中国の商業宇宙がnew quality productive forcesに 衛星と再使用ロケットの今 video poster
中国の商業宇宙産業が、中国政府の掲げる new quality productive forces(新質の生産力)の一角として、政策面でも産業面でも存在感を高めています。本記事では、政府活動報告のメッセージと、衛星コンステレーションや再使用ロケットを巡る最新の動きを整理します。
この記事のポイント
- 商業宇宙が new quality productive forces の一つとして政府活動報告に明記された
- 衛星企業 Galaxy Space がサプライヤーを約100社から1300社超へと拡大
- 再使用ロケットやLEOコンステレーション開発が進み、Starlink との競争も意識されている
政府活動報告が示した商業宇宙重視の流れ
中国では、政府の中長期方針を示す政府活動報告の中で、商業宇宙分野が new quality productive forces の一つとして位置付けられました。商業宇宙がこの文脈で名指しされたのは2回目で、中国が新たな成長エンジンとして同分野を重視していることがうかがえます。
北京で開かれた第14期全国人民代表大会(全人代)第3回会議の開幕式で、李強・中国国務院総理は、各地域の実情に応じて new quality productive forces を育成し、新興産業を発展させる方針を示しました。その中で、商業宇宙や低空経済などの新産業について、安全かつ健全な発展を促進すると述べています。
new quality productive forcesとは何か
new quality productive forces という概念は、2023年に初めて打ち出されました。従来型の成長モデルや生産性向上のルートから一歩踏み出し、高い技術力と効率、品質を備えた先端的な生産力を指します。
- 高い技術力
- 高い生産効率
- 高い品質
人工知能(AI)、ビッグデータ、新素材などがその代表例とされており、今回そこに商業宇宙や低空経済といった新興産業が本格的に加わりつつあります。
2014年以降広がる商業宇宙の産業チェーン
商業宇宙の産業チェーンづくりが本格化したのは2014年以降とされています。この間に、ロケット、衛星、地上設備などの分野で民間企業が台頭し、リーディングカンパニーが産業全体をけん引する構図が見えてきました。
こうした企業は、自社の成長にとどまらず、自動車や機械加工といった地上産業のサプライヤーを宇宙分野へと呼び込み、異業種にまたがる生産能力の底上げと産業の裾野拡大を生み出しています。
Galaxy Space:衛星コンステレーションが開く新市場
北京に拠点を置く衛星企業 Galaxy Space は、その象徴的な存在です。2018年に設立された同社は、短期間で事業を拡大し、それに伴って協力企業も急増しました。サプライヤーの数は、設立当初の約100社から現在は1300社超へと広がっています。
共同創業者の劉暢氏によると、これらの企業の多くはもともと自動車産業や機械加工など地上向けの製品だけを手がけていました。しかし Galaxy Space が商業宇宙分野に参入し、産業自体が成長する中で、サプライチェーンのパートナーにとって新たな宇宙市場が開かれたといいます。
Galaxy Space は、最近開かれた民営企業をテーマにした座談会にも出席しており、商業宇宙分野からの唯一の参加企業となりました。これは、宇宙ビジネスが中国の新たな成長分野として政策議論の場でも存在感を増していることを示しています。
Starlinkとの競争:衛星技術は同じ土俵に
商業宇宙の「スター」企業としてしばしば比較されるのが、米スペースXの衛星インターネット網 Starlink です。中国では2014年の商業宇宙活動の商業化以降、多くの企業が「Starlink のライバル」を名乗り、独自の衛星コンステレーション(多数の小型衛星を組み合わせたネットワーク)の構築を目指してきました。
スペースXが主力ロケット「ファルコン9」で1回の打ち上げあたり二桁台の衛星を展開し、超大型ロケット「スターシップ」の試験飛行も重ねているのに対し、中国では再使用ロケットによる初の軌道投入はまだ実現していません。一方で衛星産業はより準備が整っているとされ、劉氏は Starlink を「極めて競争力のあるライバル」と認めつつ、自社の衛星技術は「同じ技術的スペクトルの中で Starlink に匹敵する」と自信を示しています。
再使用ロケットの鍵を握るVTVL試験
打ち上げコストの大幅な低減に向けては、ロケットの再使用技術が欠かせません。2024年には、中国で再使用ロケットを使った高度10キロメートルの垂直離着陸(VTVL)試験が2回実施されました。そのうち1回は、民間ロケット企業 LandSpace によるもので、民間企業としては初めて同高度のVTVL試験を成功させた例となりました。
VTVL試験は、ロケットを打ち上げた後に制御して回収し、安全に着陸させるための重要な技術検証です。軌道投入前の段階でこの技術を固めることで、本格的な再使用ロケットの実用化に近づきます。安定した打ち上げと輸送が可能になれば、衛星1基あたりの打ち上げコストは大きく下がると見込まれています。
2024年に中国・珠海市で開かれた中国国際航空宇宙博覧会(エアショー・チャイナ)では、多くの商業宇宙企業が自社の再使用ロケットの模型を展示し、2025年の初打ち上げに向けた目標を掲げました。実際の軌道投入までには技術と認可の両面でハードルが残るものの、民間主導の開発競争が加速していることがうかがえます。
LEOコンステレーションと制度支援
劉氏は、中国政府による宇宙インフラへの継続的な支援が、低軌道(LEO)衛星コンステレーション構築の認可プロセスを加速していると指摘します。制度面での後押しがあることで、中国のメガコンステレーション(多数の衛星から成る巨大ネットワーク)の展開スピードが上がっているという見方です。
new quality productive forces の議論と結びつけてみると、宇宙インフラは単なるハイテク産業ではなく、通信、観測、物流など他分野のデジタル化を支える基盤として位置づけられていることが分かります。商業宇宙の成長は、地上の産業構造やサプライチェーンにも波及していく可能性があります。
日本の読者にとっての意味
中国の商業宇宙と new quality productive forces をめぐる動きは、日本を含む周辺国のビジネスやテクノロジー政策にも影響し得ます。打ち上げコストの低下と衛星ネットワークの拡大は、インターネット接続や災害監視、海上輸送の最適化など、多くの分野で新しいサービスを生む土台になるからです。
同時に、国家レベルの長期戦略と民間企業のイノベーションをどう組み合わせるのかは、日本を含む各国が共通して直面するテーマでもあります。中国の事例をフォローすることは、宇宙ビジネスだけでなく、自国の産業政策やスタートアップ支援を考えるうえでのヒントにもなりそうです。
Reference(s):
China's commercial space emerges as new quality productive forces
cgtn.com







