北京・南池子ミュージアム 胡同に隠れた「蘇州庭園」
北京・紫禁城の東華門のすぐそば、細い路地の奥に「Nanchizi Museum(南池子ミュージアム)」という庭園型の美術館があります。北京伝統の四合院の構造に、蘇州式の庭園美を取り入れた、少し不思議で静かな空間です。
紫禁城のすぐ脇、胡同に隠れた庭園ミュージアム
Nanchizi Museumは、北京中心部でもとくに観光客でにぎわう紫禁城・東華門のすぐ近くに位置しています。にぎやかな大通りから南池子の路地に入り、奥へ進むと、その喧騒から切り離されたような一角にたどり着きます。
外から見ると周囲の街並みに溶け込んだ建物ですが、中に足を踏み入れると、庭と建物が一体となった「庭園美術館」としての表情が現れます。
構造は北京の四合院、姿は蘇州式庭園
この美術館は、「北京スタイルの庭園美術館」として設計されています。建物の基本構造は四合院と呼ばれる伝統的な中庭住宅で、四方を建物が囲み、その中心に中庭が配されたつくりです。一方で、その中庭部分は蘇州式の庭園を思わせる構成になっています。
四合院がつくる、囲われた落ち着き
四合院は、外に対しては壁を立て、内側に向かって開かれる構造が特徴です。都市の中にありながら、門をくぐると音や視線がやわらぎ、家族や来客が集う生活の場が広がるように設計されています。北京の歴史や生活文化を象徴する空間でもあります。
蘇州式庭園がもたらす、動きのある景色
一方の蘇州式庭園は、限られた敷地の中に池や石、植栽、廊下、あずまやなどを組み合わせ、歩くごとに景色が変わるように計算された庭園様式です。視線の抜け方や建物とのつながりを工夫することで、小さな空間の中に奥行きや物語性を生み出します。
Nanchizi Museumは、この二つの要素を重ね合わせることで、北京という都市の中で、もう一つの地域の空気を感じさせる場所になっています。
北京の中に現れた「一片の蘇州」
北方の大都市・北京の中心部に、江南の町・蘇州を思わせる庭園がひっそりと存在する──そんなイメージから、この場所は「胡同に隠れた一片の蘇州」と表現されます。異なる地域の文化や美意識が一つの敷地の中で出会う点が、大きな特徴です。
都市空間という視点で見れば、Nanchizi Museumは次のような問いを投げかけているようにも感じられます。
- 歴史ある中心市街地の中で、静かな余白をどのようにつくるか
- 地域ごとの建築様式や庭園文化を、現代の都市生活にどう生かすか
- 観光と日常が混じり合うエリアで、どのように新しい体験を形にするか
都市を読むための、小さなヒント
2025年の今、アジアの大都市では、歴史的な街並みを残しながら新しい文化施設を生み出す動きが各地で見られます。Nanchizi Museumのように、伝統的な住宅構造と別地域の庭園文化を組み合わせた試みは、その一つの形と言えます。
北京を含むどの都市でも、賑やかな通りのすぐ裏側に、思いがけない静けさや異なる文化の気配が潜んでいることがあります。ニュースや地図だけでは見えてこない都市の表情を想像するとき、南池子の路地に隠れたこの小さな庭園ミュージアムは、私たちに新しい視点をそっと手渡してくれる場所かもしれません。
Reference(s):
Nanchizi Museum, a slice of Suzhou hidden in a Beijing alleyway
cgtn.com








