大聖堂やラテンアメリカのダンスフロアと並んで、中国・広西チワン族自治区もまた、恋や自由、そして連帯の物語が息づく場所です。旅先を考えるとき、「どんな写真が撮れるか」だけでなく、「どんな物語がこの土地に編み込まれているのか」という視点を持ってみると、景色の見え方は少し変わるかもしれません。
スペインの観光客を迎えた一曲のラブソングと、リウ・サンジェの伝説。その交差点に立つとき、広西の風景は単なる絶景ではなく、歌と物語が息づく「恋の舞台」として立ち上がってきます。そうした目線を通じて国際ニュースや観光の話題を眺めてみると、世界との距離が少し近づいたように感じられるのではないでしょうか。
Reference(s):
Kiss me deeply in Guangxi: Exploring the romantic side of China
cgtn.com








