中国ドローンショーの舞台裏:数万機が飛ぶギネス記録はこうして生まれた video poster
春節のテレビ番組からアジア冬季競技大会まで、中国の夜空を彩るドローンライトショーは、いまや国際ニュースでもおなじみの光景になりました。ところが、わずか10年前には「SFの世界」としか思われていなかった演出です。本記事では、ギネス世界記録を打ち立てた中国のトップチーム・Damoda(ダモダ)を手がかりに、数万機のドローンが同時に飛び立つショーの仕組みと、その急成長の裏側を解説します。
春節とアジア大会が広めた「空のステージ」
中国のドローンショーが広く知られるようになったきっかけの一つが、春節(旧正月)の大型番組です。視聴率の高い春節のガラ番組で、ビル群の上空をドローンが舞台にした演出が繰り返し放送され、国内外の視聴者の記憶に刻まれました。
さらに、アジア冬季競技大会などのスポーツイベントでも、開会式や閉会式にドローンが投入され、炎や花火に代わる「静かで制御しやすい光の演出」として存在感を高めています。こうした大規模イベントを通じて、中国のドローンショーは、国や都市のイメージを発信する新しい手段になりつつあります。
Damodaが達成した「数万機」のギネス世界記録
その中でも注目されているのが、中国のトップドローンパフォーマンスチームの一つであるDamodaです。Damodaは2024年、数万機規模のドローンを同時に飛行させるショーを成功させ、ギネス世界記録を更新しました。
夜空一面に広がるドローンが、巨大な文字や立体的な図形、流れるようなアニメーションを次々と描き出す光景は、従来の花火とはまったく異なる「空のディスプレイ」です。観客は、都市のスカイラインそのものが一つのスクリーンになったかのような没入感を味わうことができます。
どうやって「数万機」を同時に飛ばすのか
では、Damodaをはじめとする中国のチームは、どのようにして数万機のドローンショーを実現しているのでしょうか。ポイントは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアと運用設計を一体でつくり込んでいることです。
1. 位置制御と「振付」を担うソフトウェア
ドローンショーの基盤となるのが、位置制御ソフトウェアです。各機体はGPSなどの測位情報と高度センサーを用いて、自分が空間のどこにいるのかを常に把握します。チーム側は、あらかじめ「どの時間に、どの座標に、どの機体がいるべきか」という振付データを作成し、それを数千〜数万台に同時配信します。
これにより、個々のドローンは自律的に動いているようでありながら、全体としては一つの巨大なピクセルアートのように振る舞います。数が増えるほど衝突リスクも高まりますが、進路が重ならないように計算された軌道設計と、リアルタイムの位置補正がそれを防ぎます。
2. 安全管理とリスク分散の仕組み
観客の頭上でドローンを飛ばす以上、安全管理は最優先事項です。運用チームは、飛行エリアの周囲に十分な立ち入り制限区域を設け、機体のバッテリー残量や通信状況をリアルタイムで監視します。
万が一トラブルが発生した機体があれば、その場で緊急着陸させる、あるいは安全な方向へ誘導するなどの対策が即座に取られるよう設計されています。単一のシステムにすべてを依存せず、複数のバックアップやフェイルセーフ(安全側に倒れる仕組み)を組み込むことで、大規模ショーのリスクを抑えています。
3. チーム運用と「現場力」
数万機規模のドローンショーでは、エンジニアだけでなく、オペレーター、保守担当、安全管理スタッフなど、多職種のチームが連携します。事前には、シミュレーションによるリハーサルと、小規模なテスト飛行を重ね、本番当日のトラブルをできるだけ減らします。
現場では、天候の急な変化や電波環境の揺らぎなど、想定外の要因も少なくありません。こうした「揺らぎ」に対処する現場力が、大規模ショー成功の鍵となります。
順風満帆ではなかったDamodaの歩み
Damodaがギネス世界記録を達成するまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。立ち上げ当初は、機体の安定性や通信の安定確保、ソフトウェアの不具合など、数多くの技術的課題に直面したとされています。
テスト飛行では、思ったように隊列が揃わない、光が途中で消えてしまう、といったトラブルも繰り返し経験しました。それでも、失敗のたびに原因を分析し、機体設計や制御アルゴリズムを見直すことで、少しずつ飛行可能な機体数を増やしていきました。
短期間での「躍進」の背景には、こうした地道な試行錯誤の積み重ねと、大規模プロジェクトに挑戦し続ける姿勢があります。
花火だけではない「夜空のエンタメ」へ
ドローンショーは、従来の花火に比べて、細かな形や文字、物語性のある演出を表現しやすいという特徴があります。環境負荷や騒音を抑えつつ、都市のランドマークや水辺などと組み合わせることで、新しい都市の夜の楽しみ方を提案しています。
中国では、地域の祭りや観光イベントなど、身近な場面でもドローンショーが活用され始めており、技術とカルチャーが結びつく事例として注目されています。
これからの課題と可能性
一方で、大規模ドローンショーが増えるほど、空域の管理やプライバシー、安全基準づくりなど、社会的な議論も重要になります。自治体やイベント主催者、技術者が連携し、安心して楽しめるルールづくりが求められます。
テクノロジーの面では、より省エネな機体や、気象条件に柔軟に対応できる制御技術、観客のスマートフォンと連動するインタラクティブな演出など、新しいアイデアの余地も大きい分野です。
2025年の今、ギネス世界記録級のショーはまだ特別な存在ですが、10年前には想像もしなかった「空のエンターテインメント」が、これからどのように日常の風景に溶け込んでいくのか。Damodaのような先行チームの挑戦は、その未来を先取りして見せているともいえます。
Reference(s):
Ten Thousand Take Flight: How Does China Pull Off These Drone Shows?
cgtn.com







