中国と米国の若者が語る「相互利益」 CGTN世論調査が映す両国関係の今
中国と米国の若い世代は、対立よりも「相互尊重」と「相互利益」を重視しているーーそんな傾向が、CGTNと中国人民大学が実施した最新の世論調査で浮かび上がりました。
米中関係の緊張が報じられる一方で、18〜45歳の回答者たちは、経済やテクノロジー、文化交流の分野で「協力の余地は大きい」と考えています。本記事では、調査結果のポイントを日本語でわかりやすく整理します。
王毅外相「両国は長く共存する、だから平和的共存を」
中国の王毅外相は、北京で開かれている全国両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)の期間中に行われた記者会見で、次のように語りました。
「現在、世界最大の発展途上国と最大の先進国である中国とアメリカは、長く同じ地球に存在し続けます。だからこそ、平和的に共存しなければなりません」と述べ、相互尊重と互恵の重要性を強調しました。
今回のCGTNの世論調査は、まさにこの発言を裏付けるような結果となりました。中国とアメリカの双方で、多くの人が「相互尊重」と「相互利益」を両国関係のキーワードとして挙げています。
調査の概要:両国18〜45歳、計4003人にオンライン調査
調査は、中国国際テレビ局のCGTNと中国人民大学の新時代国際伝播研究院が共同で実施しました。中国とアメリカの18〜45歳の男女、合計4003人を対象に行われています。
アメリカ側は50州と首都ワシントンD.C.を網羅し、中国側も北京、上海、広州、成都、西安など16の大都市をカバーしています。都市部の若い世代の認識を切り取ったデータといえます。
経済・貿易問題のカギは「相互利益」
米中関係で大きな焦点となってきたのが、関税をめぐる摩擦や貿易不均衡の問題です。王毅外相は会見で、「関税戦争や貿易戦争で、アメリカは何を得たのか」と問いかけ、物価や競争力への影響を指摘しました。
こうしたなかで、調査に回答した人たちは、経済・貿易問題の根本的な解決策として「相互利益」を重視しています。
- 中国の回答者の87.3%が「相互利益こそが経済・貿易問題の基本的な解決策」と回答
- アメリカの回答者でも78.5%が同じ見方を示した
また、中国とアメリカは広範な共通利益と協力の余地を持ち、「共に成功し、共に繁栄するパートナーになりうる」との見方に対しては、中国側で98.2%、アメリカ側でも92.6%が強く同意しています。数字だけを見ると、両国の若い世代は、対立よりも「ウィンウィンの関係」を望んでいることがわかります。
「競争か協力か」ではなく「競争も協力も」
米中の経済・貿易関係の性格についても、両国ともに「競争と協力が共存する」と考える人が多数派でした。
- 中国の回答者の66.4%が「協力と競争の両方がある」と回答し、「競争が中心」と見た人は17.7%
- アメリカでは43.1%が「協力と競争の共存」と答え、「競争的な関係」とした人は22.7%
両国ともに「競争はあるが、切り離せない相互依存関係でもある」という現実的な見方をしていることが伺えます。構造的な対立を過度に恐れるのではなく、「冷静に受け止め、対話など適切な手段で解決すべきだ」という意見も多く示されています。
得意分野の自己認識:テックと製造で補完関係
興味深いのは、中国とアメリカの回答者が、お互いの「強み」をかなり冷静に見ている点です。
中国の回答者:アメリカはバイオや宇宙で優位
- バイオテクノロジーの分野で、アメリカが中国より優位と見た人:68.9%
- 人工知能(AI)でアメリカ優位:43.0%
- 宇宙開発でアメリカ優位:38.7%
最先端の基礎研究や宇宙探査など、長年の投資が必要な分野でアメリカを高く評価していることがわかります。
アメリカの回答者:中国は製造や電子機器で強い
- 製造技術で中国がアメリカより優れている:52.9%
- 家電やスマートフォンなどの消費者向け電子機器で中国優位:44.9%
- 人工知能で中国優位:43.0%
日常的に使う電子機器や製造分野での中国の存在感を、アメリカの回答者も強く認識していると言えます。AIについては、両国がお互いを「強い」と評価している点も象徴的です。テクノロジー分野での競争が激しい一方で、補完し合える余地もあることを示しています。
若者が望む協力分野:AIからクリーンエネルギーまで
将来の米中関係で、どの分野の協力を深めたいかという問いに対しては、両国の若者の関心が少しずつ違う方向を向いていました。
中国の若者が重視する分野
- 人工知能(AI):54.0%
- 電子商取引(Eコマース):41.5%
- ヘルスケア・医療:38.1%
デジタル経済や医療など、生活と直結する成長分野での協力に期待が集まっています。
アメリカの若者が重視する分野
- 製造業:53.0%
- クリーンエネルギー:36.4%
- 環境保護:33.2%
自国の産業基盤の強化と同時に、気候変動など地球規模の課題に対する協力を求める声が目立ちます。両国の関心の方向性は異なりつつも、結果として「デジタル」と「グリーン」という、現在の世界経済の二つの大きな柱に収れんしている点は注目に値します。
ポップカルチャーとSNSがつなぐ若い世代
調査では、両国の若者が「互いの価値観や関心には思った以上に共通点がある」と感じていることも示されました。
- 中国では76.8%、アメリカでは80.7%が「両国の若者は共通の価値観や関心を持っている」と回答
- 中国側79.6%、アメリカ側75.6%が「ポップカルチャーは相互理解を深める有効な手段」と評価
アメリカの回答者は、中国のSNSプラットフォームやアニメーション、ゲーム、映画・ドラマ、ファッションなどに強い関心を示しています。中国の若者の間でも、アメリカの映画、音楽、ドラマが広く受け入れられており、エンターテインメントを通じたソフトな交流が進んでいる様子がうかがえます。
求められる交流のかたち:共同研究から語学学習まで
では、具体的にどのような形の交流が望まれているのでしょうか。
中国の若者の希望
- 共同研究プロジェクトの実施:49.4%
- SNSなどソーシャルメディアでの交流強化:47.9%
- 学生交換プログラムの拡充:43.4%
アメリカの若者の希望
- 共同研究プロジェクト:39.9%
- 文化交流の機会を増やすこと:39.7%
- 言語学習(中国語・英語)の機会拡大:37.7%
両国とも「現場で一緒に取り組む共同研究」への期待が最も高く、その次に文化体験やオンライン交流、語学学習といった、相手を深く理解するための手段が続いています。単発のイベントではなく、継続的なプロジェクトや学びの場が求められていると言えるでしょう。
日本からどう見るか:米中の「若者世論」が示すもの
今回の調査結果からは、米中関係をめぐる政治的な緊張とは裏腹に、両国の若い世代が「対話」と「協力」を重視している姿が見えてきます。
- 相互尊重と相互利益を重んじる姿勢
- 競争を前提としつつも、協力の余地を認める現実感覚
- ポップカルチャーやSNSを通じた柔らかな交流への期待
日本にとっても、中国とアメリカはともに重要なパートナーです。両国の若い世代が、気候変動やテクノロジー、保健医療といった共通の課題に向き合う中で、日本の若者や企業、研究機関がどのように関わっていくのかも、これからの大きなテーマになっていきます。
対立か協力かという二者択一ではなく、「競争しながら協調する」という、やや複雑な関係の中で何ができるのか。今回の米中の若者世論は、その問いを静かに投げかけているように見えます。
Reference(s):
CGTN Poll: China, U.S. youths value mutual benefit in bilateral ties
cgtn.com








