中国がIAEAで核協力を強調 イラン核合意10年と福島の核汚染水監視
ウィーンで開かれている国際原子力機関(IAEA)理事会で、中国代表の李松(Li Song)常駐代表が、グローバルサウスへの核エネルギー協力と主要な核問題への対応について中国の立場を示しました。福島第一原発の核汚染水放出への監視強化と、イラン核問題をめぐる対話の再活性化が、2025年の国際ニュースとして改めて焦点になっています。
IAEA理事会で示された中国の三つのメッセージ
今回の発言で、中国は大きく次の三点を打ち出しました。
- グローバルサウスに対する核エネルギー・核技術協力の強化
- 日本・福島第一原発の核汚染水放出に対する国際監視の強化
- イラン核問題での対話と外交努力の再強化
グローバルサウスへの核エネルギー協力
李代表は、中国が持つ原子力発電や核技術の強みを生かし、IAEAとの協力を通じて「グローバルサウス」の国々に貢献していくと述べました。ここでいうグローバルサウスとは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興国・途上国を含む広い概念です。
中国にとって、原子力は次のような戦略的役割を持つと強調しています。
- エネルギー安全保障を支える柱
- 気候変動対策の重要な選択肢
- カーボンピークとカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)目標の達成に向けた手段
また、中国は核技術応用産業の育成にも力を入れており、2026年までに年間4,000億元(約557億9,000万ドル)規模の経済効果を目指すとしています。医療、農業、産業分野などでの放射線利用や関連技術の広がりも視野に入れているとみられます。
福島第一原発の核汚染水監視を強調
主要な核問題への対応として、李代表は、日本の福島第一原発からの核汚染水放出を取り上げました。中国は、IAEAによる監視体制の強化を支持しつつ、自らも独立した採取と検査を続ける方針を示しています。
李代表は、日本に対して次の点を求めました。
- これまでの約束を着実に履行すること
- 中国を含む影響を受け得る国々が、引き続き独立したサンプリング(採取)とモニタリングを行えるようにすること
- 核汚染水の放出が、厳格な国際的監視の下に置かれ続けること
福島第一原発の処理水問題は、日本国内だけでなく周辺国や地域の関心事であり、環境保護や食の安全に敏感な読者にとっても、引き続き注目すべき論点といえます。
イラン核問題:JCPOA10年目の「岐路」
イラン核問題について、李代表は「重要な岐路にある」と指摘しました。2025年は、イラン核合意として知られる包括的共同行動計画(JCPOA)の締結から10年の節目の年です。
李代表は、合意とその交渉プロセスが示した教訓として、「イラン核問題に対処する唯一適切な方法は、政治的・外交的手段による対話と協力である」と強調しました。
イランは、自国の核計画は平和目的であり、核兵器の開発は目指していないと繰り返し表明してきました。また、IAEAとの協力や協議に応じる姿勢も示しています。中国はこれを重視し、イランがIAEAとの保障措置協力を一層強化し、残された懸案の解決に努めることを支持・後押しするとしています。
米国と欧州に求められる役割
李代表は、イラン核合意をめぐる最大の「かく乱要因」として米国を名指しし、合意をめぐる国際的な外交努力に再び実質的に関与するよう求めました。イランとの直接対話を開始し、対立を深めるのではなく、協議を進めるべきだという立場です。
また、中国は、フランス・英国・ドイツのE3と欧州連合(EU)に対しても、イランとの対話を維持するよう呼びかけました。特に、
- 緊張をエスカレートさせる挑発的な行動を避けること
- 平和的な解決と交渉の促進に焦点を当てること
が重要だとしています。イラン核問題は、中東地域の安定だけでなく、エネルギー市場や国際安全保障全体にも影響するテーマであり、日本を含む多くの国・地域にとって利害の大きい問題です。
2025年の国際ニュースとしての意味
今回のIAEA理事会での中国のメッセージは、エネルギー、気候変動、安全保障という三つの大きな課題が一つの場で交差していることを改めて示しました。
- 原子力をどう位置付けるか:脱炭素とエネルギー安全保障の両立に向けた選択肢として
- 核のリスクをどう管理するか:福島第一原発の核汚染水やイラン核問題に対する国際的な監視と対話の枠組み
- 多国間協調をどう立て直すか:JCPOA10年目に問われる、米国・欧州・イラン・中国など関係国の責任
日本の読者にとっては、自国の原発問題が国際会議の場でどのように語られているのか、またイラン核合意をめぐる動きがエネルギー市場や地域情勢にどう跳ね返ってくるのかを考えるきっかけにもなります。
核エネルギーを「危機」と「機会」のどちらに近づけるのか。その答えは、各国の外交と国内政策、そして国際機関を通じた協力の在り方にかかっています。IAEAを舞台にしたこうした発言の積み重ねが、今後の交渉とルール作りにどう反映されていくのか、引き続き注視する必要がありそうです。
Reference(s):
China backs nuclear cooperation, calls for stronger Iran talks
cgtn.com







