中国で給食費汚職が波紋 反腐敗は医療・農村・スポーツへ拡大
中国本土で学生の給食費を巡る汚職事件が明るみに出たことをきっかけに、教育、医療、農村、スポーツ、葬祭サービスなど生活に密着した分野での反腐敗の取り組みが一段と加速しています。
給食費のキックバック事件が投げかけた衝撃
2025年1月初めに中国メディアグループ(China Media Group、CMG)が放送した特別ドキュメンタリー「人民のための反腐敗(Anti-Corruption for the People)」は、中国本土の視聴者に大きな衝撃を与えました。
番組が取り上げたのは、吉林省長春市の第七小学校で後勤部長を務めていたチー・シグオ(Qi Shiguo)氏の事案です。チー氏は吉林ゴルフ・ケータリング・マネジメント社(Jilin Golf Catering Management Company)と結託し、生徒の給食費からキックバックを受け取る形で、公金を横領していたとされています。
当初、給食1食あたり8元(約1.12ドル)のうち0.1元がキックバックとして支払われ、2014年に給食費が12元に引き上げられると、キックバックも0.3元に増額されました。一見するとわずかな金額ですが、2010年8月から2019年12月までの9年以上にわたり続いた結果、横領された給食費は合計70万元を超え、そのうちチー氏個人が受け取った額は23万元以上に達しました。
学生の食事をめぐる不正に全国的な注目
子どもの食事に充てられるはずの給食費が不正に流用されていた事実は、保護者や市民の強い反発を呼びました。こうした懸念に対応するため、国家監察委員会(National Commission of Supervision、NCS)は2024年、各級の監察・司法機関を指導し、学生の給食費の横領や入札・調達への不当な介入、キックバックの受領などに関する3万8,000件の事案を調査・解決しました。その結果、2万3,000人が処分を受けています。
全人代報告が示す「生活密着型」腐敗への警戒
第14期全国人民代表大会(全人代)の会期中に提出された最高人民法院(Supreme People's Court、SPC)と最高人民検察院(Supreme People's Procuratorate、SPP)の報告も、生活に密着した分野での腐敗を重点的な問題として取り上げました。SPPのデータによると、医療、教育、雇用など国民生活に直結する分野における汚職の起訴件数は、前年度と比べて2024年には1.6倍に増加したとされています。
農村の集団資産から医療まで、広がる取締り
農村の集団資金や資産、土地や資源の管理をめぐる腐敗も、重要なターゲットとなっています。NCSは2024年、農村の集団資金・資産・資源の横領や違法処分に関する15万3,000件の事案の捜査を指導し、13万2,000人が処分を受けました。
医療分野の腐敗は、医療費の水準や医師と患者の信頼関係にも影響するため、国民の不満の大きな要因となってきました。2024年には、医療関連の不正に関わった約4万人が規律処分を受け、うち2,634件の重大な違反事案が検察当局に送致されています。
医療保険部門は、こうした取り組みを通じて不正に支出された医療関連資金約242億人民元(24.2 billion yuan)を回収しました。2022年と比べると、公立病院の平均退院費用は5.7%、薬剤費は12.1%それぞれ減少しており、医療費負担の軽減という形で具体的な成果が現れています。
スポーツ界や葬祭サービスも捜査対象に
SPCの報告では、スポーツ分野の腐敗事件も明らかにされています。男子サッカー中国代表の元監督リー・ティエ(Li Tie)氏には、汚職などの罪で20年の実刑判決が言い渡されました。また、国家体育総局の元トップであるゴウ・ジョンウェン(Gou Zhongwen)氏は、2024年5月に調査対象となり、同年12月に収賄と職権乱用の疑いで逮捕されています。
NCSはさらに、葬祭サービス分野での腐敗や不正行為を正すため、2024年11月に1年間の特別行動を開始しました。遺族の心理的な負担につけ込んだ不透明な料金や不当なサービスが問題視される中、およそ2025年11月ごろまで集中的な是正が進められた形です。
数字で見る生活分野の反腐敗
- 学生の給食費など教育分野の事案:3万8,000件(2024年)、処分を受けた人は2万3,000人
- 農村の集団資金・資産・資源:15万3,000件を捜査し、13万2,000人を処分(2024年)
- 医療分野の規律処分:約4万人(2024年)、重大事案2,634件を検察に送致
- 医療保険関連で回収された資金:約242億人民元(24.2 billion yuan)、公立病院の平均退院費は2022年比で5.7%減、薬剤費は12.1%減
2025年の重点は農村振興資金と医療保険、高齢者ケア
NCSは2025年の重点として、次の三つの分野で特別キャンペーンを展開してきました。いずれも、高齢化や都市と農村の格差など、社会構造の変化と密接に関わる領域です。
- 農村振興に関連する各種資金の使途を監督し、不正や浪費を防ぐこと
- 医療保険基金の管理や運用の透明性を高め、不正請求や目的外使用を抑えること
- 高齢者介護サービス分野で目立つ不正・不当な取引やサービスを是正すること
「身近なお金」をどう守るかを問うニュース
給食費のキックバック事件から農村の集団資産、医療、スポーツ、葬祭サービスまで、一連の反腐敗のターゲットには共通点があります。それは、市民の生活に最も近いところにある公共の資金やサービスに焦点が当てられているという点です。
こうした分野の腐敗は、一件あたりの金額が必ずしも巨額でなくても、多くの人の暮らしに直接影響し、不公平感や不信感を生みやすいと言えます。だからこそ、日常生活に関わるお金とサービスの透明性を高める取り組みは、制度への信頼を支える土台となります。
教育や医療、介護といった分野で公共の資金をどう守るのかは、国や地域を問わず共通するテーマです。中国本土で進む生活密着分野の反腐敗が、今後どのように制度改善や現場の慣行見直しにつながっていくのか。引き続き、その動きを丁寧に追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








