北京で影絵とデジタルが融合 穆桂英を描くインスタレーション
中国・北京で、伝統的な影絵芝居とデジタル技術を組み合わせたインスタレーション作品が、女英雄・穆桂英(ムー・グイイン)の「鎧を着る前の素顔」を描き出しています。中国文化や現代アートに関心のある読者にとって、注目したい中国ニュースです。
鏡の前で支度する穆桂英──「Shadow Lamp: In Front of the Mirror」
この作品「Shadow Lamp: In Front of the Mirror」は、中国のアーティスト・李寒萱(Li Hanxuan)さんが制作したインタラクティブなインスタレーションです。北京市中心部の南池子美術館で開かれている、3カ月間の企画展「Dian Xi Yi Ben – Shadow Puppetry and Contemporary Art Exhibition」で展示されています。
古典的な影絵芝居の技法と、現代のデジタル技術が組み合わさり、物語世界を体験できる空間になっています。観客の前に現れるのは、戦場に向かう前、鏡の前で身支度を整える若き穆桂英の姿です。
鎧を身にまとう前の一瞬、髪を整え、衣を直すその時間は、「英雄」になる前のごく個人的なひとときでもあります。作品は、その親密な場面を切り取り、「女英雄の背後にある少女の心」をそっと見せるような構成になっています。
古典影絵「Mu Guiying Takes Command」を物語の軸に
インスタレーションは、古典的な影絵芝居「Mu Guiying Takes Command」を物語の枠組みとして用いています。タイトルが示す通り、穆桂英が活躍する物語を描いた影絵芝居です。
ここで描かれるのは、華やかな戦場の場面ではなく、その前にある静かな時間です。観客が目にするのは、戦いの栄光でも壮烈な場面でもなく、その直前にある静けさと揺らぎです。
英雄としての強さと、若い女性としての繊細さ。その両方が同じ人の中に共存していることを、影と光のコントラストを通じて感じ取らせる試みだと言えるでしょう。
民間伝承の女英雄が象徴してきたもの
穆桂英は、中国の民間伝承「Generals of the Yang Family Legends」に登場する代表的な女英雄です。その勇気と知恵あふれる活躍は、長い年月にわたって語り継がれ、多くの人びとを励ましてきました。
中国文化のなかで穆桂英は、困難に屈しない、揺るがない女性像の象徴とも見なされてきました。一方で、そうした象徴的な「強さ」のイメージが前面に出るほど、個人としての感情や弱さは物語の陰に隠れがちでもあります。
このインスタレーションは、まさにその「陰に隠れた部分」に光を当てる試みです。英雄である前に一人の若い女性であること、その当たり前でありながら見落とされがちな側面を、観客に静かに意識させます。
展覧会「Dian Xi Yi Ben」で浮かび上がるテーマ
「Shadow Lamp: In Front of the Mirror」が展示されている「Dian Xi Yi Ben – Shadow Puppetry and Contemporary Art Exhibition」は、その名の通り、影絵芝居と現代アートの関係に焦点を当てた展覧会です。会場となっている南池子美術館は、北京の中心部に位置しています。
影絵芝居という伝統とデジタルを含む現代アートを結びつけることで、
- 物語の新しい見せ方
- 観客との新しい関わり方
- 歴史的人物像の新しい読み解き方
といった視点が生まれています。「Shadow Lamp: In Front of the Mirror」は、その代表的な例として、特に女性像の描き方に新しい問いを投げかける作品だと言えるでしょう。
「読みやすいのに考えさせられる」作品として
今回紹介したインスタレーションは、難しい専門知識がなくても、視覚的な美しさと分かりやすい設定で楽しめる作品です。同時に、伝統と現代、強さと繊細さ、公の顔と個人的な時間といったテーマについて、じっくり考えるきっかけも与えてくれます。
中国の影絵芝居や民間伝承に興味がある人はもちろん、ジェンダーや表現、テクノロジーとアートの関係に関心のある人にとっても、日常の会話やSNSで共有したくなるトピックになるニュースと言えるでしょう。
Reference(s):
Interactive installation presents the girlish heart behind the heroine
cgtn.com








