北京の「暖心ラウンジ」 宅配クーリエを支える小さな休憩所 video poster
2024年、中国の宅配便取扱個数は年間1700億個という桁違いの水準に達しました。その膨大な荷物を支えているのが、街を走り回るクーリエやフードデリバリーの配達員たちです。北京では、そうした人たちがほっと一息つける「暖心ラウンジ」が注目を集めています。
1700億個の荷物を動かす「新しい働き手」たち
中国の急速な電子商取引の拡大に伴い、クーリエ、フードデリバリー配達員、配車アプリのドライバーなど、アプリを通じた「新就業形態」が一気に広がりました。彼らの存在がなければ、1700億個という宅配便の数字は成り立ちません。
一方で、移動しながら働く彼らは、オフィスや休憩室を持たないことがほとんどです。長時間の運転や配達、天候の変化、時間との競争など、肉体的にも精神的にも負担が大きい働き方だと言われます。そのため、近年はこうした人々の権利や健康をどのように守るかが、中国全体の重要な課題となってきました。
北京・建国門サブディストリクトの「暖心ラウンジ」とは
北京市中心部の建国門街道では、地元政府がクーリエ向けの「暖心ラウンジ」を設置しています。ここは、配達の合間に立ち寄り、休憩したり、充電したりできる小さなコミュニティスペースです。
ラウンジには、椅子やテーブルなどの基本的な休憩設備が整えられ、仕事の合間に温かい飲み物を飲んだり、スマートフォンの電池を回復させたりしながら、しばし体を休めることができます。移動中に短時間でも安心して腰を下ろせる場所があることは、クーリエたちにとって大きな支えになります。
現地を訪れたメディアの取材に対し、クーリエたちは、こうしたラウンジがあることで「落ち着いて休める」「次の配達に向けて気持ちを切り替えやすい」といった声を寄せています。単なる物理的なスペース以上に、社会からの「気にかけられている」という感覚が働く意欲につながっているといえます。
なぜ「休む場所」が権利保護につながるのか
クーリエや配達員のような働き方は、自由度が高い一方で、長時間労働や安全面のリスク、孤立感など、見えにくい課題も抱えています。休憩施設の整備は、その一部に光を当てる試みです。
- 疲労の軽減と事故防止につながる
- 体調不良時に一時的に避難できる場所を確保できる
- 同じ仕事をする仲間同士が情報交換や悩みの共有をしやすくなる
- 行政が現場の声を直接聞くきっかけになる
こうした小さな積み重ねが、労働環境全体の改善につながっていくと考えられます。特に、街の至るところで働いている人たちにとって、「どこかに必ず自分の居場所がある」という安心感は、想像以上に重要です。
近年の中国で強まる「新就業形態」へのまなざし
クーリエや配達員、配車アプリのドライバーなどの権利と福祉を守ることは、ここ数年、中国における全国的な優先課題となっています。働き手の数が増え、社会にとって不可欠な存在となるなかで、労働時間の管理、安全対策、社会保障へのアクセスなど、多くのテーマが議論されています。
建国門の「暖心ラウンジ」は、そうした議論を現場レベルで具体化した取り組みの一例といえます。制度や法律だけでなく、実際に仕事をしている場所に近いところで、休憩所や相談窓口を整えることが、働きやすさの向上につながっていきます。
日本にとっての示唆:街に「小さなセーフティネット」を増やす
日本でも、ネット通販やフードデリバリーの利用は日常の風景になりつつあります。荷物や食事が時間通りに届くことを当たり前のように受け止めがちですが、その裏には多くの移動型の働き手がいます。
北京の「暖心ラウンジ」のように、街のなかに誰でも立ち寄れる小さな休憩拠点を増やしていくことは、今後の都市づくりにおいて一つのヒントになりそうです。コンビニや公共施設、行政の窓口など、さまざまなスペースを組み合わせながら、「移動しながら働く人に優しい都市」をどうデザインするかが問われています。
2025年の今、私たちがオンラインで注文ボタンを押すその瞬間、どこかの街角でクーリエが短い休憩を取り、次の配達へと向かっているかもしれません。北京の小さなラウンジは、そんな日常の裏側にある労働とケアのあり方を、静かに問いかけています。
Reference(s):
Beijing's warm-hearted lounge offers respite for couriers in the city
cgtn.com








