ガール:西蔵に残る最後の宮廷舞踊を守り続ける70年の物語 video poster
国際ニュースとしての文化の動きを追うとき、一つの踊りが語る物語は意外と大きな意味を持ちます。西蔵に唯一残る宮廷舞踊「ガール(Ga'er)」と、それを70年以上守り続けてきた文化伝承者タシ・ツェリンさんの歩みは、伝統をどう次世代につなぐかを静かに問いかけています。
西蔵に唯一残る宮廷舞踊「ガール(Ga'er)」
ガール(Ga'er)は、西蔵に伝わる宮廷舞踊であり、「西蔵で唯一生き残った宮廷舞踊」とされています。優雅なメロディーとしなやかな身のこなしが特徴で、その音楽と動きは、宮廷文化の雰囲気を今に伝えています。
華やかさよりも、静かな品格とリズムの美しさが際立つガールは、長い時間を経てもなお、人々に強い印象を残す舞踊です。
ポタラ宮の舞踊団と文化伝承者タシ・ツェリンさん
このガールの伝承の中心にいるのが、ポタラ宮の舞踊団に所属する文化伝承者、タシ・ツェリンさんです。タシ・ツェリンさんは、70年以上にわたってガールの継承に力を尽くしてきました。
長い年月のあいだ、舞台に立ち続けるだけでなく、動きや所作、歌のニュアンスを若い演者たちに伝え、途切れかけていた宮廷舞踊の記憶をつないできた存在だと言えます。
「70年以上」という時間の重み
一つの芸を70年以上守り続けるというのは、単なるキャリアの長さ以上の意味を持ちます。社会や暮らしが大きく変わっていくなかで、同じ踊りと向き合い続けることは、自分の人生そのものを文化に捧げることでもあります。
タシ・ツェリンさんの歩みは、伝統芸能が「過去のもの」ではなく、人の選択と努力によって現在も生き続けていることを示しています。
歌と言葉を記録する、新しい継承のかたち
現在、タシ・ツェリンさんは、ガールにまつわる歌や歌詞を丹念に記録し、その遺産を若い世代に手渡そうとしています。舞台で踊ることに加え、「残す」「書き留める」という行為そのものが、継承の大切な手段になりつつあります。
歌と言葉を記録することには、次のような意味があります。
- メロディーや歌詞を正確な形で未来に残すことができる
- 若い世代が時間や場所にとらわれず、学びやすくなる
- 失われつつあった表現を見直し、新しい表現や創作につなげられる
口伝えだけに頼らず、記録として残すことで、ガールは個人の記憶から「共有できる文化」へと広がっていきます。
スマホ世代と伝統文化:私たちへの問い
オンラインでニュースや動画を日常的にチェックする私たちにとって、遠く離れた西蔵の宮廷舞踊は、どこか別世界の話に見えるかもしれません。しかし、ガールを守る試みは、デジタル時代を生きる私たち自身の暮らしともつながっています。
タシ・ツェリンさんがしていることは、形こそ違っても、私たちがSNSで写真や出来事を記録し、共有する行為とどこか似ています。「忘れたくないものを、次の世代に残したい」という思いは、場所や世代を超えて共通するからです。
もし自分の身の回りの文化を守るとしたら、どんなことができるでしょうか。例えば、次のような小さな一歩から始めることができます。
- 自分の地域の踊りや祭り、昔話について、家族や年長者に話を聞いてみる
- 印象に残った文化や歴史のエピソードを、X やInstagramなどで言葉にして共有してみる
- 旅行や留学の際、その土地の伝統芸能を一つだけでも観てみる
こうしたささやかな行動も、文化を次の世代につなぐ力になります。
おわりに:一つの舞踊が伝える静かなニュース
西蔵に唯一残る宮廷舞踊ガールと、それを守り続けるタシ・ツェリンさんの物語は、派手な見出しこそありませんが、国際ニュースとしてじっくり味わう価値のあるテーマです。
大きな出来事の陰には、必ずこうした静かな努力があります。ガールの優雅なメロディーと動きの背景にある「受け継ぐ」という行為に目を向けることは、私たちがこれからの世界で何を大切にしていくのかを考えるきっかけにもなるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








